「救国救世」もまず知ることから | 世日クラブじょーほー局

世日クラブじょーほー局

世日クラブ・どっと・ねっとをフォロースルーブログ。

 11月1日付、世界日報14面<国際企画>欄の連載、「山田寛の国際レーダー」は、「解放された女性たちのため 戦後70年談話を実践する時」の見出しで、ISなど過激派に拉致され、その後、解放された女性たちの苦悩とその支援への要請を記す。

 

 14年8月、イラクのモスル市北側のヤジディ教徒の村々が襲われ、男は殺され、6500人の女性と子どもが拉致され、女性、少女は性奴隷としてⅠS兵士に売買されたという。モスル解放直後の今年8月の時点でも3400人が未帰還。未帰還者はむろんだが、解放された女性たちも苦難が続くと。ニューヨークタイムズ紙記者が最近、そんな16歳の少女と会ったのだが、精神的打撃と栄養不良でこんこんと眠り続け、起き上がれなかったとのこと。解放女性の90%が、ある期間こんな具合で、その後も恐怖でおびえ続けているのだと。26歳の女性は、ニューヨーカー誌記者に、「心の中が壊れ、もう回復できない」と語ったという。

 

 拉致を実行する過激派は、ISをはじめ、ナイジェリアのボコハラムは5年前から2000人以上、ウガンダ北部を拠点としたキリスト教過激派「神の抵抗軍」は20年にわたって少年少女3万人を拉致し、うち8000人が少女だったという。近年、ここからも多くの被害者が解放されたのだそうだ。

 

 ただ、どこでも解放=幸福にならないと。上記の如く、心の傷は深く、なおその帰還が共同体や家族から歓迎されないことが多いのだという。なんとなれば、ボコハラムは拉致少女を自爆犯にも用いるし、警戒され、怖れられる。乳幼児を抱えて帰る女性も多い。HIV感染者も少なくない。居場所がなく貧困に苦しむというわけだ。

 

 そこで山田氏は安倍首相の戦後70年談話の以下のくだりを持ち出す。

「20世紀の戦時下、多くの女性の尊厳や名誉が深く傷つけられたことを、胸に刻み続ける。わが国はそうした女性たちの心に、常に寄り添いたい。女性の人権が傷つけられない21世紀とするため、世界をリードして行く」

 

 そして、山田氏は、「今でしょ!それを実行するのは」と政府の尻を叩くのだ。なおかつ、「慰安婦少女像」と違い、「21世紀の性奴隷の像」はどこにも建たないだろうが、とした上で、「日本の支援で笑顔を取り戻した女性の像を、皆の心の中に建てたいと思う」と結ぶ。

 

 長年、読売新聞の特派員として、サイゴン、バンコク、パリに赴任し、最後はアメリカ総局長まで務めた山田氏。その特派員生活の中で、ベトナム戦争やカンボジア内戦、アフガン戦争、そしてインドシナ、アフリカ難民、アフリカの飢餓などを直接取材した経験をもつ氏ならではの実感のこもった叫びである。

 

 翻ってわれわれは「救国救世」を標ぼうするムーブメントの同志である。国内はもとより、世界の困難な問題に目を向ける責務を負う。むろん個人としてできる事、できない事がある。ただ、無関心からは何の情熱も意欲も生まれてこない。少なくとも本件が示すような情報を常にインプットする努力は求められる。そのために世界日報はあるのだけどなぁ。

 

 韓国は、旧日本軍による根拠薄弱な慰安婦問題をあげつらうことには熱心だが、本件が伝える現在進行形の問題に同等の怒りと正義感をもって積極的に支援しているとは、寡聞にして聞かない。なおわがムーブメントは、内輪ウケを狙った自己満足に終始するサロンと化していないか。彼女らへの悲痛な思いがその祈りのうちに込められているだろうか。やはり反省してみるべきだろう。日本と世界で喫緊かつ深刻な問題が山積している。まず知ることから始めよう。