第195話 神話へのキセキ! 最後のデジコード・スキャン | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよび
デジモンアドベンチャー02の
二次創作(小説)中心に稼働します。

注)『デジモンフロンティア02~神話へのキセキ~』は
管理人が勝手に想像するフロンティアのその後の物語です。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。


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 俺の姿を見上げて、ネーモンとボコモンがつぶやく。
「進化した……」
「じゃが、プルートモンじゃないハラ」
 俺は二人の方を見下ろして、口の端を上げて笑った。
「ああ、今の俺は、ヴィシュヌモンだ。ありがとな、さっきは俺のこと心配してくれて。もう大丈夫だ」
 視線を巡らせて、エンジェモン、テイルモン、トゥルイエモンと目を合わせていく。
 最後にスサノオモンの青い目を見つめて、力強く頷く。
 言葉は交わさない。ただ、俺のことをまっすぐに見つめ返してくるその目だけで十分だった。
「何故だ」
 絞り出すような声がした。
 俺は表情を引き締め、宿敵に向き直る。
 ユピテルモンはこぶしを握り、肩を震わせて俺を見ていた。
「何故プルートモンにならなかった!」
「っ!?」
 猛烈な勢いで殴りかかってきた。俺はとっさに、左腕の盾で受け止める。
 ユピテルモンは何度もこぶしを打ちつけてくる。
「最高神たる私が、お前の能力を見出して、力を与えて! 不意討ちを使ってでも人形を破壊した! お前に直接スピリットを埋めることさえしたのに! 何故それほどに抗う! 神の意思に逆らう!」
 言葉通り叩きつけられる怒りを受け止めながら、俺は静かに言葉を返す。
「お前が、神ではないからだ」
「何だと……!?」
 ユピテルモンがひるみ、動きを止める。
 自分が強大な力を得て、分かったことがある。
 最期の神のスピリットを宿しても、俺は「信也」だ。
 拓也の弟だ。
 ノゾムの相棒だ。
 神なんかじゃない。
「ユピテルモン、お前は、お前が犠牲にしてきた民と同じ、一体のデジモンだ。誰かに罰を与えたり、世界をもてあそんだりする権利なんて、お前にはない!」
「大した年月としつきも生きていないお前が、知った口をきくな!」
 叫ぶユピテルモンの体が金色に光り、プラズマの塊と化す。
「《ワイドプラズメント》」
 ここでは他のみんなを巻き込む。俺は背中の翼を広げて、森へと飛ぶ。
 後ろを、プラズマの塊が追ってくる。
 俺は森の上空で動きを止め、ユピテルモンに向き直る。
 剣を天高く投げ上げ、両手を胸に当てる。自分の意志で能力を引き出す。
「《カリ・ユガ》」
 両腕を広げると同時に、周囲の空気が震えた。
 森の木々が、地面がデジコードに変わり、俺の両手に吸い込まれていく。
 迫っていたプラズマの塊からもデジコードが流れ出す。
「なっ!?」
 ユピテルモンは焦って俺から離れていく。それでも、プラズマの体を維持できず、人型に戻って地面に転げ落ちる。
 俺が手を握ると、デジコードを吸い込む力は収まった。
 ユピテルモンは体を震わせながら俺を見上げてきた。
「何故だ。私は天空を統すべる神として、1000年の長きに渡って世界を治めてきた。それが、神になりきれなかったお前に負けるなど!」
「なりきれなかった? それは違う!」
 落ちてきた剣を右手で受け止め、クレーターのそばに転がるユピテルモンに切っ先を向ける。
「今の俺が強いのは、半分人間で半分デジモン、2つの力を合わせた存在だからだ!」
 俺は柄を両手で握り、呼吸を整える。
 俺の手から赤い炎がほとばしる。炎が柄を伝い、刀身を巡り、切っ先をまばゆく染める。
 その熱で一帯の空気が揺らめく。
 剣を振り上げ、翼を羽ばたかせ、敵に接近する。炎が切っ先を超え、俺の身長より巨大な炎の刀身となる。
 渾身の力を込めて振り下ろす。
「くらえ……《ラーマ》!」
 剣はユピテルモンの脳天を捉え、顔の半分までめり込んだ。炎がユピテルモンの鎧をなめ、全身を燃え上がらせる。
 ユピテルモンの胴に蹴りを入れる。ユピテルモンは炎を上げながら木に叩きつけられた。
「ヴィシュヌモン!」
 振り返ると、スサノオモンと元三大天使、ボコモンとネーモンが追いついていた。スサノオモンは元三大天使に支えられ、どうにか歩いている。
 ボコモンが恐る恐るユピテルモンを見る。
「倒した、のか?」
「ま、まだみたいだよぉ!?」
 ネーモンが指さして悲鳴を上げた。
 頭に剣が刺さり、炎に包まれているにも関わらず、ユピテルモンはまた立ち上がった。ゆがんだかぶとの中から、赤い目が俺達を見つめている。
「ウオォォォ!」
 ユピテルモンが吼えた。
 上空が雷雲に包まれ、無数の雷が地上を襲う。地面がはぜ、木が音を立てて倒れる。とっさに元三大天使がバリアを張る。
 エンジェモンとテイルモンが畏怖とも哀れみともつかない表情を浮かべる。
「あの状態になって、まだデジコードが出ないとは」
「なんという執念……」
 スサノオモンが俺に顔を向けた。
「ヴィシュヌモン、これを使え」
 スサノオモンが差しだしたのは、細身の剣だった。
「俺達が使っていた武器の一部だ。これに、俺達に残った力を全て込める」
 スサノオモンの目を見つめ、頷く。
「分かった」
 俺が剣の柄を握る。スサノオモンが目を閉じ、剣を握る手に力を込める。
 剣が白い光に包まれた。同時に、スサノオモンの手が剣から離れ、地面に落ちる。
 その体がデジコードに包まれ、六人の子どもに戻った。
 全員、立ち上がることもできずに座り込んでいる。それでも顔だけは上げて、俺を見守っている。
「みんな、ありがとう」
 俺の言葉に、兄貴が答える。
「行ってこい。お前が、終わらせてくるんだ」
 俺はユピテルモンに向き直った。
 叫び、雷をまき散らす神は、もはや理性があるのかも疑わしい。
 剣の切っ先を天に掲げる。曇天を切り裂き、幾筋もの光がユピテルモンに落ちる。それは鎖のようにユピテルモンを捕らえ、動きを封じる。
 俺は静かにユピテルモンに歩み寄る。
 右手で剣を握りなおす。兄貴達のくれた力に、ヴィシュヌモンの力を加える。剣が聖なる輝きを増し、人間なら目を開けていられない明るさになる。
 剣を両手で握り、敵の肩から斜めに切り下ろす。
「《クリシュナ》!」
 闘士達の力を合わせた剣は、敵の体を真っ二つに切り裂いた。
 その体に、一輪のデジコードが浮かぶ。
 デジヴァイスを逆手に構える。
 ユピテルモン、これで終わりにしよう。
「悪しき者の魂よ、天駆ける炎が浄化する! デジコード・スキャン!」
 白銀のデジコードがデジヴァイスに吸い込まれていく。ユピテルモンの体がほどけ、消えていく。
 最後に、白いデジタマが残った。ユピテルモンの魂が浄化され、新たに生まれ変わる姿。
 が、デジタマは砕け散った。
 呆然とする俺の目の前で、破片がデータの屑になり、消えていく。
「どうして……」
「あまりに長く生き、執念を溜め込んでしまったのでしょう」
 エンジェモンが静かにつぶやいた。
「どうしても浄化できない存在が、この世界にはあるのです」

 こうして、俺達とオリンポス十二神族との、忘れられない戦いは終わった。



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大変お待たせしました。最終決戦に終止符です。
「半分人間で半分デジモン」、デジモンフロンティアを象徴するセリフだと思っています。星流なりに、このセリフがどんな意味を持つのか、ハイブリッド体を突き詰めるとどんな存在となるのか、考え続けてこの物語を書いてきました。
最終的に、11歳の少年に負わせるにはあまりに重い展開となりました。
残るはエピローグですが、スピリットを体内に抱えた信也がどう生きていくのか、が大きな焦点となります。

以下、ヴィシュヌモンの設定です。
名称:ヴィシュヌモン(オリジナルデジモン)
レベル:究極体
型(タイプ):神人型
属性:データ
世界の秩序が崩壊したときに現れ、悪を滅ぼす存在。神剣バガヴァット・ギーターを体の一部のように自在に振るうほか、触れた相手のデータを吸収し、自身の力を高める能力を持つ。
また、様々な姿に化身することができ、ヴィシュヌモンとして知られている姿はその一つにすぎない。
必殺技は炎の剣で敵を焼き滅ぼす《ラーマ》と、天からの光で敵を捕らえ、聖なる剣で断罪を下す《クリシュナ》。《カリ・ユガ》は自分の周囲にあるデータを敵味方見境なく吸収し尽くす。

信也の究極体をインド神話のヴィシュヌ関連からとるというのはスーリヤモンを出した頃から決まっていました。
このヴィシュヌというのは10の化身をもつと言われている神だそうです。
様々な化身を持つヴィシュヌというのは、人間でありながら様々なデジモンに進化することができるフロンティアの世界観にふさわしいと思い、信也の究極体はヴィシュヌモンとなりました。
なお、化身の一つである「カルキ」は末世(カリ・ユガ)の世に現れて悪人を滅するそうで、初期案では「カルキモン」という名前でした。
ですが、なんか日本人的にはプールの消毒みたいだな、と思ってボツになりました(笑)
技の一つが《カリ・ユガ》なのはこの名残です。
《ラーマ》と《クリシュナ》は化身のうち有名どころの名前をもらいました。

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