残花知る由もなく | 花守の蛹へ捧ぐ縛と笑み

残花知る由もなく



遠い先 近い先

果実の酸味に
少しだけ甘みをつけ
陽の光に温まり
流れを休めた風に漂う
かおりに癒える並木の中を
手を伸ばしては
指先に触れもせず
雫に一つうたれたくらいの
震えをした満開の花を
目を細めては
指先で形を作る仕草をみせる

その道の一つの先の川辺の法の
鳥たちが戻るあの場所へ
想いを苗木に託して植えた

柱の傷を指でなぞる日に
川に流れる潤沢な死骸

右手でそれを掬ってみれば
吸い付くように手を覆い
左手でそれを掬ってみれば
ひとひらの花弁が弧を描いた

託した幹は人の手に折られた

指先で形を作る仕草をみせる
死骸の幹に花は咲いた

果実の酸味に
少しだけ甘みをつけ
陽の光に温まり
流れを休めた風に漂う
かおりに癒える並木の中を
手を伸ばしては
指先に触れもせず
雫にうたれたくらいの
震えをした満開の花だった



私は覆った想いを口に含んだ
花弁の一つに



川は少しだけ冷たかった