
破れたハートを売り物にして
愛に飢えながら ひとりさまよってる
破れたハートを売り物にして
うかれた街角で さまよいうたってる
1981年11月1日発売、甲斐バンド8枚目のアルバム 『破れたハートを売り物に』 に収録。 9月に先行シングルとしてリリースされています。
アルバム冒頭に収録されたこの曲は、何と言ってもアフリカン・パーカッションのリズムに大きな特徴があります。 なぜロックのビートではないのか? アフロ・ビートの意味するところは?
『破れたハートを売り物に』。 個人的には80年代の甲斐バンドでは最も好きなアルバムです。 "破れたハート"、つまりは失恋が全体のトーンを支配しているアルバムです。 「破れたハートを売り物に」 で始まり、彼女との破局を歌った 「観覧車」のあとにエピローグとしての 「破れたハートを売り物に」 が続き、そして絶望を歌う 「冷たい愛情」で終わる構成。

甲斐バンド、70年代の名作 『ガラスの動物園』 の雰囲気に近さを感じる部分もあります。 どちらもプライベートでの心の痛手が作品を生み出す源泉となっています。 この頃の甲斐よしひろは 「目標を見失っていた時期」 と後に自ら語っていますが、音楽的のみならず、プライベートでの痛み (具体的には離婚) も影響していたようです。 そしてその痛みさえも、血ヘドを吐きながらも作品にして売り物にしなければならないとは、シンガー・ソングライターという商売は・・・
当時はそんなふうに思いながら聴いていたのです。 さらに 「生きることを素晴らしいと思いたい」 と歌うところにとりわけ感動があります。 アフロ・ビートは心臓の鼓動を意味しているのでしょう。 どん底にあっても、息づいている生命とでも言えばいいのか。
甲斐はこの曲に相当のこだわりがあるようです。 "心臓の鼓動" により立体感を持たせるため、翌年ニューヨークで、当時の売れっ子プロデューサー、ボブ・クリアマウンテンの手によってミックス・ダウンし直しています。 それは12インチシングルの中に、見事な立体感となって結実しています。
1981年9月13日 花園ラグビー場
「破れたハートを売り物に」。 今でもこの曲を聴くたびに、花園ラグビー場での光景がすぐに頭に浮かんでくるのです。 もう頭に焼き付いてますね。 ライヴの頭に新曲。 そしてそれがアフリカン・パーカッションという人間の本能を揺さぶるようなビート。 「これを投げろ!」 と言わんばかりに用意されていた座ブトン。 大阪と言う土地柄。 条件は揃っていたのだと思います。
ライヴが始まるとすぐに、ビニールの座ブトンが宙を舞い始めました。 僕は会場真ん中より後ろのスペースだったので、前方でたくさんの座ブトンが舞っているのが良く見えたのです。 そして客たちはじわじわと前へ前へと押し寄せていく状況でした。
何曲目であったのか、気が付くと周囲はスカスカで客がいなくなっているという状況。 みんな前方へ移動してしまったのです。 これではライヴへの参加意識も希薄。 僕も前方へと移動しましたが、前のほうは騒然とした雰囲気となっていて、何かで揉めているような状況が伝わってきました。 前に行こうとする客と、それを押し返そうとするスタッフとで小競り合いとなっていたようです。
かなり危険な状況であったことは後から知りましたが、冷静に考えてみれば前に押し寄せる客たちが転倒し将棋倒しとなれば・・・。 甲斐はライヴを中断し、「下がれ」「けが人が出そうなんだ」 と何度も注意していましたが、これは賢明な判断であったと思います。 カリスマの指示で、ようやく客たちは後退。 後に甲斐は 「オルタモントにはしたくなかった」 と言っています。(オルタモントとは、観客に死者を出した69年のストーンズの野外ライヴのこと)
誤解を承知で言えば、僕は大阪という土地柄というのもあったと思います。 この時、大阪は初めてでしたが、友人に案内されての大阪の街での体験は、東京育ちの僕からすればカルチャー・ショックと言えるほどのものでした。 僕の中では、「花園」 はその延長線上にあったと言えます。
もちろんすべての大阪でのロック・コンサートが "暴動" となるわけではありませんが、開放的な野外での2万人という大観衆と、当時の甲斐バンドのライヴの熱狂度の高さを考え合わせると・・・という事です。
現在では伝説として語られるライヴも、あのエピソードばかりが記憶の中で優先され、残念ながら他の出来事は霞の中にあります。
甲斐 vs 鶴瓶 (2:15 あたりから)。
1.破れたハートを売り物に
2.翼あるもの
3.1世紀前のセックス・シンボル
4.地下室のメロディー
5.カーテン
6.嵐の季節
7.安奈
8.ジャンキーズ・ロックンロール
9.三つ数えろ
10.氷のくちびる
11.ポップコーンをほおばって
12.LADY
13.アウトロー
- アンコール -
14.破れたハートを売り物に
15.翼あるもの
16.100万ドルナイト
(1981年9月13日 花園ラグビー場 セットリスト)

