2005-12-12

191.彼の無理

テーマ:彼女じゃない恋愛

「せのり、携帯貸して」
「なんでさー」
「時間確認しておきたい」
「だーかーらー、自分の使いなよ。何でいつも私のなの?」
「いいじゃん、ほら携帯!」
私が彼に携帯を渡すと、携帯を90度に開いた状態でテーブルの上に置いた。
「堂珍か・・・」
「何よ!」
「そんなにえぇか?」
「似てるよね」
「俺?」
「そそ」
「だから好きなん?」
「そ、そういうわけじゃないけど・・・」
彼は私の携帯待受画像を見てぶつくさと堂珍の文句を言っている。
そして私は男前について熱く語るのだ。
テーブルに並べられた料理もあと少しで完食である。
携帯のライトが消えるたびにピコピコとライトを点灯させる彼。
どうやら彼はこの先を計画中らしい。
突然決まったデートに、今夜の予定を立てる暇はなかったようだ。
「もう少し食べれるな…」
彼が携帯を眺めながらボソッと呟く。
それは時間的に?量的に?
彼は店員を呼びつけ、店員にメニューを見せる。
「ささっと食べられて、ボリュームあるものってありますか?」
「え!?時間気にしながらボリューム求めてるわけ?!」
思わず声に出してツッコんでしまった。
店員も彼も大笑いだ。
「そそ、そろそろ出たいけどもうちょい食べたいかなってな」
店員はクスクス笑いながら早くできて早く食べられてボリュームのある料理をオススメして去っていった。
「ねぇ、今の女性綺麗な人だったね」
「せのりが女の事褒めるなんて珍しいよな」
「そんな事ないよー。綺麗な人には憧れる」
「いっつもえぇ男の話ばっかやのに」
「そんな事あるけどさ…」
「あぁ、でもせのりが褒めるほどの人なら見てたら良かった」
「ゆうじって他の人見ないよね」
「んま、見ないように見てるんかな。人間観察は好きやしなバレんように見るのは得意やで。お前は見すぎやねん!特にえぇ男」
「そ、そんな事は…それにメガネしてないし良く見えんし…」
「そやな、解かってるよ。メガネ外したのも俺が言うたからやろ。俺しか見てないもんな」
「なっ!!」
「すごい照れよう。顔真っ赤やで」
「アホ!」
注文した料理は直ぐに運ばれてきた。
彼は「早いし上手いけどちょっとボリュームありすぎ」と文句を言いながらペロッとたいらげた。
彼の胃袋ってどうなってんだろうか。
箸をおくと早々と彼は立ち上がり「行くか」とレジに向かった。
私はテーブルの上の携帯を鞄にしまう。
携帯の液晶は9時45分だった。


9時45分、ラブホ時間だ。
10時チェックインに間に合わせる為の時間。
嫌ではないけれど、この時間に少しだけため息が出る。
ラブホテルに近いレストランで予定よりも早くにラブホに到着した。
休憩タイムと宿泊タイムの切り替えに今はパネルが使用されていない。
休憩客がチェックアウトすると共に順に宿泊客が割り当てられる。
私たちは整理券を抜き取り待合室のソファーへ向かった。
今までは私に気を使って色々やっていてくれた彼の行動を今は目で追う。
どんな風にチェックインするのかなど彼に教わったりもした。
この時間、多くのカップルがここにはいる。
私たちはそんなカップルの人間観察で楽しむ。
そんな中、1組のカップルが見ているのであろうテレビの音が漏れてきた。
─♪あるある探検隊♪あるある探検隊♪─
それを聞いて彼が悩みだした。
テレビの音は微かでこのフレーズしか聞こえてこない事に、彼はこのお笑いネタを思い出せないでいるのだろう。
うーんと、彼は唸っている。
「ばばぁに傷口舐められる」
私がボソッと小声でそういうと彼は大爆笑だった。
かなり恥ずかしい。
「それそれ!誰っけ?」
「レギュラー」
「そうそう」
スッキリしたようで彼のテンションはかなり上がった。
その後直ぐにも私たちの部屋は用意され、部屋でこのお笑い番組を早速つけて二人で見た。
彼と笑うツボが同じなことに幸せを感じる。
が、偶に片方大爆笑片方無反応という事もある。
誰しもが笑いのツボの共有って意識するのだろうか。
「なぁ、今のおもしろくなかった?」
一人笑う彼が私に笑いを求めてくる。
「うーん」
そういう私に彼は笑いどころを語り始める。
そんな熱い彼に笑いが込み上げた。


番組が終わってそれぞれお風呂に入って、またソファーで寛ぐ。
彼はリモコンをポチポチ押しながらチャンネルを回す。
なかなか見たいテレビも見つからず「眠いわ」と彼が口にするようになった。
今日はそんな言葉を聞いても嫌な気はしなかった。
本当に彼が疲れているのが目に見えて判るから。
「寝ても良いよ」
「いや、大丈夫。もっと話しよ」
「う・・・うん」
今日の彼はやっぱり少し無理をしているみたいだ。
「寝ぇへんよ」
そう言いながら、彼は私の膝に頭を置いてきた。
「今日はずっと一緒におるから」
私の腹に顔を埋めた彼の声はこもっていて、やっぱり少し疲れを感じさせる。
「おやすみ、ゆうじ」
そういいながら私は彼の頭を優しく撫でた。
「気持ちいい」
「そう?」
「せのりの匂いがする」
「そんなえぇもんでもないやろ」
「甘い匂いがする。せのりの匂い」
「ねぇ、なんでいつもお腹側向くの?」
「膝枕はこうでなくちゃ」
「そんなもん?」
「そうそう、これなら胸も触れるしケツも触れる」
「エロイ!」
私は彼の頭を撫で続けた。
しばらく彼は私のお尻を触っていたけど、パタッと力が抜け動かなくなった。
どうやら彼は眠ったようだ。
ちょっとだけ寂しかったけれど、眠ってくれて良かったと思えたのだ。
ずっと私は彼の頭を撫で続ける。
彼が起きてしまわぬようにそっとそっと。



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