9月の高市政権を数字で見ると、少し興味深い結果になる。報道10社の内閣支持率を単純平均すると約55%。8月の54%台から大きく動いたわけではない。
もっとも、各社の調査時期は異なり、内閣改造や9月後半の外交日程を反映していない調査も含まれている。したがって、9月全体を通して見るなら、支持率が大きく上昇したというより、10社の単純平均は50%台半ばだったと見る方が実態に近い。
一方で、時事通信の44.1%からJNNの62.5%まで約18ポイントの開きがあり、調査機関による水準差も大きい。世論調査を見る際には、一つの数字だけではなく、複数社の推移を確認する必要がある。
9月は「成果の確定」ではなく、10月への準備だった
9月17日、第2次高市改造内閣が発足した。政府は「責任ある積極財政」「強い経済」を掲げ、成長投資や危機管理投資を進める方針を改めて打ち出した。
外交では、22日に国連総会で一般討論演説を行い、同日にはトランプ米大統領と約35分間会談した。AI、半導体、重要鉱物などの経済安全保障に加え、直後に予定されていた米中首脳会談を念頭に中国をめぐる問題も協議した。
さらに、米中首脳会談後の26日には、トランプ大統領から高市首相に電話があり、約20分にわたって会談内容の説明が行われた。米中間で何が話し合われたのかを、日本の首相が直後に米大統領から直接聞く回路が維持されていること自体は、日米間の意思疎通の一つの事実として押さえてよい。
しかし、日中関係そのものを改善するには、当然ながら米国との協議だけでは足りない。高市首相は、中国を「重要な隣国」と位置付け、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、建設的で安定的な関係を構築するとの政府方針を改めて示している。
一方で、11月のAPECに合わせた習近平国家主席との首脳会談について、政府から開催はまだ公表されていない。次に注目されるのは、日中首脳が直接対話する機会を設けられるのか、そしてそこで何を協議するのかである。
消費税減税は、賛否より財源が本題になる
10月5日に召集される臨時国会で最も生活に近いテーマが、飲食料品の消費税減税である。政府案では2027年4月から2年間、現在8%の飲食料品の税率を1%に引き下げ、さらに所得に応じた給付を組み合わせ、全体として実質ゼロ化を目指す。9月15日には制度の大綱が閣議決定された。
FNN調査からは、「減税には賛成だが、効果と財源は説明してほしい」という有権者の姿がうかがえる。政府は特例公債に頼らず財源を確保すると説明しているが、給付を含め年間約5兆円、2年間で約10兆円規模とされる財源を具体的に何で賄うのかは、これからの予算編成と国会審議で確認すべき論点である。
つまり、国民の反応は、「減税には賛成だが、効果と財源は別に説明してほしい」というものに近い。政府は、特例公債に頼らず財源を確保すると説明しているが、年間約5兆円規模とされる負担を具体的に何で賄うのかは、これからの予算編成と国会審議で確認すべき論点である。
中道は分裂したが、国会会派は残った
もう一つ、10月国会の構図を変えたのが、中道改革連合の再編である。49人の衆院議員のうち48人が離党し、旧立憲系のうち18人は「民主改革の会」に参加、公明出身の28人は公明党に復党した。
政党としては分かれたが、国会では47人の統一会派として連携を続ける。つまり、政党は分かれても、国会での協力関係は残ったという構図である。
高市政権にとって、衆院だけを見れば大きな多数を持つものの、参院では過半数に届かない。このため、消費税減税をはじめ重要法案を通常の形で成立させるには、野党との合意形成が引き続き重要になるため、10月国会は野党の動きも注目される。
株価は高い。しかし家計はまだ強くない
そして、政治を考えるうえで、もう一つ忘れてはならないのが日本経済である。9月29日の政府月例経済報告は、日本経済について「緩やかに回復している」とした。4~6月期の実質GDPは前期比0.4%増だった。
ただし、内訳を見ると一様ではない。GDP統計の民間最終消費支出は前期比0.0%で、民間企業設備も0.9%減だった。一方、法人企業統計季報では設備投資が前期比1.5%増となっており、政府は足元の設備投資を「持ち直している」、輸出も「持ち直しの動き」、生産も「総じてみれば持ち直しの動き」と判断している。
さらに、7月の二人以上世帯の実質消費支出は前年同月比3.6%減だった。マクロ経済や企業部門の改善が、そのまま家計の実感につながっているわけではない。
株価と家計には、まだ違う景色が見えている。日経平均は年初の5万円台前半から上昇し、6月22日には取引時間中に7万2,831円73銭の年初来高値を付けた。その後は調整局面に入ったが、9月30日は前日比1,272円45銭高の6万6,753円72銭で終了した。9月全体でも前月末比約0.7%上昇した。
データでは、終値は20日移動平均線を明確に上回り、MACDのヒストグラムもプラス圏へ転じている。一方、RSIは過熱圏には達していない。夏場の調整から短期的なモメンタムが改善していると読むことができる。ただし、6月高値からはなお約8%下であり、高値更新局面へ戻ったと断定できる段階ではない。
一方、金融環境には別の緊張がある。9月30日午後3時時点のドル円は1ドル156円93銭前後、新発10年国債利回りは3.051%だった。日銀は9月18日に政策金利を1.25%程度へ引き上げている。つまり、株価が持ち直す一方で、円安と3%台の長期金利が並存している。積極財政や減税を進める上でも、為替、物価、金利を同時に見なければならない局面である。
少なくとも株式市場は、日本経済の急激な悪化を織り込んでいる状況には見えない。しかし、円相場は1ドル157円前後にあり、長期金利も3%前後まで上昇した。
日銀が政策金利を1.25%まで引き上げ、米FRBも3.75~4%へ利上げしたことで、世界は再び「金利のある時代」に明確に入っている。ここに、これからの高市政権の経済政策の難しさがある。
成長投資を進めたい。家計負担も軽くしたい。しかし国債金利が上がる時代には、財政支出のコストも上がる。「責任ある積極財政」という言葉は、以前よりはるかに具体的な数字で説明する必要が出てきた。
支持率とあわせて見るべき論点
9月を振り返ると、高市政権は内閣改造を行い、消費税減税の法案化を進め、国連総会と日米外交に臨んだ。その一方で、消費税減税の財源、参院での法案成立、日中関係、円相場、長期金利、家計消費という課題も明確になった。
そのため、10月以降に確認すべきなのは内閣支持率だけではない。飲食料品減税の財源を具体的に示せるのか。実質賃金と個人消費は改善するのか。円相場と長期金利はどこで安定するのか。日中首脳が直接対話できる環境をつくれるのか。そして、参院で過半数を持たない与党が、重要法案についてどこまで野党との合意を形成できるのか。
与党系会派は、衆院では「自由民主党・無所属の会」315、維新36の計351議席を持つ。一方、参院では直近の公表値で自民系会派101、維新19の計120議席であり、過半数には届いていない。
政権発足からまもなく1年を迎える現在、9月の内閣支持率は10社単純平均で約55%だった。しかし、支持率は政策成果そのものではない。10月から確認すべきなのは、その支持が、暮らし、経済、外交、そして国会運営の具体的な結果とどう結び付いていくかである。


