ゼミ生の渡辺つぶらさんにご紹介いただいた「人人展」。
「人を縦でなく横に並べ人人と称してきた。私たちは新しい仲間を加え、それぞれの作家が触れている〝現在(いま)〟という時代をそれぞれの思考と感性によって造形化し、表現してゆこうとする集団である」という「人人会」のコンセプトに惹かれた。
中村正義氏の絵が表紙
1974年に、中村正義、星野眞吾、山下菊二、大島哲以、田島征三、佐熊桂一郎、斎藤眞一により結成された会は、今年で50年の節目。
第47回人人展パンフレットより
今年は伺えなかったが、会の創設者である中村正義氏の誕生100年を特集したパンフレットは見ごたえがあった。
中村氏は生前、「本当にいい画家がいい画家だという画家が本当にいい画家だ」
ということをよく口にしていたそうだ。
美術史を学んでいた学生時代、
例えば作品を好悪で一瞬に判断し
絵の前を通り過ぎてしまう。
でも、と立ち止まる。
画家がこの作品を完成させるまでにかかった時間、思考したことをおもう。
それと同じだけの時間はかけられなくても
創作の始まりから終わりまでを想像してみる。
この一筆を、キャンバスのどこに降ろし、どこからどこへ引こうか。
昨年の花祭フィールドワークでのこと。
宿泊した大崎屋さんに、『花祭』の著者早川孝太郎の絵が伝わっているというので女将に見せて頂いた。
宿の前を流れる川を描いたとおぼしき日本画。未表装の状態で、雨にでも濡れたのか傷みがはげしい。
漫然とした印象は受け取り、言語化もできるが、
やはり絵筆を持つ、つぶらさんの解説は圧巻だった。
造形作家ならではの特別の領野が、訓練、洗練されている。
渡辺つぶらさんの作品。
『縄文杖(じょうもんわんど)・蛇(じゃ)・手(しゅ)』
同上パンフより
だから、「本当にいい画家がいい画家だという画家が本当にいい画家だ」
という言葉には含蓄がある。
作品にたいする敬意、それが分かる人に対する尊敬と謙虚さ。
成城寺小屋講座のコンセプトも同じ。
参考文献:『第47回 人人展』パンフレット