今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『インターラーケンへの車窓から』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、難しい北穂高の『迫力抜群のゴジラの背を進む麻莉亜』、『能登半島地震の被害画像』、羽田空港事故で『燃える日航機』。そして、昨年5月に広島で行われた『G7のメモリアルⅡ』です。

2024年の幕明け、元旦に恐るべき『能登半島地震』の襲来。また、驚くべき羽田空港衝突事件。2024年は不安が増す年なのか、新年早々災害・事故が多発しています。能登、被害に遭われた北陸の皆さんにお見舞い申し上げます。





































        <十方山>








■■『しかし、どうもわからんのだて』
酔った金井奥之助が言った。2人がいるのは三屋家の離れ部屋である。
『ともに紙漉町の道場に通っていた頃は、この家はたしか120石だった』
『さよう』
『30年たってみると、その頃150石だったわしの家は25石に落ちぶれて、貴公の家は270石にのぼっておる。どこで、どう喰い違ったものかの』

『それは、貴公にもわかっておるのではないか』
と清左衛門は言った。言い方は異なっても、奥之助の話は毎度おなじようなところに落ち着いて来る。わが身の不運をなげき、そのあとはひとしきり愚痴になる。
清左衛門はわずらわしかった。いつの間にか容易ならない重荷を背負いこんだ気がしている。

『むろん、わかっている』
と言って、奥之助は銚子をつかむと、手酌で盃に酒をついだ。酒はそれでおしまいらしく、奥之助はしきりに傾けた銚子を振っているが、清左衛門は気がつかないふりをした。

訪ねて来た最初の日に、お茶をはこんで来た初対面の里江に、奥之助がいきなり酒があれば酒をいただきたいと言ったので、そのあとは来るたびに1、2品の肴をそえて酒を出しているが、もともと奥之助をそこまでもてなさなければならない義理はない、と清左衛門は思うのだった。

――いや・・・。
旧友だから酒を出すぐらいは何でもない、と清左衛門は思う。気になるのは奥之助の態度の中に、落ちぶれた境遇を逆手にとって、もてなしを強要する気配が感じられることだった。

『わかっておるとも』
奥之助は繰り返して言うと、盃の最後の酒をすすった。さほど飲んだわけでもないのに、顔は猿のように赤くなっている。

『政変があった。貴公は頼る人を間違えなかったが、わしは間違えた。明暗がそこでわかれたのだ』
『それだけではなかったはずだ』
清左衛門は静かに言った。

『ご内儀のことがある。頼る人を変えることは、ご内儀との約定を破ることだった。たしかそうだったな』
『それはそうだ』
『それなら愚痴は言わぬことだ』
清左衛門は語気をつよめた。


■■<『大病経て、ここは「窓の外」 俳優・佐野史郎①』>腕に点滴のチューブが繋がっていた。手の動きは不自由だし、薬の副作用もあってだるかった。それでも病院の個室に持ち込んだ小さなギターを弾いた。それが生きるエネルギーになったことは間違いない。

『15歳の時にギターを始めてから弾かない日はないほど。絃を振動させ音を出すことが、生きることにポジティブな後押しをしてくれたのかも知れません。』

俳優の佐野史郎(68)は2021年春、血液のがんの一種、『多発性骨髄腫』を患っていることが判明した。入院当初は腎機能などの数値は改善の兆しを見せていたが、細菌に感染して敗血症となった。

入院は自分の時間を確保できたという前向きな気持ちもあった。『よし、ギターの練習をししょうと。でも正直なところ逃げていたのでしょうね、恐怖から』



病院にいた時つくった曲のタイトルは『まどのそと』。ミュージシャンとしても活躍する佐野の新曲。Aメロ、Bメロといった曲の構成は1日あまりで出来上がった。その歌詞の一部は――。

 へやのなか うわのそら こえかけても
  こころここにあらず ふわりふわふわ

『ふわりふわふわ。。。。病室にいた自分の状態を表現したのかも知れませんね。自分がどこに向かっているのだろうという実態がつかみにくいというか』

38~39度の高熱ガ2週間以上続いた。抗生剤が効かずに震えと痛みが全身を覆う。免疫力の低下で病室の外に出ることは出来ず、窓すら開けられなかった。死を覚悟した瞬間もあった。その暗い影を払いのけたのは日常の風景だった。

『家に帰りたいと切実に願いました。家族と一緒に食事をしたい、と。その思いがあったから乗り越えられたのかも』。窓を開けて病室の外に出たい――。『言霊ではありませんが、希望を込めて』と、歌詞は『ふいにさしこむ まぶしいひかり きらりきらり』というフレーズで終わる。

辛い闘病生活の末、21年12月に退院し、仕事に復帰した。抗がん剤治療の副作用などもあり、昨年年6月に急性腎障害で緊急入院したが、7月に退院し、従来通り仕事に復帰している。


■■<朝晴れエッセー『「おでん」を囲む>結婚記念日に『おでん』を囲んだ。『おでん』は私達夫婦が新婚旅行から帰ってきた夜に食べた、言ってみれば思い出の味である。

その26年前に食べた『おでん』は義母が作ってくれたものだった。初めてみる義母の『おでん』は汁気がほとんどなくて、『お家によっては随分違うものだな・・・』と私は思っていた。

けれど。夫と義母の間でこんな会話があった。『あれ、汁ないやん。汁なかったら「おでん」ちゃうやん』。義母の小さな失敗に親近感を抱き、気持が和らいだのを覚えている。

そんなことを思い出しながら支度をしていた今年の結婚記念日。家族達の帰宅時間をみはからい再び鍋に火を入れた時、ふとある思いが浮かんだ。

そうだ、きっと義母もあの日私達の帰宅を見計らってお鍋を温めてくれていたに違いない。それもスマホのない時代、飛行機到着時刻だけを頼りに何度も付けては消して。だから出汁が煮詰まってしまったのだ。

どんなに気をもませたことだろうお。今さらありがたさと申し訳なさで鼻の奥がツンとした。

夜、帰宅した家族達と『おでん』を囲んだ。あの時気付けなかった義母の気持ちを、思い出に語らいながら。

◆『たかがおでん、されどおでん』、ではあるなあ。



■■<マンション一部屋25億円が『安かった』となる? 2024年以降も上昇基調>2024年は国内外の中央銀行による金融政策の変更が見込まれる。金融市場が転換点を迎えるなか、上昇が続くマンション価格はどうなるか。不動産コンサルタントで、さくら事務所会長の長嶋修に聞いた。

――2024年のマンション市場はどうなりますか。
『マンション価格は新築物件も中古物件も堅調です。ただし、すべてが好調というわけではありません。「駅前」「駅近」「大規模タワー」「都心」といったキーワードに代表されるような、好条件の一部の高額物件が全体を引き上げる構図です』
『』こうした上位15%前後の物件は、これからも上昇基調は続くでしょう。一段と値上がりする可能性も高い。これに対し、全体の7割程度を占める中くらいの物件は、なだらかに下落しています。さらに最寄り駅から遠かったり築年数が古かったりする下位15%程度を占める悪条件の物件は取引そのものがないような厳しい状況になる』
『私は「三極化」と呼んでいますが、24年はそんな状況がさらに先鋭化する可能性があると考えています』

――足元の販売や価格の動向は。
『マンション新築件数はピーク時に年9万戸だったものが、今は同3万戸程度と約3分の1の水準に減りました。減少分の多くは最寄り駅から遠いなど悪条件で低額の物件です』
『中古マンションは、東日本不動産流通機構によれば、23年10月の首都圏の成約戸数は前の年に比べて7%増、新規登録件数も同3.6%増でした。新規登録件数は10カ月連続の増加です。1平方メートルあたりの成約単価も上昇が続いています』
『地域別で好調なのは東京都区部で、横浜市や川崎市など神奈川県も割と調子がいい。東京の多摩地区や千葉県は横ばいといった具合です。これに対し、成約単価は首都圏のすべてで上昇しています』
『つまり、悪条件の物件に関しては成約そのものが減る、ないしは、なくなる一方で、好条件の物件については相変わらず旺盛な需要が続いているということが読み取れます』



――好条件の物件が好調なのはなぜですか。
『夫婦共働きの高所得世帯をはじめ、中国をはじめとしたアジア系の海外投資家、それから国内の富裕層といった、パワーのある投資家層の需要が旺盛であるためです。こうした投資家層は、いずれも「駅前」「駅近」「大規模タワー」の物件を好みます。好条件の物件が市場に出ると、買い手はすぐにつく状況です』
『特に訪日外国人客(インバウンド)の回復や円安で、海外投資家の資金は流入増が続くでしょう。海外投資家から見れば、1ドル=140円台といった今の円安・ドル高の水準ではバーゲンセールのように映るはずです』
『共働きの高所得世帯は通勤・通学や買い物など、やはり利便性の高さを意識します。国内の富裕層は、かつては田園調布や成城の戸建て住宅を好みましたが、今はマンションを選ぶ傾向が強い』
『好条件のマンション価格は今よりも1~2割程度値上がりしてもおかしくはありません。23年秋に大阪で「一部屋25億円」の新築タワーマンションが公開され、話題になりましたが、もしかしたら後から振り返ると「それでも安かったね」ということにもなりかねません。日本にはもともと、富裕層向けの物件がほかの主要先進国に比べて少ない。将来的には一部屋50億円や100億円といった高額物件が出てきてもおかしくありません』
『資金に余裕のある人は値下がりを待つよりも、好条件の物件があれば買っておいて損はないと思います。立地さえ慎重に判断すれば、万が一の場合にも買い手は現れやすいと思います。好条件の物件なら今は購入リスクが低い状況にあると考えています』

◆令和のマンション狂騒曲、だねえ。おっそろしい。