ひと時の時間
わたくしの生徒の中にはお茶人が何人かおられる
彼女たちは月に一回のおけいこの後で私のためにお茶をたててくださるのが習慣になっている
立礼なので簡単な小さなお茶会なのだが
茶道具にこだわりのある方々なので茶碗もいくつも持参され
香合 茶入れ 茶杓の類まで素晴らしい道具をいつもお持ちくださり恐縮している
季節に合ったお菓子とお茶の一服の時間は書の稽古の後に心を和ませてくれるのである
忙中の閑というが彼女たちも普段第一線で活躍されている方なので多忙を極めているだけに
墨を磨り紙に向い茶碗と向き合う時間がとても大切だと言える
先日は人間国宝の浜田庄司の大ぶりの茶碗でお茶を頂きうれしかった
写真はわたくしの書いた桃花笑春風を飾り春らしいひと時であった
書とお茶は切り離すことができないもので茶室に入っても床のお軸から拝見するように
取り合わせが素晴らしいのである
ひと時の癒しの時間をいつも持ちたいと願っている
きものは日本の宝
花という文字はたくさん書いたが
写真は私の書いた花をデザインしたきものである
日本を代表するきものの着付けの先生の所有のきものである
ご婦人のきものは好みもあるがその人の生き方やセンスがそのまま出るのもきものの特徴であり
まずは自分に合うものを時間をかけて作り上げることが大切だと思う
よく呉服屋さんに丸投げで小物の類までお任せの人もいるが
初心者の場合には仕方ないが自分流の姿の確立をぜひ目指してもらいたいと思う
民俗学者の鶴見和子はきもののセンスが抜群で国際会議もきもので出席していた
彼女は後藤新平の孫であり幼少より日本舞踊を習っていたし育ちも確かに良かったとはいえ
きものの楽しさや機能性などをよく熟知していた
きものは贅沢なものでなくむしろお得で長く着られるものである
事実わたしの久留米絣は50年も着ていてなんともない
流行に流されないきものは日本人の真のお宝である
陶片から学ぶ
写真は古唐津の陶片である
この陶片は昔陶片集めに夢中だった時に購入したものである
これは辻清明の旧蔵のものでNHKのやきものを楽しむの本の中にも紹介されたものである
桃山から江戸初期にかけてのものだが私は書の資料としてそばに置いて楽しんでいる
理由はこの絵唐津の鉄釉の線が勉強になるのである
やきものに線を引くことは紙に墨の線を引くのと違い技術がいる
筆の腹を使って書くことは容易だが筆を立てて線を引くことは何であれとても難しいのである
書は古今の様々な名品から学ぶ姿勢が大切である
田能村竹田の書が優れているのは常に筆を立てて直筆で書いていることに関係する
だから当然絵も優れているわけで竹田の画論を読めばすぐわかることである
陶片から書を学ぶというと不思議に思う方がいるかもしれないが
線を引くということはそのくらい苦労のいることだとお解り願いたい