たとえば、風邪の場合、のどの痛みや鼻水などの初期症状から、発熱などのピークを迎えて、症状が落ちつきます。
統合失調症の場合も同様に、期間によって現れる症状に特徴があります。
期間の分類方法に明確な基準はありませんが、ここでは前兆期、急性期、休息期、回復期、安定期と5つに分けて、それぞれの期間にどのような症状が見られるか解説します。
なんとなく変だなと感じる前兆期
前兆期は、不眠、食欲不振、不安感、焦燥感、集中力の低下など、うつ病や不安障害に似た症状が見られます。
統合失調症の治療は、発症から治療までが早いほど、よりよく回復することが分かっています。この時期に、早めに精神科医に相談することをおすすめします。
妄想や幻覚などが現れる急性期
急性期は、統合失調症の中でも陽性症状に分類される幻覚や妄想などの症状が現れます。患者さん本人にとっては、幻覚や妄想が真実のように感じられ、それに従った行動を見せることもあります。
十分な投薬治療を行うことが大切です。あわせて、家族を含めて治療に専念できる環境づくりをしましょう。幻覚や妄想の症状がひどく、他人や自分を傷つける恐れがある場合は入院による治療も検討します。
エネルギーが低下する休息期
休息期は、幻覚や妄想の症状は落ち着きますが、意欲の低下が見られます。引きこもりがちになったり、一日中寝てばかりになることもあります。引き続き適切な投薬治療を行うことで、急性期に戻ることを防ぎます。
少しずつ元気を取り戻す回復期
回復期は、今まで出ていた症状が落ち着き、元気を取り戻し始めます。再発防止のためにも、引き続き投薬治療を行います。周囲から見ると、病気が治ったように見えますが、元の生活に戻ることを焦らず、
社会復帰のための準備などを進めましょう。この時期に入っても引き続き十分な休息と心の平穏を保つことが重要です。
症状が安定し始める安定期
安定期、比較的症状が安定している状態ですが、この状態になっても投薬治療は続けます。統合失調症を発症する前のような状態に戻る方もいれば、一部症状が残ることもあります。
その際には症状が完全に無くなることを目指すのではなく、症状のさらなる悪化を予防して、日常生活能力を保持していくことに治療の主眼をおく場合もあります。
統合失調症の予後
統合失調症の症状の現れ方は個人差があり、ここで解説したとおりの経過をたどらないこともあります。そのため、予後(病気を発症した後、どのような経過をたどるかの見通し)も人によって異なります。
共通して言えることは、様子を見ようと放置せずに早期に治療を開始することが、予後を良好に保つうえで非常に大切なポイントです。
統合失調症は再発しやすい病気です。回復期や安定期に入って症状が落ち着いたからといって、自身で判断し、薬をやめてしまうと再発リスクが上がります。
抗精神病薬は再発防止の点からも、ドクターの指示に従って余裕をもった服用期間が必要です。
統合失調症の方が、病気を発症してから病気の経過を長期にわたって調べた結果によれば、半数の方が社会生活に支障のない程度まで回復しています。
新薬の開発や医療プログラムの充実によって、今後はこの数が増えていくと考えられています。