筆者は、痛みに「敏感」な状態に関する、講習会を開催している。
痛みに「敏感」な状態に関する知識は、重要である。通常よりも強い痛み、長期化している痛み等、これが関わっていると思われる状態はいろいろとある。臨床で対応に難渋する痛みを考えるうえで、欠かせない知識である。
痛みに「敏感」な状態の具体例について、線維筋痛症やCRPS(複合性局所疼痛症候群)のような状態だけではなく、例えば一部の変形性関節症や慢性腰痛、長期化した腱障害など、痛みに「敏感」な状態との関わりが様々な研究で指摘されている。
しかし、痛みに「敏感」な状態は、他にもたくさんある。
例えば、医療現場で身近なものとして、ギプス等による固定が挙げられる。怪我の状態に応じた、適切な固定は回復を促すが、その一方で、固定と関連して痛みに「敏感」な状態が発生することがある。
このことは、動物や人間を対象とした様々な研究で示されている。
例えば、健康な成人を対象として、前腕部を4週間、実験的に固定した研究では、固定を行わなかった対照群と比べて、固定した群では痛みの閾値の低下(痛みを感じやすくなった)等が一時的に発生した(Terkelsen AJ, et al. Experimental forearm immobilization in humans induces cold and mechanical hyperalgesia. Anesthesiology 2008; 109: 297-307)。
また、CRPSと診断された人を対象とした調査で、怪我の後に、治療の一環としてギプスか装具による一定期間の固定(平均3週間)を47%が経験しており、固定がCRPSの発症に影響を及ぼしている可能性がある(Allen G, et al. Epidemiology of complex regional pain syndrome: a retrospective chart review of 134 patients. Pain 1999; 80: 539-544)。
なぜ固定が痛みに「敏感」な状態に結びつくのかについては、当方の講習会(痛みに「敏感」な状態への対応)で説明している。本記事では、固定という身近な医療行為で痛みに「敏感」な状態が発生する可能性があること、すなわち痛みに「敏感」な状態は珍しいという訳ではないこと、それ故に多くの医療従事者が痛みに「敏感」な状態について知識を有することが勧められるということを言いたい。
痛みは、人々が医療機関を訪れる最大の理由であり、痛みに関する勉強は全ての医療従事者にとって大変重要と言える。痛みに「敏感」な状態についても、多くの医療従事者が十分な知識を持つことが望ましい。
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