工房から見える吉浜海岸

 

 

 

工房で作る石けんたちの水は、

全て芳香蒸留水を使っています。

 

ところで、

芳香蒸留水ってなんじゃい?

 

って、ところもあると思うので

今日は芳香蒸留水の作り方の話です。

 

 

まずは名前の話。

 

芳香蒸留水は、

・ハーブウォーター

・フローラルウォーター

・アロマウォーター

・ハイドロゾル

ともいいます。

 

名前の段階でちょっとエピソード。

 

芳香蒸留水の勉強していて、

初めて知ったことがあったんです。

 

それは、

精油を作る目的ではなく

芳香蒸留水を作る目的で

水蒸気蒸留をしていた歴史が

あったということなんです。

 

井上重治先生の書籍より引用します。

 

特にハイドロゾルと言う言葉は
旧フランス薬局方で、精油ではなくハーブウォーターを得る目的で水蒸気蒸留した場合に使用されていたようです。

著書:ハーブウォーターの世界

 

しかも!

 

水蒸気蒸留法はハーブウォーター製造のために誕生しました

著書:ハーブウォーターの世界

 

この一文に

めちゃくちゃびっくりした

んです!

 

だってね、

現代で芳香蒸留水とは

精油を作るときの副産物として

位置づけられています。

 

でも本当は逆で、

芳香蒸留水を作っていたら

精油が出来上がった

って、関係性だったんですね。

 

芳香蒸留水あっての精油

ということなんです。

 

今となっては精油の方が一般的だけど、

芳香蒸留水の方が

活躍していた歴史があった

ということなんですね~。

 

 

ということで、

 

 

「芳香蒸留水すげ~」

ってなったところで

 

 

なったよね?

なったよね?

なったよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ芳香蒸留水の

作り方の話に移ります。

 

今回のハーブはレモンバーム。

(大好きな近所のパン屋さん、ミキベーさんのお庭にもしゃもしゃ育っていたレモンバームたち。図々しくも「あれいただいてもいいですか?」って、聞いたら「いいよいよ。いくらでも持っていってー。増えすぎて困っていたのよ~」と、気前よく言ってくださったので、遠慮なくいただいてきました。)

 

新鮮なレモンバーム。

置いているだけで

工房中にいい香りが漂います。

 

水道水で洗います。

じゃぶじゃぶ。

 

 

少し細かくします。

 

いざ蒸留器へ~

遠目のアングル。

 

少し寄ります。

 

ギュっと圧縮します。

 

水を注いで~

 

(水が茶色いのは、ギュっと絞ったレモンバームのエキス。)

 

加熱。

10分くらいで芳香蒸留水が溜まってきます。

1回の蒸留で150~200㏄くらい。

 

ここまでの工程が

1時間あるかないかくらい。

 

って、言っても

セットしたあとは、

 

水蒸気が水に変わり、

冷やされ蒸留水になり、

流れてビーカーに溜まるのを

ただただ見ている

 

のが芳香蒸留水を作ることです。笑

 

(途中、冷却用の氷を入れる作業はある。)

 

 

ということで、

湯河原町の石けん工房の

石けんに使っている、

芳香蒸留水の作り方風景でした。

 

こんな風にして出来上がった

芳香蒸留水で当工房の石けんたちは

作られています。

 

ちなみに~

石けんの原材料とは、

油・水酸化ナトリウム・水

の3つで作られます。

 

ここでいう”水”が、

湯河原町の石けん工房では

全部芳香蒸留水なんです。

 

 

例えば、

長夏石けんは、

湯河原町で採れた橙の摘み果と

枝と葉を使って作りました。

 

 

この芳香蒸留水を使ってできた

ゆがわら石けん藍陽

 

 

 

という芳香蒸留水のお話でした・・・

 

 

植物を蒸留していると

いろいろ思うところがあるんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

200ccの芳香蒸留水を作るために、こんなにたくさんの植物が必要なんだ・・・

って。

 

ただ生えていたいだけの植物からしたら、西村純子の都合で摘んできて、ちぎられて、ギューギューに詰められて、あげくの果てに熱せられて最後は抜け殻になって、

西村純子を残酷に感じるだろうな

って。

 

 

これだけの植物からの命をいただきながら作ったところで、石けんと環境の影響とか証明できる訳でもないし、私は何をしているんだろう・・・と思うのです。

 

でも、ハッとしたんですね。

 

証明できなくてもいい。

大事なことは、

 

 

 

 

 

 

 

 

自覚するってことなんだ。

 

 

私たちが香りを楽しむため、

自分たちの健康のために、

これだけの命をいただいているって、

 

知ったうえで

 

それでも選ぶのか?

 

という問いを自分にたて

 

自分で選んでいると

自覚すること。

 

 

 

 

無知とは恐ろしい

という感覚を少しでも持つこと。

 

(モッツァレラチーズの背景にある水牛の子ども、卵の背景にあるオスのひよこ達。あげたらキリはないけど、たくさんの残酷さが私たちの「おいしい」の裏にある。)

 

それが大事なんだって。

 

ものごとに陽だけは存在ぜず、陰と陽は必ずセットであるということ。

自然の恵みに対して、感謝と敬意だけでなく、畏怖の念も必ず持つこと。

 

芳香蒸留水を使った石けんを作るということは、そういうことを届けるための

メッセージなんだということ。

 

蒸留後の摘み果みかん

 

蒸留後3日間くらい天日干しのレモンバーム

 

蒸留後の植物たちは、こんな形になって

最後は星舟庵の土に還っていきます。

ここまでを伝えることなんだ。

 

 

自分が生きていくために、

他の命を殺すことは

避けて通れません。

 

 

だから、

必要以上に奪わずにいられるよう

自分に必要なモノを充分に知り、

本当に必要なモノと生きていく。

 

造った人の顔が見えて、

その人が大切に造ったモノを

大切に使う。

 

それがこれからの風の時代に

大事な感覚じゃないかな~と

思うんです。

 

自分さえよければいい

簡単、便利、安い

もう時代遅れです。

 

 

 

自分が生きていくために

誰かを殺している

 

湯河原町の石けん工房は

石けんを通じて

そんなことを伝えていきたく

今日もせっせと作っています。