日経平均株価が59,000円の大台を突破した。前日も終値で58,583円と史上最高値を更新したが、わずか2日間で2,500円以上の上昇を見せ、6万円の心理的節目も射程圏内に入ってきた。しかし、メディアはこの快挙を、あまり大々的に取り上げていないようだ。

 

円安が進めば「国民生活を直撃」、金利が上がれば「住宅ローンが破綻」、物価が上昇すれば「アベノミクスの負の遺産」と報じるなど、メディアの論調はいつも同じだ。国民の不安を煽れるものだけを強調し、政権批判の材料に使っていると見られても不思議ではない。

 

株価が上がっても「富裕層だけが恩恵を受ける」「実体経済を反映していない」と冷ややかに片づけ、下がれば「政策の失敗」と断じるなどの偏向姿勢が、国民の不信を招いている。野党はこれらの報道を政権批判の材料として使っているが、理解は広がっていない。

 

株価の上昇が、経済にプラスとなるのは明らかである。そこで、なぜ株価がここまで上昇し、この上昇が日本経済と国民生活にどのような効果をもたらすかについてを、昨今の日本の経済状況や国内外の情勢を踏まえた上で考察してみた。

 

株価上昇の最大の要因は、日本企業の収益力向上にある。2026年3月期のEPS(一株当たりの利益)は2,690円前後に達しており、来期はさらに12%程度の増益が見込まれている。単純にPER(株価収益率)20倍で計算すれば、日経平均は6万円に到達する。

 

この増益の背景には、いくつかの構造的な変化がある。まず、東京証券取引所が2023年に打ち出したPBR1倍割れ企業への改善要請が、着実に成果を上げている点である。企業は自社株買いや増配を積極的に行ない、自己資本利益率は直近で9%台に乗せてきた。

 

これは、欧米の機関投資家が日本企業を長期的に評価し直す契機となっている。加えて、値上げの浸透による利益率の改善や人手不足環境下での生産性向上、M&Aや政策保有株の売却を通じた資本効率の改善などが、複合的にEPSの拡大を支えている。

 

2月25日の日経平均急騰の直接的な引き金は、政府が国会に提示した日銀審議委員の人事案である。2名が候補として提示されたが、両氏ともに金融緩和と積極財政を重視するリフレ派とみられており、2名を同時に起用する案がサプライズとなった。

 

この人事案で、高市政権のもとで好景気・インフレが長期化するとの期待感が生まれ、日本株にポジティブな局面が続きやすい状況となってきた。高市首相が主張する「名目GDPの成長率が名目長期金利を上回る環境」は、株式市場と相性の良い環境ともなっている。

 

また、衆院選で自民党が圧勝し、単独で3分の2を超える議席を確保したことも、市場にとっては極めて大きなポジティブ材料となった。これまでも高市政権の安定化を期待した買いが入っていたが、より現実味のある話しとなり、先高観が広がっていると言える。

 

高市政権が掲げる、AI・半導体、防衛・経済安全保障、造船、エネルギーなど17の戦略分野への重点投資は、選挙での圧勝によって実現の確度が飛躍的に高まった。そのため、政治リスクの低下を好む海外投資家の巨額の海外資金が、継続的に日本株市場に流入している

 

グローバルな視点で見れば、AI関連投資の拡大が日本株上昇の重要な推進力となっている。2月25日の米国市場ではエヌビディアの好決算が好感されて半導体関連株が上昇し、その流れが翌26日の東京市場にも波及した。

 

日本には世界的な半導体製造装置メーカーが集積しており、グローバルなAI投資サイクルの恩恵を直接的に受ける立場にある。高市政権がAI・半導体を戦略分野の筆頭に位置づけ、国家として積極的な支援策を講じていることも、海外投資家の日本株選好を後押ししている。

 

また、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は、市場からの評価が分かれる政策ではあるが、株式市場にとっては総じてプラスに作用している。野村證券は、2026年末の上振れシナリオとして日経平均59,000円を提示していたが、2月の時点ですでに現実のものとなった。

 

GDP比で1%の真水が2027年度にかけて毎年寄与すると仮定した場合、TOPIXのEPSを合計で5~6%押し上げる効果がある。値上げ効果と数量効果を合わせた業績拡大に、財政出動の乗数効果が加わることで、企業収益の拡大基調はより強固なものとなる見通しである。

 

メディアはしばしば「株価が上がっても国民生活は良くならない」と論じるが、これは明らかに事実を歪めた主張である。日本の個人金融資産は2,100兆円を超えており、株価の上昇は数百万人に及ぶ個人投資家の資産を増やし、消費マインドの改善に寄与する。

 

さらに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとする公的年金の運用成績が、株価の上昇によって大幅に改善する。これは、将来の年金給付の安定にもつながり、すべての国民にとって間接的だが確実な恩恵となる。

 

また、株価の上昇は企業の資金調達コストを低下させ、設備投資や人材投資を促進する。株式市場での評価が高まれば、経営者はより積極的な成長投資に踏み切れる。2025年、2026年と連続で5%台の賃上げが実現しているのも、企業収益の拡大があればこそである。

 

海外からの対日投資の呼び込みも、活発となっている。株価が上昇し、企業のガバナンスが改善し、政治が安定している国には、自然と海外からの投資が集まってくる。これは製造業の国内回帰や、サービス業の高度化を後押しするなどの好循環を生む効果がある。

 

高市政権の財政に対しては、バラマキや財政規律の軽視といった批判が野党やメディアから繰り返し投げかけられてきた。しかし、株価が6万円を視野に入れているという事実は、国内外の投資家が、高市政権の経済政策を一定以上評価していることの証左でもある。

 

経済が好調な国の首脳は、国際舞台でも発言力を持つ。トランプ政権との通商交渉、中国との外交的駆け引き、そしてインド太平洋地域における日本のプレゼンス向上のすべてにおいて、「経済的に強い日本」のイメージは高市首相の武器となる。

 

選挙で国民の信任を得た直後に株価が史上最高値を更新し続けるという状況は、高市政権の求心力をさらに高めることにもなる。参議院で過半数に4議席足りない現状を考えれば、2028年の参院選に向けた政治的な追い風としての効果も極めて大きい。

 

株価の上昇は、配当課税・譲渡益課税の増収に直結する。法人税収も企業業績の改善に伴って増加する。積極財政は財政を悪化させるという批判に対して、成長による税収増で財政は改善するという、ドーマー条件的なアプローチの正しさが実証されるものと思われる。

 

株価の見通しは難しいが、強気シナリオでは年末に65,000円前後との声もある。一方、下振れシナリオでは52,000~55,000円とも言われている。ここから分かるのは、最悪のケースでも昨年末の50,339円は上回る水準ということであり、上昇トレンドは崩れない。

 

このような歴史的な局面においてメディアが報じるべきは、この上昇の背景にある構造的な変化と、それが国民生活にもたらすプラスの効果である。悲観的な指摘を否定はしないが、それだけを取り上げて、株価の歴史的上昇を無視するのは報道として偏っている。

 

15年前、日経平均が1万円台で低迷していた時代を思い出してほしい。当時、株価が上がらないことを「日本経済の滞」の象徴として、メディアは鋭く批判してきた。株価が6倍近くになった今、その変化を正面から評価しないのは不思議だ。

 

日本経済は、「失われた30年」からの本格的な脱却の途上にある。株価の上昇は、その象徴的な出来事である。企業収益の改善やデフレからの完全脱却、積極的な成長投資、安定した政治基盤などで生み出される成果を、正しく認識することが重要である。