パリに拠点を置く世界不平等研究所が、2026年の世界不平等レポートを公表した。レポートでは、グローバル化と経済成長の恩恵は一部の富裕層に偏り、世界の大多数の人々が依然として安定した生活基盤の確保に苦しんでいる事実を明らかにした。

 

そこでは、世界の人口の上位10%が総資産の4分の3を占める一方で、下位50%が所有するのはわずか2%に過ぎず、さらに世界で最も裕福な富裕層(6万人に満たないマルチミリオネア)が、全人類の下位半分の富の3倍以上を支配しているという衝撃的な事実が示された。

 

その上で、この極端な不平等は必然的な結果ではなく、政治的・制度的な選択の結果であると結論付けており、格差は所得や資産、ジェンダー、気候変動などのあらゆる側面で現れており、危機的な状況にあると警告している。

 

日本は、先進国の中では国内の所得と資産の不平等は「中程度で安定」していると評価されているが、富の不平等が所得に比べて大きくなっている。今回のレポートでは、富裕層の上位10%が総資産の約59%を占め、上位1%が約24%を握っている現状が明らかとなった。

 

ジェンダー格差の面では、女性の労働参加率は26.9%で安定しており、この10年間で男女平等に向けた進展は限定的ではある。そのため、日本は、先進国の中では比較的バランスの取れた所得分配を維持しているものの、富の集中は根強く残っていると評価された。

 

米国は、富裕国の中でも格差が依然として高く、その水準は過去10年間ほとんど変化していない。上位10%の所得シェアは47%に上り、富の上位10%は総資産の70%を占めている。上位10%と下位50%の所得格差は34.6倍で、日本を大きく上回っている。

 

ヨーロッパの先進国は一般に格差が低い。ノルウェーは世界で最も所得水準が高い国の一つだが、不平等は最も低いレベルで、比較的安定している。デンマークも世界的に見て格差が低い水準にある。フランスは不平等は中程度で安定しているが、富の不平等は著しく高い。

 

一方、巨大経済圏や途上国では、格差が極めて深刻な水準にある。 インドは世界で最も格差が大きい国の一つであり、所得も平均水準にとどまっている。所得、資産、ジェンダーのあらゆる側面で根深い構造的格差が残されている。 

 

ブラジルも世界的に見て最も格差の大きい国の一つである。過去10年間でさらに格差が拡大している。上位10%が所得の約59%を占め、所得格差は2014年の53倍から2024年には63.5倍にまで拡大している。

 

中国は数十年にわたる急激な格差拡大の後、現在は格差が高水準で横ばいになっている。所得の上位10%が約43%を占め、富の上位10%は約68%を占めている。中国は富の偏在が大きく、共産主義の国は格差が生まれやすいという皮肉にもなっている。

 

レポート全体を通して浮かび上がる結論は、今日の極端な不平等は不可避なものではなく、政治的・制度的な選択の結果であるということだ。累進課税と年金や失業保険などを通じた再分配政策が、全ての地域で不平等を縮小させる効果があることも示されている。

 

格差の是正には、公的な教育や医療への投資、ジェンダー平等を推進する政策、富裕層への公平な課税などが求められる。世界のビリオネアや純資産1億ドル以上に2%から3%の富裕税を課せば、GDPの0.45%から1.11%に相当する収益を生み出せるとも試算されている。

 

レポートは最後に、極端な格差が経済的なレジリエンス、民主主義の安定、そして地球の存続を脅かしているとし、富の極端な集中を続ける道を進むのか、それとも共有された繁栄へと向かうのか、今まさに政治的な選択が迫られているとまとめ締めくくっている。

 

 

参照:世界不平等レポート(World Inequality Report 2026)