今回は、慢性痛について記事を書くことにする。

 

痛みが長期化すれば、日々の生活に何らかの形で影響が及ぶ可能性がある。

 

しかし、慢性痛が及ぼす影響は様々であり、例えば活動量や生活の質などが大きく低下する人がいる一方で、活動的なライフスタイルを維持できている人もいる。

 

こうした違いは、なぜ生じるのか。

 

様々な要素が関わっていると考えられるが、一つの例として、睡眠の問題を挙げたい。

 

以前の記事に書いたように、睡眠の問題は、神経膠(グリア)細胞の変化などにより、痛みに敏感な状態を引き起こし、痛みの悪化や長期化に繋がる可能性があることが指摘されている。

 

しかし、睡眠の問題が及ぼす影響は、痛みだけではない。疲労や集中力の低下、ネガティブな心理状態など、心身の様々な変化と関連している可能性が考えられる。

 

そして、こうした変化が慢性痛に悩む人に生じると、問題がより大きくなる可能性がある。

 

例えば、慢性痛がある人に関して、睡眠の問題がない場合と比べると、睡眠の問題もある場合はより強い痛み、より強い不安、抑うつ状態、心身の状態の悪化などが生じることが指摘されている(Tang NKY. Insomnia co-occurring with chronic pain: clinical features, interaction, assessments and possible interventions. Reviews in Pain 2008; 2 (1): 2-7)。

 

このように、慢性痛に睡眠の問題が加わると、心身の機能などに悪影響が及ぶ可能性がある。これは、痛みがあっても活動的な日々を送ることができるかどうかということにも関わってくると考えられる。

 

こうした違いと関係する要素は、睡眠以外にもある。痛みの軽減に加えて、全体的に問題を悪化させている要素を特定して対策を講じることは、痛み医療では大変重要と考えられている。

 

しかし、医療従事者であっても、痛みに悩む人について、例えば睡眠の問題の有無を調べようとする人は比較的少ないかもしれない。その理由として、痛みと睡眠の関係についての知識が不足しているということ以外に、この関係についての従来型の考えに影響を受けている可能性がある。

 

例えば痛みがある人の不眠について、痛み等に由来する症状であると従来は考えられていた。言い換えると、痛みがあるから眠れないのであって、不眠自体は二次的な問題という考え方である(Asih S, et al. Insomnia in a chronic musculoskeletal pain with disability population is independent of pain and depression. The Spine Journal 2014; 14: 2000-2007)。

 

しかし、不眠症と痛み、うつ状態の関係について実際に調べた研究によると、不眠症について、痛みやうつ状態から比較的独立したものであるということが示された(Asih S, et al. Insomnia in a chronic musculoskeletal pain with disability population is independent of pain and depression. The Spine Journal 2014; 14: 2000-2007)。すなわち、「不眠は痛みに由来する二次的な問題」という従来型の考えについて、修正の必要があることが示唆された。

 

痛みがある人に、もし睡眠の問題があれば、痛みへの対応に加えて、睡眠の問題にも検査や治療を行うことが望ましい。このことは、痛みと関連する多くの文献で指摘されている。

 

痛み関連の問題に影響を与える様々な要素を知ることで、痛みがあっても、活動的な日々を過ごせるようにするためのヒントとなる。こうした知識について、特に医療従事者は知っておくべきだと思う。

 

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