「何がヤングケアラーだ」疑問や苦言 | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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 「ヤングケアラーなんて横文字を使わず『若年介護者』でいい」「軽い感じになって、深刻さが伝わらない」。通学や仕事をしながら家族の介護・世話などをしている子ども「ヤングケアラー」の報道に対して、ネット交流サービス(SNS)上でこんな疑問や苦言をよく目にします。

 

確かに和訳した方が分かりやすく親切なようですが、政府が行う全国調査や埼玉県が制定した全国初の条例、研究者の調査などでは「ヤングケアラー」という英語表記が使われ続けています。なぜでしょうか?【ヤングケアラー取材班】

ケア=介護だけ?

 大阪府の北川幸(さち)さん(仮名)は、小中学生時代に統合失調症の母親と暮らした元ヤングケアラーです

 

。中学1年の頃、深夜の繁華街を目的地もないまま母親に連れ回され、帰宅は午前0時過ぎという生活でした。会話のおぼつかない母親に代わってスーパーの店員とやりとりをし、食事を作ってもらえない日はインスタント食品などで空腹をしのいだそうです。

 

母親は身体に異常はなく、統合失調症の知識も当時なかった北川さんは、物理的な介護というよりも、母に寄り添って支え、見守っていたわけです。

 ポイントは「ケア」という言葉にあります。

 家族介護を支援する一般社団法人・日本ケアラー連盟は、ヤングケアラーを10の類型に分類します。障害がある家族の代わりに家事をしたり、トイレ・入浴など身体的な介助をしたりするのは、日本語の「介護」のイメージそのままです。

 

では、「障害のある家族に代わって幼いきょうだいの面倒を見る」「家族の見守りや声かけなどの気づかいをする」「日本語が第1言語でない家族や障害のある家族の通訳をする」などを、介護と呼ぶのはどうでしょうか?

 広辞苑によると、介護とは「高齢者や病人などを介抱し、日常生活を助けること」。介護保険が普及した現在、高齢者や障害者への物理的・身体的な介助をまず思い浮かべる人が多そうです。

 

一方、英語のケア(Care)は介護、看護、世話をする、面倒を見る、配慮、注意、用心などと訳されます。

 ヤングケアラーというカタカナ用語が「親孝行な子」「頑張っている子」というポジティブな印象を与えて支援が遅れることを心配したり、意味が分かりにくいと感じたりする人がいるのは無理もありません。

 

ただし、ケアを介護と和訳することで対象が狭められてしまい、「この子は違う」と世間の関心や支援からこぼれ落ちる子どもが出るおそれもあります。

 

 ヤングケアラーへの支援が盛り込まれた埼玉県ケアラー支援条例は、病気や障害のある親族らに対し「無償で介護、看護、日常生活上の世話、援助を提供する者」がケアラーだと定義しました。条例を提案した吉良英敏県議は「ヤングケアラーは非常に多様で、全てのケースを網羅して規定するのは難しかった」と悩みを打ち明けました。

 政府にもヤングケアラーの明確な定義はまだありませんが、2019年5月に根本匠厚生労働相(当時)が、国会で「本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを、日常的に行っている児童」と答弁しました。厚労省がヤングケアラーという呼称を変える動きもないようです。

 

家族の介護などをする人(ケアラー)の負担という社会問題が世の中にあまり浸透しておらず、支援制度も不十分な現状も、日本語表記が固まらない背景にあるかもしれません。

海外から「輸入」

 では、ヤングケアラーという用語はどこから来たのでしょうか。研究者によると、1980年代からヤングケアラーに注目していた英国では既に支援法が制定されています。

 

日本でも00年ごろから一部の研究者が英国での調査結果や支援政策を紹介してきましたが、最近まで一般にはあまり知られず、ようやく今冬、政府が全国調査を始める段階にあります。

 渋谷智子・成蹊大教授は著書「ヤングケアラー 介護を担う子ども・若者の現実」(中公新書)で「ケアラーという言葉は、これまで『高齢者』『障がい者』など、ケアの受け手の属性によって制度も機関も支援組織も分かれていた状況を超える形で出てきた」と説明しています。

 

ヤングケアラーは海外から「輸入」され、日本でもようやく知られ始めた概念ですが、さまざまな状況・行為によって家族を支える子どもたちを示す日本語訳がなかなか見つからないので、行政や研究者がそのまま使っているというのが実情でしょう。

 支援策が未整備の日本にとって、英国の取り組みは参考になるはずです。英国の支援団体担当者、ヘレン・リードビターさんは「最も大事なのはヤングケアラーの声を聞くことだ」と指摘します。

 

毎日新聞は社会問題として「ヤングケアラー」の呼称を使っていますが、字数が制約されがちな見出しや記事の中で「介護」と表記することもあります