2005-11-25

181.チキンライス

テーマ:彼女じゃない恋愛

人気テレビ番組の企画で作られた「チキンライス」という曲が、よく街中に流れる事が多くなった。
もう直ぐクリスマスが近い。
音楽の事はさっぱりだ。
曲調何てわからない、ヒップホップって…、え、R&B?!リズムってなんだよ、と正直思っている。
だけど、クリスマス前に発売される曲はクリスマスっぽいと思うのは、やっぱり先入観と偏見だろうか。
ただ、「チキンライス」を耳にして感じたことは、胸をつんとさす身に染みて感じるクリスマスだったように思う。
曲に乗せられて描かれる詩が、つく。

私は一人家のテレビでこの曲を聞いている。


胸の痛みは、昔、幼い頃を思い出す。
この時は、フラッシュバックとは違う。
そう普通に、淡い思い出を思い出すように忘れていた過去が頭を巡る。


お正月と誕生日とクリスマスだけは、家族の記念日だった。
その日の朝を目覚めると、母親がいつもより張り切って家の掃除をしている。
ひと段落すると私は着替えさせられて、買い物に連れて行かれる。
洋服売り場に連れて行かれ、「好きなだけ買ってもいいのよ」と言われる。
私は可愛らしい服を手に取りながら母に隠れて値札を確認するのだ。
4桁で、「イチ・キュッ・パ」という物なら褒められる。
1枚のスカートを持って母の元へと駆け寄る。
「えー、これがイチ・キュッ・パ。せのちゃん良いの見付けたね」
「うん、安いね」
「これだけで良いの?」
「うーん、あんまり可愛いのないから…」
そういうと、今度は家族の分の洋服を選ばされる。
我が家では、記念日にしか服やプレゼントといった類は買えない事になっていたから、この日は戦争なのだ。
母は、ストレスを発散するかのように買いあさる。
私はスカート1枚が入った紙袋を手に母の後を追う。
母が買った商品は後にも先にも解からない。
いつも父親に靴下3枚とトランクス2枚を渡している姿は確認済みだけど。
お昼を過ぎると、パチンコ店に連れて行かれる。
そして、手のひらに銀玉を握らされ、ソファーで待たされる。
喉が渇いたりお腹がすくと、お姉さんに銀玉とお菓子・ジュースを交換してもらっていた。
私はこの場所だ大嫌いだった。
手は臭くなるし、耳がおかしくなるくらいの大音量、変なおじさんには声をかけられるし、必ず隣で泣きじゃくる同世代の子供達とも気が合わない。
これは記念日の特別行事ではなく、母と過ごす時間はいつもここだった。
夕方を通り越し、夜がやってくると銀玉と500円玉とを母が交換してくれる。
中学生になる頃には1万円になっていたけれど。
そして、家にかえるのだ。
家に着くと、私は車に乗せられたまま待つ。
すると、家族が家から出てきてパパの運転でファミレスへ行く。
家族と言ってもお爺ちゃんやお婆ちゃんはいつも来なかった。
幼心にあの人たちは家族ではないのだろうかと悩んだこともあった。
ファミレスで席に着くと、みんなメニューを眺める。
父と母が何を食べるのか相談しているようだ。
どちらに権力があるかなんてことはよく解からない。
ただ、いつもウェイターにオーダーするのは母だった。
「せのちゃん、何食べる?」
私は母が開いているメニューを盗み見て必死に考える。
「えっと、エビフライ…」
「せのちゃん、そんなに食べられるの?」
「あ、えっと、食べられないかも。えっとハンバーグ…」
「そうね、ハンバーグセット5つと…せのちゃん、何か飲む?」
「えーっと…」
「お母さん、レモンスカッシュが飲みたいな」
「あ、えっと私も飲みたい」
「じゃ、2つと、珈琲1つと、コーラー2つで」


結局だと今なら思う。
何故、決まっているメニューをわざわざ私に聞いてきたのかと今思うと不思議で堪らない。
だけど、ずっと私は母親に嫌われたくない一心で、母のご機嫌を取っていたと思う。
自分で何も決められない癖は今でも抜けない。
記念日以外に物をもらうことも、外食することも抵抗を感じる。
ナンダカンダで私は母が好きだった。
離婚して子供達から100万近く金を搾り取り、行方をくらましている母だけど、今でも母を憎めない。
「戻ってきて欲しい」と思う気持ちをかき消すのは、自分の中の道徳心だ。
それだけだ。
世間体やなんやかんやを省いてしまえば…うーん、どうなのだろうか。


一通り過去を思い出した後、彼の事も考えた。
彼には父親がいない。
本当の父親は覚えていないと言う。
彼と会うと少しだけ彼は本当の父親と今の父親の話をしてくれた。
家族の話も少ししてくれた。
兄弟とも血が繋がっていない。
彼にとって家族は母親だけなのだろうか…。
憎むようなことを言ったり、大切に思うような事を言ったり…。
「暗くなるから」といつも途中で終わる話は、私にとって意味不明な辻褄の合わないものとして心に残った。
一つ言えることは彼にとって家族というものが愛の形だと言うこと。
暗くなると彼が言うのは、何故か彼と家族の話をする時けんか腰になってしまうからだ。
彼の愛が家族だから…愛を憎むような彼がいる事…私は少し認めたくなかったのだ。


「お前さ、そろそろ煙草やめたら?」
「結婚したらやめる」
「そういう奴に限ってやめられへんねんよな」
「やめるもん」
「子供がかわいそうや」
「煙草吸ってる時に子供やどさないもん」
「その意思が何処まで本物か…」
「やめたらいいんでしょ!バカ」
「お前さ、結婚したら働きたいと思う?」
「うーん、私は専業主婦がいいな」
「俺もそう、子供にはさ、ちゃんとお帰りって言ってやる人が必要だよ」
「そうね」
「俺さ、いつも一人やったしやっぱり親には側に居て欲しかったよ」
「そか」
「あと、極力親には子供預けたりしたくないな」
「なんで?」

「子供なりに気ぃ使う」
「あぁ、解かるかも。でも、夫婦でデートとかしたいよ」
「親になったら子供が一番だろ!?家族ごっこじゃないんやから」
「そうかな?何か義務っぽいよ、それ」
「親の義務やん」


話はどんどんヒートアップしてゆく。
傍から聞いていれば夫婦喧嘩だ。
まだ居ぬ子供の為の話で喧嘩。
だけど、これは愛盛んなカップルの喧嘩とも違う。
二人の未来は何処にもない。
子供の話をする時、私に彼との未来は見えない。
見えるものは彼の過去だ。
彼がどんな風に幼少時代を過ごして来たかが見えてくる。
ただ、彼がそんな風に過ごして来たとは言わないので、確かなものはない。
でも、彼は親の愛に執着している。


「お前さ、結婚したら家族どうすんの?」
「どうするって?」
「お前ん家、お前居ん様になったら何も出来んようになるやろ」
「あぁ、できれば弟が嫁をもらってくれた後が理想かも」
「はぁ?それってすごい自己犠牲」
「仕方ない、自分で守りたいと思う大切なものの一つだもんよ」
「じゃあそれって、男は二番ってことじゃん」
「そういうわけじゃないけど、解かって欲しいよね」
「解からんでもないけどさ…」
「以前はそれで別れたしね。私には家族は放っておけない。ゆうじもそうでしょ」
「んま、俺の場合は、再婚してくれたから安心ってのもあるけど」
「お母さんが再婚してなかったら、一人放っておけないでしょ」
「そうかもな」
「ダメなら別れるだけだよ!」
「簡単だな」
「簡単じゃないよ、必死で考えてる。捨てられるかも知れない男にホイホイついて行かないだけだよ。私の中では最低条件だよ。それくらい理解してもらえないと、やってけない。私の大切な家族だもん」
「…俺は捨てないよ」


彼は、いつも私に「捨てない」と言う。
私が自ら「捨てられる身」だと話す所為もある。
私たちの中には少なくとも親に捨てられたという意識はどこかにある。
多かれ少なかれだ。
私には探さねば見つからないほどの小さいもの。
そう言われればそうかもしれないと言うものだ。
私の中では親というよりも、男に捨てられるという意識の方が強い。
彼は「捨てられた」という意識はとても大きい。
否、自分に対しての思いはそう大きいものではないかもしれない。
それは彼が口にしないことなので解からない。
彼はいつも「本当の父親は母親を捨てた」と話す。
確実に彼は父親が母親を捨てたと思っている。
「俺は捨てない」そう彼が言うたびに、彼の本当のお父さんが見える。
彼の言葉は私に向けられたものじゃない。
自分の父親への…どんな想いだろうか…相手は確かに父親だ。
「あんな母親の顔はもうみたくない」彼はそういう。
彼は幸せな家族絵図を描いている。
それに当てはめられる女性を探してる。
彼は浮気をしてしまった。
遊び心じゃない。
真剣に未来の家族を想い描いた真剣な恋愛だと感じている。
彼はきっと彼女にも同じ話をしていると思うのだ。
彼は好きになった女性を捨てられない。
きっと、そんなものは間違っていると言う人がいるだろう。
だけど、彼には出来ない事なのだと改めて思う。
愛した人を幸せにしたい。
彼の愛情が伝わってくる。
家族が彼の愛の形だ。
彼がみる未来はとてもとても遠すぎて、そこに私が居るのか解からない。
彼にもきっと未来の愛する人の顔は見えていない。
ねぇ、今、私の顔を当てはめてみてどうだった?
まだ彼の顔は、愛を憎んでいる。
自分も同じ運命を辿るかもしれない恐怖…私にも解かる。
両親の離婚の影響は大きい。
愛が屈折してしまう。


「捨てたんじゃないよ…」
私は小声で答えた。
「ん?何?」
「何でもないよ」
私は母が、家族を捨てたとは思っていない。
多分、そう思う事が正解だと思っている。
彼を見ていてもそう思う。
親を通して私を見ないで…。


「チキンライス」は、企画性もあり人気を得ている。
その背景に心揺るがす人たちは、きっと多い。
少なからず親への想いはある。
多かれ少なかれ…。
また、胸をさす。
街中に過去が溢れる。
愛も溢れる。
彼はこの曲を聞いて何を思うのだろう。
何も話さないから何も感じなかったかな…。


少しだけ、彼とはまだまだ愛し合えないなって気がした。
好きとか嫌いとか、愛してるとか愛してないとかそんなんじゃない。
愛の形がゆがんでいる…。
彼ともっと沢山話をして、当てはめる愛じゃなく、二人の愛を築きたいと思った。
親がそうだったからとかじゃなく、彼自身ならどんな風に私を愛してくれるのかとても興味がある。
あなたの、愛をください。



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コメント

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4 ■> ammoniteさん

人の傷には人一倍敏感な筈で、だけど何も出来ない宝の持ち腐れ。勇気を出す一歩?!私の心は足場のズレさえも許さない…。創りあげた土台は完璧で一生を保障できる程の安心感がそこにある。いつからかななんて思い返してみても、思い出してしまったらきっとそんな原因を許せない気がして何かを知ろうともしない。相手の傷が視えたとしたらどうするべきなんだろうか。少しでも自分の心に抵抗していたいように思います。

3 ■改めて辛いですね

ACはACでないと分からない。他の精神的な傷がもたらす病気も同じだと予想しますが。分かってもらえないと殻から出られないわけだけれど、分かってもらったところで、分かってあげられたところで、その先に進めないこともある。今更ながら、何故こんなことにと思い、誰にというのではなく、あたしのような存在を作り出し、その人生をあたしに負わせた何かに恨みのようなものを感じずには居れません。

2 ■> あいこさん

こんにちわ。どうもありがとうです。記事はねぇ…長文だから色々毎回弄ってはいるんだけどね。紙本好きさんはやっぱ文字が詰まってる方がみやすいみたいだね。行間空けたほうが良いのか、どっちのニーズが高いんだろうなー。
家族って初めて受ける愛だもんね。友達付き合いも恋愛もそれが大きく影響してくる…私たちみたいに心に何かを抱えてなくったってそう思う。
もしも、そのゆがみの相性が合うのならば、それはそれでいいかもしれないよね。そんな恋愛が出来たのなら楽だろうな。

1 ■おひさしぶりです。

おひさしぶりです。このスキンとってもかわいいですね^^記事も以前より見やすくなってるますね^^
恋愛に家族関係がからんでいることを私も痛く感じます。
私もゆがんだ愛を感じてきました。
それもそろそろ卒業したいところです。もうひとふんばりかなあ。

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