新指導部始動 市場主導に邁進
徐 学林氏((株)京華創業 代表取締役)
17日に閉幕した中国の全人代で習近平と李克強がそれぞれ国家主席と首相に選出され新指導部が始動しました。
開会中の今月10日「第2回京華投資視察団」で北京に入り、肌身で政治の雰囲気を体験してきました。
北京到着後の翌日、全人代開催の人民大会堂と天安門広場を見て回りました。これまで大きなイベントがあったときには、大抵物々しい雰囲気に包まれ、警察車両や兵隊で一部を封鎖などされましたが、今回は警察の姿こそ見えましたが、戒厳(道路封鎖)も物々しい雰囲気もなく、習・李新政を感じさせてくれました。
全人代開会中の天安門前広場 普段と変わらない様子
朝、街の「報亭」といわれる新聞や雑誌の販売小屋で新聞を購入し、「鉄道部解体 三職能分離」という大きな見出しが目に留まりました。汚職王国といわれる鉄道部がついに解体が決定されました。鉄道部はもともと国務院の一部門で、鉄道の長期開発計画の策定や土地の収用、線路の敷設、高速鉄道の建設、資材調達、電車の運営まで一手に握っていました。
1949年(毛沢東時代)以降、国民経済の命脈と位置付けされた鉄道の建設を鉄道部に集中させ、鉄道兵という退役兵隊を鉄道の建設に大量に投入してきました。
ところが、鉄道の開発計画と実際の運営まで一部門ですべて賄うには、非効率化と腐敗が生じ、前鉄道大臣の劉志軍が300億元(約4500億円)の賄賂を受け取ったとして失脚、逮捕され、13年の実刑判決を受けたばかりです。
中国版新幹線――高速鉄道のグリーン車両内
当社が企画した「第2回京華投資視察団」で、3月10日から日本を出発し、北京、南京、無錫、上海を訪ねて16日帰国しました。目的は上場企業の訪問ですが、個人的には中国版新幹線――高速鉄道に一回乗ってみたかったので、北京南京間は空路の予定を高速鉄道に切り替えたのです。
と申しますのは、鉄道部が公表した調達リストに、高速鉄道の車両備品に化粧室のユニットは一軒につき30万元(約450万円)、洗面台一面2.6万元(約39万円)、センサー蛇口一個1.28万元(約19万2000円)、ティッシュペーパーの箱が一個1125元(約16800円)だという「超高級品」がずらりと出ていて、自らそれを確認しようと思ったからです。
北京から南京まで1023キロで、午後3時始発が3分ほど遅れましたが、3時間46分で時速300キロで夕方7時前無事南京に到着しました。鉄道の旅としては快適でしたが、従来の高速列車と比較して便利になったものの、備品の「超豪華さ」をあまり感じませんでした。
時速306キロを示す電光掲示板
それよりも、鉄道部は国有企業改革の最後の牙城とされ、これを改革せずには、国有企業改革の成功はなしと言われるくらい、内外から注目されていました。
今回の解体により、企業部門は中国鉄道総公司に、鉄道の技術や安全基準、輸送サービスなど行政部門は国家鉄道局に、そして鉄道の長期開発計画や政策、鉄道行政全般は交通運輸部にそれぞれ分割されることになりました。
政治と企業との癒着がまだまだ深い中国ですが、鉄道部の解体により、市場経済化に向けて一歩踏み出したことになります。
全人代閉幕式後の記者会見で、首相に就任した李克強氏は「国務院の許認可事項はまだ1700項目に及び、本内閣ではこれを更に三分の一を削減する」と宣言しました。
WTO加盟はすでに12年、本格的な市場経済に向かうのか、世界中の注目を浴びています。
徐 学林氏
1983年 北京外国語大学日本語科卒
北京放送入社
1990年 NHK国際局にて研修
1991年 名古屋市立大学大学院経済学研究科入学
1998年4月 (株)日本事業通信網入社
2001年6月 (株)邱永漢事務所、(株)邱永漢アジア交流センター入社
2012年9月 (株)京華創業 代表取締役就任
(株)京華創業
http://keika-corp.co.jp/