加齢とともに減退する性欲。これは多くの中高年男性が感じていることではないだろうか。 「性欲の減退を阻止することは可能です。
一番いい方法は筋トレで、筋肉を成長させることで男性ホルモンの分泌を盛んにする。そうすれば自然と性欲は強くなるのです」こう説明するのは、性感研究の第一人者で医学博士の志賀貢氏だ。
筋トレと性欲の関係性は本コーナーで何度も紹介してきた。まだまだ現役でいたい――。そう願う男性は筋トレに励めばいいのだが、その一方で、こんな意見も決して少なくない。
“性欲はもういらない”「実際、60歳をすぎたあたりから、性欲の衰えとともに女性やセックスへの関心が薄れて、ソレを取り戻したいと考えないタイプの男性も出てくるんですね」
つまり、性欲はないけど女とヤリたい派と、性欲はないし女ともヤリたくない派に分かれるのだ。今回は“後者”のケースについて考察してみよう。 「この場合、2つのタイプが考えられます。
1つは、生まれつき性欲がさほどないタイプです。男なら性欲はあって当然、という考えが当たり前のように思われていますが、実はそうではない。性欲の強さの程度には個人差があり、なかには極端に性欲のない人もいるんです」
大抵の男性は若い頃、性欲が旺盛だ。そのため淡泊な男性に対して「男らしくない」などと思ってしまう。最近の言葉を使うなら「草食系男子」というヤツだ。
「ただ、性欲の少ない男性にすれば、性欲が旺盛な男性のほうが変なんです。
なぜそこまで性に夢中になれるのか理解できない。これはこれでお互い“個性”なので、どちらかを批難するのはおかしいのです」もう1つは、若い頃は性欲があったが、
加齢とともに性欲がゼロになるタイプ。シニア世代になってから、異性に興味がわかなくなった…そういう方も案外、多いのではないだろうか。
「このタイプも先ほど説明した、もともと性欲が少ない男性と同じなんです。年齢とともに性欲が減退して、性への関心が失せただけ。そう考えると、決して“悪い”ことではないのです」あくまで個性なのだ。
ゆえに、加齢とともに性欲が全くなくなった時は無理に取り戻す必要もないという。
「もちろん、本人の中で“まだまだ俺は性欲旺盛でいたい”という意思があれば別ですが、本心から“セックスをしたくない”と考えているのなら、無理はしないでいただきたいのです。
なぜなら、性欲がない=男として枯れてしまった、というようにマイナス思考になってしまうと、人生そのものがつまらなくなります」
いい意味で諦めることが肝心なのだ。
「性的な好奇心がなくなれば、それ以外の、自分の趣味や好きなことを楽しめばいいんです。若い女性を見てもヤリたいと思わない自分を恥じてはいけません」
性欲がまだある方にすれば、信じられない話かもしれないが、性欲ゼロになることはあり得る話なのだ。
「ちなみに一時的に性欲が全くなくなっても、しばらくすると自然と復活することもあります。それはそれで自分を受け入れればいい。とにかくマイナスには考えないことが重要です」
自分の本能に従って、人生を謳歌するべきだ。
志賀貢
医学博士。内科医として診療する傍ら、260作以上の小説やエッセイを執筆。また、性感研究の第一人者で『かなりHな夜の教科書』(河出書房新社)など、医学的見地に基づいたセックス&口説き術にまつわる著書も多数ある。