2005-06-04

39.弟の更生への道

テーマ:彼女じゃない恋愛

弟の更生はそれから1年ほど時間を必要とした。

これだけ弟に向き合おうとしていたけれど、何故弟が更生したのかはよく解からない。

理由は沢山あるように思えた。

だけど、どれも私の推測に過ぎないのだけど。


弟は定期的にキレた。

情緒不安定というよりも、寧ろ安定していたのではないだろうか。

穏やかな日を過ごし、定期的にキレる。

私たちにも、そろそろという心構えも出来ていた。

弟は家中で暴れた。

だけど、何も壊れない誰も怪我をしない。

唯一壊れるのは、弟の携帯だけだった。

散らかる家を片付けるといつも真っ二つの携帯だけがゴミになった。


壊れるたびに携帯を買い与える。

穏やかな日々。

弟のストレスはドンドンたまる。

弟のストレスは携帯通話料と比例していた。

だから私たちにも察する事ができた。

繋がりを絶つかのように、弟は携帯を壊した。

暴れるというカムフラージュをほどこして。


父とも徐々に話すようになってきた。

チョット寂しい気もするけれど、私よりも先に父へ相談できるようになった弟に嬉しさがこみ上げる。

親はお金だけが頼りではない。

子供が望むものがそこにはある。

姉弟では埋められないものがそこにある。


ある日、父から聞いた話、弟が携帯を解約したいと言ったそうだ。

親馬鹿かもしれないが、父と私にとっては不思議で仕方なかった。

現代の高校生が本当に携帯を必要ないと思うのだろうか。

そりゃ、携帯を持っていなくても暮らせるだろうが、本当に望んでいるのだろうか。

何故かと父が弟に聞いたが答えなかったという。


「あんた、携帯いらんの?」

久しぶりに私はしゃしゃり出た。

「あぁ」

ムッツリと弟は返事した。

これは何かがある。

「彼女はどうするん?」

「家に掛けてこいって言うた」

「ふ~ん、そういうの言うとかんと勧誘と間違えて電話切られるで」

「あぁ・・・そういう事やからよろしく」

「家に掛けてくる子はその子だけなんか?」

「うん、あとは何を言われても繋がんくっていい」

「お友達でも?」

「あぁ、切るねん」


弟は、暴走族から逃げようとしているのかもしれないと思った。

携帯を解約してから、家の電話はひっきりなしになった。

次第に嘘までついて電話が掛かってくる。

「同窓会があるんですけど・・・」

一度入ったら抜け出せない世界。

こうやって求めてくれる友達が、親友だったのなら・・・と、弟に同情した。


「俺、あいつ等とはもう付き合わんから」

そう弟が宣言した2日後、家に警察官二人が現れた。

弟を探していた。

恐喝の容疑で任意同行を求められたのだ。

信じられなかった。

あれだけ、連れから拒否してきて、彼女ともうまく行っていて、将来だって考え出して、何故?

弟はやっていないと言い続け、1週間拘束された。


面会許可の通知が届く。

私たちは直ぐに会いにいった。

弟は何も話さなかった。

どうしてしまったのだろう。


面会時間が終わり、警官に玄関まで誘導される。

「あんたらさぁ、保護者なら罪認めるように言えんの?」

「は?」

「あのさ、もう直ぐ拘束期間も終わるのよ。やっててもやってなくてもどっちでもいいからさ、此処はやったって言わせてよ」

「どういう意味ですか?」

「面倒くさいって言ってるの!」

「は?」

「あのね、賢い親なら裁判で無罪勝ち取るものなのよ。俺らは、捕まえて送り届けるだけでいいの。此処でごねられると仕事が増えてたまらん。あんた等のお子さんが無罪だったとしても、あんなにグレてたら一緒でしょ。一生直らんよ、あれは!!」

「お前さ、立場解かってる?仕事続けられないかもね」

たった一人の警官の所為で、何人の子供達が更生の道を踏み外したのだろうと悲しくなった。

その後、この警官がどうなったかなんて知らない。

チクってやった次の日からそいつを目にすることはなかったから。


弟は罪を認めた。

金を払えば終わりになる。

父は金を銀行からおろうそうとしていたけれど、私がとめた。

ずっと黙っていれば、家に帰れたのだ。

なのに弟は罪を認めたんだよ。

何故、親の勝手で家に引き戻さなくちゃならない。

頼まれてもいないのに。


最後に面会に行った時、弟は髪をそり落としていた。

髭もない。

髪がないのでそう見えたのだろうか?

とてもサッパリと清清しい顔をしていた。

「とりあえず最後やってん、ごめん。鑑別所出たら仕事探すわ」

弟はそう言った。


専門学校を退学になり、無職で鑑別から出てきた数ヵ月後。

祖父のコネとは言え、仕事を見つける事ができた弟は一生懸命働いた。

そこで資格も取るのだと意気込んでいた。

手の掛からない子になった。

よく考える子になった。

よく相談する子になった。

自分の意見を言える子になった。

人の話を聞ける子になった。


ふと気付くと、とても穏やかな日々が私にポッカリ穴を明けていた。

そういえば、母から連絡こなくなった。

そういえば、発作をおこさなくなった。

そういえば、私やることないな・・・。

家事にも慣れて私は暇をもてあました。


ぼーっと、台所でシチューを温めている。

弟からカーネーションを渡された。

「姉貴ももっと遊んだほうがいいと思うよ。俺、カレーくらいなら作れるんやから」


少しだけ、前のように自由に生きる事が怖かった。

このまま続けばいいのに・・・そう願った。



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