人は、体調の変化を感じると、病院等の医療機関に行って、診察を受ける。
しかし、病院に行き、医師の診察を受けた後、まだ薬も飲んでいないのに、受診前よりも元気になっている人を見たことがないだろうか。
この場合、医師から説明を受けたことによる安心感が、症状の変化に影響を及ぼしている可能性が考えられる。
なお、こうしたことは実際に起こりうるということが、研究で示されている。
具体例として、一つの研究を挙げる。なお、この論文が発表されたのは数十年前だが、2000年代に出版された本を含めて、医療と関連する様々な文献で紹介されている(Thomas KB. General practice consultations: is there any point in being positive? British Medical Journal 1987; 294: 1200-1202)。
ポイントを絞って、簡単に説明する。
何らかの症状を訴えているが、異常を示す客観的な所見はなく、具体的な診断名を付けることが困難な200人の患者を対象として、複数のグループに無作為に振り分けて、結果を分析した。グループ間で年齢や性別などの特徴に違いはなく、症状は咳や疲労、腰痛等だった。
ポジティブな診療のグループ(診断が下されて、数日で良くなると、医師から自信を持って告げられた)は、2週間後、64%の患者が良くなっていた。しかし、ネガティブな診療のグループ(医師は患者に「何が問題なのか、よく分かりません」と伝えている)は、2週間後、39%の改善にとどまった。二つのグループの差は、有意であった(p=0.001)。
上記の研究におけるポジティブな診療グループについて、具体的な診断名を付けることが困難な状態だったので、患者に伝えた診断名は正しいものではなかった可能性がある。それでも、医師から具体的な診断名を告げられて、数日で良くなりますよと言われたグループは、そうではないグループと比べて、改善した人の割合が明らかに多かった。
主観的な症状(例えば痛み)は、心理的な要素の影響を強く受ける。これは患者教育(単なる情報伝達のための手段ではなく、治療としての教育)等の効果としても、確認できる。
痛みに関する過去の概念、すなわち生物医学モデル(身体的な要素を重視)では、心理的な要素は副次的なもの(おまけ)として扱われることが多い。
しかし、痛みについて、身体的な要素も、心理的な要素も、どちらも痛みに影響を及ぼす、重要なものである。これらの両方とも知らなければ、効果的な治療はできない。
そして、心理面が症状に及ぼす影響の例として、プラシーボ効果が挙げられる。
痛みや、痛みと関連する治療の効果を考えるうえで、とても重要な要素であるプラシーボ効果について、今後いくつかの記事で書いていきたい。
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