日本で封切り公開の2008年10月25日、東京・渋谷の映画館で初見。
作品データ :
原題 Every Little Step
製作年 2008年
製作国 アメリカ
配給 松竹 ショウゲート
上映時間 93分


本作はミュージカル『コーラスライン』(A Chorus Line)のリバイバル版の舞台裏に迫ったドキュメンタリー映画(監督:ジェームズ・D・スターン/アダム・デル・デオ)。
『コーラスライン』はマイケル・ベネット(Michael Bennett、1943~87)の原案・演出・振付、マーヴィン・ハムリッシュ(Marvin Hamlisch、1944~2012)のMUSIC、エドワード・クレバン(Edward Kleban、1939~87)のLYRICS による名作ミュージカル。ブロードウェイの舞台に立つことを夢見て、コーラスラインのオーディションに参加するダンサーたちのひたむきさ~ショービジネスの世界で舞台にすべてをかける若者たちの姿、そして彼らが抱える複雑な家庭環境、思春期の戸惑い、性の悩み、希望や不安、苦悩~を赤裸々に描き出す。「コーラスライン」とは、稽古で舞台上に引かれるラインのことで、コーラス、つまり役名のないキャストたちが、ダンス等でこれより前に出ないようにと引かれる。メインキャストとコーラスを隔てる象徴ともなっている。
1975年4月15日にオフの名門パブリック・シアター(Public Theatre)で開幕。同年7月25日にオンのシューバート劇場(Shubert Theatre)へ移り、90年4月28日の千秋楽まで6137公演(観客動員数664万人)という、当時としては最長のロングラン公演記録をたて、76年のトニー賞では最優秀ミュージカル賞をはじめ9部門を獲得。ブロードウェイでは『CATS』に抜かれるまで、最長のロングラン記録を持っていた。
2006年10月5日からブロードウェイのジェラルド・ショーンフェルド劇場(Gerald Schoenfeld Theatre)で16年ぶりにリバイバルされ、2008年8月17日に759公演でクローズした。
1985年にはリチャード・アッテンボロー監督、マイケル・ダグラス主演で映画化され、日本では劇団四季によって1979年9月24日に初演を迎え、以来現在にいたるまで同劇団の歴史的に重要なレパートリーとして断続的に上演されてきている(2015年9月25日の、東京・自由劇場での公演にて、通算上演回数2000回を達成)。
本作はそんなブロードウェイ・ミュージカルの最高峰『コーラスライン』の2006年の再演に向けて行なわれた8か月間にわたる長く過酷なオーディションの模様を軸に描いたメイキング・ドキュメンタリー。ブロードウェイ史上、初めてオーディション会場に入り込んだカメラが、応募者数3000人の中からわずか19名へと絞り込まれていく選考過程に密着し、一流ダンサーたちが自らの夢に向かって熱き闘いを繰り広げる中で生まれたドラマティックな人間模様を見つめていく。
ストーリー :
ニューヨークの街角に、アメリカ各地、果ては国外から集まったダンサーたちによる長い長い列ができている。彼らの誰もが、16年ぶりの再演が決まった伝説的なミュージカル『コーラスライン』の舞台に立つことを夢見ていた。19枚の夢へのチケットを目指して集まったその数、3000人。演出家のボブ・エイヴィアンが務める第一次審査では、次々と何人ものダンサーが落とされていく。4か月後、第二次審査が始まる。オリジナル版『コーラスライン』は、ダンサーたちの打ち明け話を元に書かれた脚本を、打ち明けた本人たちが演じていた。再演版でのコニー役の振付担当はオリジナル版コニー役のバイヨーク・リー。候補者の一人に日本人のユカ・タカラ(高良結香)がいたが、コニー本人であるバイヨークが推したのはユカの親友だった。ボブ・エイヴィアンがオーディションの際にこだわったのは、役柄のキャラクター作り。中でもヴァル役は多くのダンサーが思う“タフな娘”ではなく、可愛い女であるというのがボブの解釈だった。役柄のヴァル同様に豊胸手術までしたニッキ・スネルソンのダンスは完璧だったが、ボブは彼女とヴァルに共通点を見出せない。結局、ヴァル役はニッキの他に二人が選考に残る。一方、クリスティン役候補のクリッシー・ホワイトヘッドにはスタッフたちが一目惚れ。ゲイのポール役には何人もの応募者がいたが、そのいずれにも審査員は満足しない。そのとき現われたのがジェイソン・タム。彼が語った、ショーのために女装した姿を両親に見られたときの話は全員に感動を呼ぶ。オーディションで最も熾烈な争いとなったのが、オリジナル版でドナ・マッケニーがトニー賞を受賞したキャシー役。ソロのダンスシーンに高度な技術が要求されるこの役を巡って、多くの舞台で実績を積んだダンサーたちが火花を散らす。8か月後。ついに最終選考が始まった。運命なのかプレッシャーか、予想外のハプニングが次々とダンサーたちを襲う。果たして、夢のチケットを手にするのは誰か?筋書きのない真実のストーリー~ドラマ性・エンターテイメント性~が、圧倒的な迫力で観る者の胸を打つ!
本作が映し出すのは、コーラスラインのオーディションに世界各地から集まってきた人々。彼らは口々に、この作品がいかに自分にとって特別かを語る。「これこそ、わたしの物語だ」と。何しろ、それはミュージカルのオーディションそのものを舞台化したミュージカルなのだ。映画では、オーディション風景の合間に絶妙なタイミングでオリジナル版『コーラスライン』の貴重な映像が挿入され、伝説のミュージカルの誕生のきっかけも紹介される。
観ていて驚かされるのは、華やかなスポットライトに隠された、ブロードウェイの厳しさ。ここでは作り手も演者も、芸に対する情熱が半端じゃない。8か月も続くオーディションは、闘いそのもの。ライバルとの闘いより壮絶なのは、ほかならぬ自分との闘いなのだ。
有名人も素人も同列の場で、人生の光と影が交錯する。実力があっても勝ち残れるとは限らない。自信と不安。希望を持てば持つほど、頑張れば頑張るほど、傷つく可能性も高くなる。葛藤の中で傷だらけになりながら、それでも自分の存在すべてをかけて挑むパフォーマーたち。その強さを支えているのは、心の底から演じたいと願う心であり、自分の夢を信じる力そのものなのだ。
≪Yuka Takara(高良結香) as Connie Wong≫Connie Wong :“A Chorus Line” Revival Original Cast Member /a petite Chinese-American who seems ageless

“Yuka Takara is adorable as the vertically challenged Connie, who compensates for her lack of height with a supersized ebuillence.” ― Elysa Gardner, USA TODAY
YUKA TAKARA was born and raised in Okinawa, Japan. At the age of 5, after being invited to a friend's dance recital, Yuka was "bit by the bug" and began her formal training in classical ballet. Yuka continued to dance and teach ballet in her native Okinawa until she left for college, to Virginia, where she studied as a dance major.
In 1998, Yuka moved to New York City to pursue a career in dance, which led her to the world of theatre. Her big break came in the summer of 2000 when she was cast in the pre-Broadway workshop for the revival of "Flower Drum Song." That fall she was cast in the Radio City Christmas Spectacular and the following year would make her Broadway debut as an original cast member in "Mamma Mia!" the hit musical featuring the music of ABBA. In 2002, Yuka left "Mamma Mia!" to join the Broadway cast of "Flower Drum Song" where she understudied Lea Salonga in the lead role of Mei-Li, a role Yuka would take on for the First National Tour to rave reviews. In 2004 Yuka was cast in the Broadway revival of Stephen Sondheim's "Pacific Overtures" directed by celebrated Japanese director Amon Miyamoto. In 2006, she starred as Connie Wong as an original cast member in the current Broadway revival of "A Chorus Line." She was most recently seen on the Broadway stage as Alexi Darling in the Tony winning musical RENT.(出典:BIOGRAPHY―The Official Yuka Takara Website)
▼予告編
★ cf. ブロードウェイの鬼才マイケル・ベネットは、Musical“A Chorus Line”が生まれたきっかけについて、こう話している。
≪この作品が生まれるきっかけというのは、信じてもらえないかもしれませんが、ウォーターゲイト事件にあります。あのときの公聴会をテレビで見ていて感じたものから、この作品は生まれました。つまり、あのころアメリカ中を支配していた虚無と無気力への反発です。ちょうど、私は自分の人生に正直でありたいと思っていた時期で、舞台の上で人々が自分の気持ちを正直にさらけ出している姿を見せたいと思っていました。と同時に、われわれダンサーについてのショーをやりたいという考えがありましたので、二十二人のダンサーを集めて、何時間にもわたり、いままで自分たちがやってきたこと、そして求めていることなどを話しあいました。なぜ、どういうきっかけでこの仕事をはじめたのかをできるだけ正直に話して欲しいとダンサー達に頼みました。こうして集まりを二度おこない、テープレコーダーに録音しておきました。/ダンサーというのは、非常にオープンな性格を持った人種です。自分の強味、弱点をよく知っていて、自分自身を隠すことには慣れていません。これは、子供のころからダンスを習いはじめ、一生の大半を鏡の前の練習で過ごすからだと思います。鏡は嘘をつきませんから。/二度の集まりで収録したテープを、何ヶ月もの間、何度も何度も繰り返して聞いているうちに、「オーディション」の構想が浮かびました。/この作品で、ある部分は私自身の経験をもとにしていますから、その点では自伝的な作品といえるでしょう。たとえば、親は私を三歳のときにダンススク-ルに連れて行ってくれました。踊ることで、自分は特別の人間になったと感じたものでした。≫(出典: <マイケル・ベネットが語る>|『コーラスライン』作品紹介|劇団四季)
■ 私感 :
私は“A Chorus Line”のMusical/Original(Jul 25, 1975~Apr 28, 1990)については残念ながら、未見に終わった。
しかし、そのMusical/Revival(Oct 5, 2006~Aug 17, 2008)については、2007年の7~8月にNew York のGerald Schoenfeld Theatreで、4度にわたって観劇し、忘我の一時を過ごした。
また、“A Chorus Line”のFilm(映画版)については、日本で封切り公開された1985年12月14日当日?に2度、東京・新宿の映画館で鑑賞。
そして、劇団四季による舞台版『コーラスライン』(“A Chorus Line”の日本版)については、3度、1993年1月に青山劇場で、2006年10月に四季劇場[秋]で、2013年9月に自由劇場で観劇した。
これら各作品を最大限に享受するたびに、私は次のことを、今更のように身に染みて痛感する[cf.本ブログ〈2017年01月13日(金)〉記事「映画『屋根の上のバイオリン弾き』」]。
まず同じミュージカル作品とはいえ、一般に舞台版がダンスや歌がことさら際立つのに対して、映画版がよりストーリー性の高いドラマを構成している点だ。
次に、本場ミュージカルが日本版ミュージカルより、歴史的・文化的な背景が根本的に異なるがゆえに、すべて(「キャスト+スタッフ」力全体)の点で優れている点だ。
個々の役者の「歌唱+踊り+演技」力ひとつに絞っても、ブロードウェイ版が劇団四季版よりもレベルが高く、比較を絶した格の違いを見せていることははっきりしている。
しかし、ここで私としては、“日本版”ミュージカルの問題点⇒欠点をあれこれ論(あげつら)うつもりはない。
今はただ、作品それぞれの単体としての表現方法を十分に尊重し、個別的な価値表現の違いを生かした一定の言い知れぬ魅力を積極的に享受するよう努めたい。
現に劇団四季が日本なりのミュージカルを作り、“和”の要素や日本情緒などを取り入れ、いろいろな人に見てもらおうと、何とか創意工夫をこらしていることも確かなのだ…。
{参照①} Broadwayリバイバル版 “A Chorus Line” full show(2006年) :
{参照②} 映画版 “A Chorus Line”(1985年) : <作品データ> 男女各4名、計8名のコーラスを決めるための熾烈なオーディションに臨む17人のオーディショニーの姿を描くミュージカル映画。監督は『ガンジー』(1982年)~インド独立の父であるマハトマ・ガンディーの生涯を描く~で第55回アカデミー賞監督賞を受賞したリチャード・アッテンボロー(Richard Attenborough、1923~2014)。アーノルド・シュルマンによる映画脚本は、ジェームズ・カークウッドとニコラス・ダンテによる1975年初演のオリジナル版“A Chorus Line”の台本に基づく。The songs were composed by Marvin Hamlisch(作曲) and Edward Kleban(作詞). 出演はマイケル・ダグラス、アリソン・リードなど。上映時間113分。
<Plot> A group of dancers congregate on the stage of a Broadway theatre to audition for a new musical production directed by Zach (Michael Douglas). After the initial eliminations, sixteen hopefuls remain. Arriving late is former lead dancer Cassie (Alyson Reed) who once had a tempestuous romantic relationship with Zach but left him to take a job in Hollywood. Now she hasn't worked in over a year, and is desperate enough for work to even just be part of the chorus line. Whether he's willing to let professionalism overcome his personal feelings about their past remains to be seen.
As the film unfolds, the backstory of each of the dancers is revealed. Some are funny, some ironic, some heartbreaking. No matter what their background, however, they all have one thing in common: a passion for dance.
[出典:「A Chorus Line (film)」『Wikipedia』2017年2月7日閲覧]
<ストーリー> ブロードウェイの売れっ子ディレクター・コレオグラファーのザック(マイケル・ダグラス)は、近くオープンする新しいショーのため男女4人ずつのコーラス(その他大勢組=無名の脇役)を選ぼうと、オーディションを行なうことにした。膨大な数の若者がこれに応募し、とりあえず16人が残った。ザックはその16人にさまざまな質問を浴びせ、素顔を浮き彫りにしていく。イタリア系のマイク(チャールズ・マクゴアン)は、12人兄弟の末っ子、4歳の頃からダンスの虜になった。中産階級出身のボビー(マット・ウエスト)は、父と折り合わず生まれ故郷を棄てた。もうすぐ20歳に手が届くシーラ(ヴィッキー・フレデリック)は、母の夢をかなえるべくダンサーになったが未だ芽が出ない。ルックスにコンプレックスを持つビビ(ミシェル・ジョンストン)、両親とうまくいかず幻想世界に逃避するマギー(パム・クリンガー)、カップルでオーディションを受けたアル(トニー・フィールズ)とクリスティン(ニコール・フォッシー)、思春期の悩みを打ち明けるマーク(マイケル・ブレヴィンス)、「チビだ、チビだ」とバカにされる中国系のコニー(ジャン・ガン・ボイド)、演劇学校で才能なしと決めつけられたプエルトリコ人のダイアナ(ヤミール・ボージェス)、妻と2人の子供を抱えウエイターのアルバイトに精を出すドン(ブレイン・サヴェージ)、両親が喧嘩ばかりしていたジュディ(ジャネット・ジョーンズ)、高校の頃ホモだと自覚したグレッグ(シャスティン・ロス)、スポーツ・ヒーローだったが実社会では無能だったリチー(グレッグ・バージ)、整形美人のヴァル(オードリー・ランダース)…。そんなオーディション会場にキャシー(アリソン・リード)がかけつけてきた。かつて彼女はザックと恋人同士だったが、女優を夢見てハリウッドヘ行ったが夢破れて古巣に戻ってきたのだ。そんなキャシーにザックが厳しく言い放つ。一度でも主役を張った人間がコーラスに耐えられるはずがない、と。しかし、彼女は自分にはダンスしかないとザックに懇願する。最後は、女性的な容姿のためにいつも女役しか振り当てられないと悩むポール(キャメロン・イングリッシュ)だ。そのポールがルーティンを踊るうち、足の筋を切ってしまった。やがて、すべてのオーディションは終わり、発表の時がきた。ヴァル、マイク、リチー、ビビ、ダイアナ、マーク、ボビー、そしてキャシーが残った。彼ら8人は、明日から本番に向けて、さらに厳しい稽古に入ることになった―。
<Trailer>
<Opening Sequence>
<劇中曲“One”/Finale>
『コーラスライン』といえば、真っ先に思い浮かべるのがこの曲“One”。余りにも有名な「One!」という歌詞から始まるフィナーレでのテーマ曲である。
“One”をシルクハットと金色の燕尾服で踊るラストシーンで、まず合格したオーディショニー8人だけが踊り、続いて不合格だったオーディショニー9人が参加。彼らが舞台奥の鏡に近づくと、(カメラマジックかミラーマジックか)彼らのリフレクションが別のダンサーたちになってステージに現われ、最後は大勢(100人規模)のダンサーがステージで“One”を歌って踊る…。
{参照③} 劇団四季版『コーラスライン』 :<プロモーションVTR>(2013年8月13日、YouTubeにアップロード→同年9月1日~9月23日、自由劇場で上演)
<ナンバー集>(2013年9月9日、YouTubeにアップロード)
【ジャズコンビネーション→アット・ザ・バレエ(At the Ballet)→モンタージュ(Montage)→ザ・ミュージック・アンド・ザ・ミラー(The Music and the Mirror)→愛した日々に悔いはない(What I Did for Love)→ワン(フィナーレ)】