2026年度予算が年度内に成立しないことを与党が正式に認め、国会では11年ぶりとなる暫定予算が成立した。野党やメディアは、これを高市政権の失策として報じ、鬼の首を取ったように嬉々と語る野党議員の姿が、様々なメディアを通じて報じられている。

 

しかし、果たしてこの評価は正しいのであろうか。冷静に経緯を振り返ってみると、見えてくるのはまったく異なる景色である。ここで浮かび上がるのは、高市首相の周到な戦略とそれに対する野党の動きの稚拙さである。以下にその理由を挙げる。

 

今回の予算審議が異例の日程となった原因は、通常国会冒頭での衆議院解散にある。解散総選挙で審議が約1カ月遅れることは明らかであり、批判の声は当然あった。しかし、結果として2月8日の総選挙で、自民党は単独で316議席という歴史的大勝を収めた。

 

連立与党では衆議院の4分の3を超え、自民党は過去最多の議席数を得ている。さらに、比例では登録の関係で14議席を野党に譲り渡したという現実もある。この民意の後ろ盾が、その後の予算審議で、与党が主導権を握る基盤になっている。

 

衆議院では、与党が委員長職権を行使しながら3月13日に予算案を通過させた。審議時間は約59時間で過去20年で最短となるが、衆議院では4分の1に満たない野党に対しては、議席数に照らせば十分すぎるほどの時間を与えているという事実もある。

 

ここで重要なのは、審議時間の長短ではない。この時点で、憲法第60条が動き出し、参議院が30日以内に議決しなければ、衆議院の議決が国会の議決とみなされるという日程が決まった。これは、4月11日に本予算が自然成立することが確定した瞬間である。

 

高市首相が3月13日の採決にこだわった戦略的意味は、まさにここにある。仮にこの採決が翌週以降に遅れていたら、自然成立は4月下旬にずれ込むことになり、国民生活への影響ははるかに大きくなっていたはずだ。野党は、熟議を理由に徹底的に抵抗した。

 

予算案の審議では、過去最大の歳出が注目されており、議論すべきテーマは山ほどあった。それにもかかわらず、一部の野党議員はカタログギフト問題やスキャンダルの追及などに終始し、国民が聞きたかった具体的な政策への追求をほとんど行なわなかった。

 

参議院に舞台が移ってもその本質は変わらなかったが、参議院では与党が過半数に4議席足りないことから、野党はこれを好機と捉え、例年並みの審議時間を要求した。これは、通常なら3月末を超える時間数となるが、休日返上で議論すれば間に合う時間数でもある。

 

しかし、野党は土日の審議を頑なに拒否し、暫定予算の編成方針を明確にしなければ審議に応じないと条件闘争に終始した。自民党の磯崎国対委員長が、28日に土日の審議を呼びかけた際も、立憲民主党の斎藤国対委員長は議論もせずこれを拒否した。

 

つまり、熟議が足りないと主張しながら、自ら審議の機会を制限していたということにもなる。従来の慣習にこだわることで、3月31日という期限を超えさせることが目的化していたと言えるようなやり方である。

 

審議の過程で予算案に関する懸念がいくつも見つかり、そのために十分な審議時間が必要だというような話にでもなれば、野党の言い分にも一理はあると頷ける。しかし、現実にはそのようなレベルの高い質疑はほとんどなかった。

 

結果として、政府は暫定予算を3月30日に成立させ、高校授業料無償化や小学校給食無償化、行政運営に支障は生じない状況を作り出した。そして本予算は、いずれにせよ新年度開始からわずか10日余りで執行が始まる。

 

この結果を冷静に見れば、高市首相の勝負勘は見事であったと言える。1月に解散を断行し、2月に圧勝し、3月13日に衆院を通過させた。4月11日の自然成立を確保したうえで、野党やメディアの批判を浴びながらも、相手のペースに乗ることなく国会論戦を乗り切った。

 

特筆すべきは、首相自身が年度内成立の旗を最後まで降ろさなかったことである。参院自民党内に「もう無理だ」という空気が広がっても、強い意志を示し続けた。これが結果的に、暫定予算の期間を最短の11日間に抑えることにつながった。

 

反対に、予算の年度内不成立を手柄のように喜ぶ野党の姿は、国民の目にどう映っているのであろうか。熟議を旗印にしながら、質疑は低俗な攻撃に終始し、建設的な対案はない。改革を阻むだけの抵抗勢力にしか見えないという指摘は、的外れではあるまい。

 

そもそも、予算の年度内成立を阻んだこと自体が、国民生活にとって何のプラスにもならない。喜んでいるのは野党の議員だけで、国民はむしろ不安を感じているのではないか。暫定予算を組んだ後で、ゆっくり本予算の審議をすればよいという主張は詭弁でしかない。

 

中東では米国・イスラエルとイランの武力衝突が長期化し、原油価格が高騰している。物価高が国民の暮らしを直撃するなかで、一日でも早く本予算を成立させ、エネルギー対策を含む各種施策を執行に移すことが、責任ある政治家の姿勢である。

 

今回の審議を通じ、高市政権が永田町の慣習にとらわれない政治手法で改革を進める改革勢力であることが明らかとなり、その改革を阻む抵抗勢力が、野党や自民党内の一部守旧派、従来の政治報道の枠組みに固執するメディアという構図が出来上がった。

 

そして、注目すべきは、こうした攻防のなかでも、高市内閣の支持率が高水準を維持していることである。若い世代を中心に幅広い支持を集める高市政権の基盤は、この程度の国会での攻防では揺らがないことも明らかとなった。

 

この事実に、メディアを含めた抵抗勢力の人たちはどのように向き合うのか。年度内不成立を声高に叫んでも、4月11日には本予算は成立する。このこと自体が高市首相の勝利である。建設的な代案を示すことでしか、信頼は取り戻せないことに早く気づくべきだ。

 

高市首相がこの予算国会で示したのは、従来の永田町の論理に縛られない新しいリーダーシップの形である。予算の年度内不成立を高市政権の敗北と断じるより、4月11日の本予算成立を確実にした手法に注目すべきだ。永田町の政治は、高市政権の誕生で変わりつつある。