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今回は、急性期の痛み(急性痛)を減らすことの重要性について書きます。

 

急性痛とは、怪我などにより痛みが発生してから3か月以内の痛みを指します。もう少し細かく分けると、定義はいくつかありますが、例えば発生から2週間以内の痛みが該当します。いずれにしても、早い時期の痛みです。

 

脳を含めた神経系には、興味深い特徴があります。それは、刺激を繰り返すと、「覚える」という現象です。

 

例えば、皆さんが子供の頃、掛け算九九を覚えさせられたと思います。

 

どんな方法で、記憶したでしょうか。恐らくは、何度も繰り返して、口に出して覚えたと思います。

 

これは、漢字の書き取りも同じで、やはり繰り返してノートに書いて覚えたと思います。

 

神経は、繰り返される刺激により、変化が生じます。これは、痛みの分野でも同様です。

 

例えば、痛みに「敏感」な状態について、記憶や学習と関連する<長期増強>のメカニズムと共通点があることが指摘されています。

 

痛みの分野では、急性期の痛みを減らすことが様々な文献で奨励されています。これは、患者さんの満足度を高めるだけではなく、痛みの長期化の抑制にも有効である可能性が考えられています。このことについて、上記の共通点を参考にすると、イメージしやすいです。

 

つまり、急性期に強い痛みを繰り返して感じると、神経系が痛みを「覚えて」しまい、痛みの長期化に結び付く変化が発生する可能性があるので、急性痛をできるだけ抑えるというイメージです(痛みの長期化について、実際には様々なメカニズムの関与が考えられますが、このように考えるとイメージしやすいのではないかと思います)。

 

急性痛には、怪我をした部位の保護を促すという、短期的には役に立つ側面もあります。しかし、基本的に、急性痛は我慢せず、減らすことが望ましいです。特に、手術後の痛みを含めて、強い痛みはできるだけ減らすことが重要と考えられています。

 

例えば、アメリカでがん治療に活躍している日本人医師が、テニスの試合中に怪我をして、患者として手術を受けた経験について、記事に書いています(<患者として体感 日米の医療の違い テニスの試合中に転倒、鎖骨を粉砕骨折し日帰り手術> Sponichi Annex 2024年3月25配信)。この記事から、術後の鎮痛に関する内容について、一部引用します。

 

 

<米国では痛みを体への侵襲、負担と捉え、日本よりも徹底的に痛みを排除します。私自身、1時間弱の手術を終え、1時間ほど回復室で完全に目を覚ました後、痛みを感じないので元気に帰宅することができました。これらの徹底した痛み管理により、日帰り手術が可能となっているのです>

 

 

ただし、痛みを減らすことは重要ですが、並行して徐々に体を動かしていくことも必要です。

 

長い期間、体を動かさずにいると、筋力や持久力等が低下するだけではなく、痛みの悪化にも繋がる可能性があります。基本的に、体を動かしていくことはとても大切です。

 

もっとも、痛みを減らすことと、体を動かすことには矛盾があるように感じる人がいるかもしれませんが(「体を動かせば、痛みが増えるのではないか」)、痛みの分野ではこれらを並行して進めることが重要だと考えられています。

 

いかにして、これらを両立すべきか。痛みを減らす治療はもちろんですが、例えば動くことに対する過剰な恐怖や不安など、痛みを増強させたり活動を低下させたりする可能性がある要素に対応することも大切です。

 

急性痛を減らすこと、そして体を動かすこと。これらはいずれも大切です。背景にある内容を知ることで、これらの重要性がより深く理解できるようになると思います。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp