K-102 微笑の天使胸像 | きょうの石膏像 
2011年08月28日(日) 23時35分10秒

K-102 微笑の天使胸像

テーマ:石膏像 K-胸像  


きょうの石膏像     by Gee-K-102

K-102 微笑みの天使胸像          H.56×W.62×D.40cm (13世紀 フランス・ランス大聖堂)




中世の時代区分に属する石膏像を、ロマネスク~ゴシックへという流れで進行中です・・・。



さて、10世紀初頭から発生したロマネスク彫刻の舞台というのは、主にイタリア北部~南フランス~スペインへ・・というように、地中海に近い場所で広く発展したわけですが、それに続く12世紀頃からのゴシックというスタイルは、なぜかはるか北方のパリ周辺部(イル・ド・フランス)で展開されてゆきます。



”ロマネスク”という呼称は「ローマ風の」という意味ですが、19世紀の考古学者が考え出したこの表現には「古代ローマ建築が北方のバルバロイ(蛮族)のために堕落変質したもの」というニュアンスが含まれています。


同じように”ゴシック”という言葉(イタリア・ルネッサンス期の人文主義者たちが生み出した表現)にも「野蛮なゴート人(ゲルマン民族の一部)の美術」という意味合いが含まれています。


現在、世界的に広く浸透している歴史観というのは、あくまで古代ギリシャ・ローマ文明が出発点で、そこを基準に”正統”か”野蛮”なのかということが語られています。



ということで、ゴシックというスタイルが北フランスで生まれたとき、それはより北方のイングランド・ノルマンディーからの影響を受けたものでした(高く伸びる尖塔、交差リブ・ヴォ―ルトという建築構造)。




後期ロマネスクの建築スタイルが、北方からの影響を受容して変化し、さらに外壁を飾る彫刻群をプラスしたものが”ゴシック様式”の教会ということになります。



最も初期のゴシック建築としては、パリ郊外のサン・ドニのサン・ドニ修道院聖堂があります。


ファイル:StDenis Fassade.JPG

サン・ドニ修道院聖堂 1140年頃



同時期に建造されたシャルトルの大聖堂、

ファイル:Chartres 1.jpg



ファイル:NotreDameI.jpg

パリのノートル・ダム大聖堂 



こういった、たくさんの巨大なゴシックスタイルの教会が建築されていく中で、パリから電車で二時間くらいの街、ランスに建設されたのが、きょうの石膏像のある教会です。


ファイル:Cathedral Notre-Dame de Reims, France-PerCorr.jpg

ランスのノートル・ダム大聖堂 



ランスは、フランスという国の大元になったフランク王国の王、クロヴィスがカトリックへの改宗のための洗礼を受けた場所で、歴代フランス王の戴冠がここで行われてきた重要な場所です。


そこへ建設された教会ですから、当然気合の入ったもので、後期ゴシック建築の傑作のひとつとされています。





さて、肝心のこの石膏像のオリジナル彫刻はといいますと・・・。



File:Reims 08 (RaBoe).jpg


上の教会正面の全体写真の一番下の辺にある入口扉のわき側面には、ずらりとキリスト教に関する人物彫刻が並んでいます。これは、中央扉の向かって右側側面の写真です。



この写真で見てみると・・・、左側から4対並んでいる彫刻は、左2対が「受胎告知」、右側2対が「聖母マリアのエリザベツ訪問」。すぐ隣に、同じ人物であるマリアを2対並べちゃうあたりが、よくわかんない判断ですね~(中央2対は両方ともマリア)

ああ、いたいた!一番左側の天使像が「微笑みの天使」だ!


と思うでしょう・・・フフフ・・・チッチッチッ(古すぎか)



私も、いっつも間違えちゃうんだけど、これは別の彫刻なんです。なぜか図鑑とかの資料に取り上げられる確率は圧倒的にこちらの天使の方が高いんだけど、首のひねった向きが石膏像とは逆ですよね。。


表情も、少し違う・・・。でも同じ工房で造られたものでしょうね。微笑みのスタイルは同じ。。





本当の本物はこちら、



Fichier:Ange au sourire.jpg

三つある正面ファサードの扉のうちの、左側の入口の左側側面(すべて向かってということ)に微笑みの天使のオリジナル彫刻はあります。




ランス大聖堂の壁面全体では、約2000体の彫刻が設置されているといわれています。当然、一つの彫刻工房だけでは賄いきれず、ヨーロッパ各地から石工たちが呼び寄せられ建設に参加しました。


そのため、この聖堂にはたくさんの彫刻スタイルが混在しています。隣り合った彫刻であっても、その様式にはずいぶんへだたりがある場合があります。



File:Reims 08 (RaBoe).jpg


繰り返しで恐縮ですけど、この写真はさっきの”別の天使”のある部分の4体の彫刻です。


右側2体と、左側2対では、布ひだの表現があまりに違うと思いませんか?これはまったく素性の異なる工房が製作を手掛けているためです。右側2体のドレープ(布ひだ)は、まるでヘレニズム期の古代ギリシャ彫刻のようです。


さらに左側から2体目の受胎告知を受けるマリア像は、その身体の重心に関連する表現(コントラポスト)が、他の3体に比べて明らかにシンプルな直立した姿勢となっています。他の3体は左右どちらかの足に重心位置が設定され、それに従って身体全体の位置関係が決められています。



あまりに壮大な建築計画だったため、全体をひとつの様式にまとめ上げるようなわけにはいかなかったんですね。。。



さっきから出てきてる”間違えられちゃう天使”と、”微笑みの天使”、それから次回取り上げる”聖ヨゼフ(セント・ジョセフ)”像といったあたりは、1245~1255年頃に同一の工房によって製作されたものではないかと考えられています。


共通しているのは、その微笑み。。謎めいた意味不明の微笑みを浮かべています(美大受験生の皆さんは”微笑み”なんて思いませんよね・・・。ニヤケやがって~~!ってね)。


この独特の微笑みと、S字カーブを描く身体のコントラポストを持つ彫像のスタイルは、パリ王宮の芸術家たちによって生み出されたもので、「優雅形式」と呼ばれるスタイルなんだそうです。




最後に、ランスまで行かなくてもパリで「微笑みの天使」に出会える場所があるので、そちらを。。


以前にも記事で紹介したことがあるんですけど、パリのシャイヨ宮(エッフェル塔と向かい合う位置にある、パリ16区の扇型の建造物)の中にある、「パリ文化財博物館」に石膏像のレプリカが展示されています。



きょうの石膏像     by Gee-FR078

微笑みの天使

きょうの石膏像     by Gee-FR076

「微笑みの天使」を中心として、群像がズラッと。これ全部2メートルオーバーのサイズですよ!

下には、ちょこんと「セント・ジョセフ胸像」が。。上の全身像たちが、いかに大きいかよくわかりますね。




きょうの石膏像     by Gee-FR075

博物館全体が、フランス全土にある歴史的建造物の石膏製レプリカでおおいつくされています。

”石膏像”とか”レプリカ”といった言葉からイメージされるものとは程遠いい、ものすごいスケールの展示なんで

す。





だいぶ前の記事ですけど、この博物館についても記事を書いています。よかったらのぞいてみてください。

2011年6月 フランス文化財博物館






次回は、受験生の大敵!セント・ジョセフさんの登場です。。。




今回取り上げた、K-102 微笑の天使胸像 は、私共の運営するオンラインショップ「石膏像ドットコム」で実際に購入していただくことが出来ます。以下のバナーをクリックすると、ショップに入れます。よかったら覗いてみてください。


きょうの石膏像     by Gee-sekkouzou.com



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