バラが教える地球環境の変化 | 世界日報サポートセンター

バラが教える地球環境の変化

バラの代表的系統を保存
秋田県大館市の石田ローズガーデン
地球環境狂い、開花時期に異常

 初夏の訪れを告げるバラだが、学問的に貴重なバラ園として愛好家に知られる秋田県大館市の石田ローズガーデンでバラの開花時期が狂っている。バラの面倒を見ている担当者は「地球環境が狂ってきているのをバラを通して感じるようになった」と語る。(秋田支局・伊藤志郎)


 「少し前までは、平年より遅くても二日後には、また早くても二日前に咲いていた。ところが最近、まるっきり狂っている。五、六年ほど前から気付き始めた。今年は咲き始めが五日遅れ。去年は五日早かった」


 こう語るのは、同バラ園の管理をしている小倉健治さん(76)。小倉ばら園の社長である。


 先日、同園で「大館バラまつり」(同市、大館バラ会主催)が開催された。


 会場となった石田ローズガーデンは、大館市初の名誉市民である故石田博英氏の私庭。石田氏は大館市生まれで、労働大臣、運輸大臣などを歴任し、昭和二十二年から三十六年間にわたり国政に参加した。病に倒れた後、遺族から大館市へバラが寄贈され、平成七年七月から市で管理している。


 面積は約二千平方㍍と、さほど広くはない。石田氏から生前、同ローズガーデンの管理を任された小倉健治さんが、市の管理となった現在もバラの手入れをしている。


 「公園の花壇などを除いて、公的なバラ園としては日本で面積が一番狭いのではないか。約六百種、七百本が植わっている。ここの特徴は、系統的、代表的、珍しいものがあること。これは、バラの専門家に認められていて、新潟や函館、仙台など遠くからも来園する」


 一種一本を基本とした「サンプルガーデン」という位置付け。「ブルボン、モシケーター(コケバラ)、ペルネシアナ、ガリカ、ダマスク……」小倉さんの口から代表的なバラの系統名が次々と出てくる。


 「ほんのわずか歩いてみれば、学問的に貴重なバラ園だと分かる。バラは昔は初夏の花だったが、品種改良が進み、早咲き、中咲き、遅咲きとなった。だから三回見に来ないと全部の花を見ることができない。ランブラー系統はまだ一つも咲いていないでしょう」


 記者が訪れたのは六月中旬。花が終盤の品種もあれば、まだ蕾(つぼみ)もあった。


 実は、小倉さんは日本ばら会の設立発起人の一人である。


 戦前、帝国ばら協会があった。小倉さんは十八歳のころ、当時バラの交配や繁殖などブリーダーとして活躍していた鈴木省三氏と出会い、バラに傾倒していった。


 こんな話が残っている。戦時色が濃くなったころ、当時の政府は「こういうものを作るのは国賊だ」とバラの栽培を禁じた。鈴木氏はひそかにバラを保存。やがて戦後となり外務省は、進駐軍と会議をする場にこっそりとバラの花を飾っていたという。


 その鈴木氏から小倉さんは日本ばら会の設立を呼び掛けられる。昭和二十三年、財団法人日本ばら会が数人の初代会員によって発足(当時は新日本バラ会。現在の会長は中曽根康弘元総理)。今では数千人の会員を擁するまでになり、全国各地で活発な普及活動を行っている。


 だが、この石田ローズガーデン、一時は閉鎖の危機にあった。それを、何とか存続させようと動いたのが、小倉さんや、現在の大館ばら会幹事長の鷹嘴(たかのはし)文男氏。今では大館の観光スポットとして、また文化的遺産として重要な役割を占める。


 「魅力? バラは花の女王と言われるでしょう。世界中で一番美しいのは女性。だからバラが好き……」


 本気とも、冗談とも取れる口調で小倉さんは語るが、若いときから原種の収集に熱心に取り組み、数百種のバラを保有すると自慢する。


 今年のバラはどうですか?と聞いたら、小倉さんの口から意外な返事が返ってきた。冒頭に触れた開花時期の変化だ。


 「植物の北限もだんだん北上している。関東までしか育たないといわれていた品種が秋田で育ったり、秋田までといわれたのが北海道で育ったりしている」


 なお、同バラ園は十月末まで開放されている。


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