去年卒業した院のプログラムのクラスメイトだった友人からフェイスブックでの呼びかけがあり、急きょ助っ人で、彼女が担当している12ステッププログラム(いわゆる断酒会)のグループカウンセリングをみる事になりました。

ちなみに、在学中、そして卒業してからも、フェイスブックのグループの元クラスメイト達は貴重で、グループの中で、仕事やセミナーの情報交換をしたり、お互いの悩みや喜びを共有したり、せっかく築き上げた大切な交流を切らさないように、常にやりとりをしています。

さて、アメリカの断酒会は、『アルコホーリックス・アノニマス(和訳=無名のアルコール依存症者たち)』とか『12ステッププログラム』等と呼ばれていて、自分の姓名や連絡先など、明かす、明かさない等、全てその人の自由というのが特徴です。 日本では、ニックネームで呼び合っていると聞きましたが、どうなのでしょうか? 『タっちゃん』とか『XXちゃん』とか呼び合ってるんでしょうか笑。 クローズド・グループとオープン・グループの2種類があり、前者はいつも決まった参加者のみで、後者は、いつ誰でも参加自由という感じです。 両方とも、参加する人の条件は、単純に『酒を断ちたい』という動機のみ。 

ここでは、違う断酒会のグループが、週に2,3回、入れ代わり立ち代わりで、入っています。 家から10分の所にあるこの断酒会の為の施設には、夕方の1時間さっと行ってこれるので、彼女の頼みは断れません。 統合試験のスタディーガイドも彼女のヘルプが大きかったので、こういう時こそ、恩を返せる良い機会だと思っています。

古い建物...廃校になった、どっかの高校の運動部の部室って感じしませんか? 映画のシーンでも見てるみたいでした。 準備があるので、30分前に入りましたが、建物の印象が完全にお化け屋敷(笑)。 フロリダというか、東海岸南部は、大きいオークの木があちこちに茂っており、スパニッシュ・モスと呼ばれる着生植物がぶら下がっていて、独特な雰囲気を出しています。




中に入ると、数人担当の方がいたので、自己紹介して、どちらのグループについたらいいか確認。



断酒会に行くのは、今回が初めてではありません。 院時代に、プラクティカム先でアルコール中毒・ドラ中毒治療の為のグループをみたり、エージェンシー外のAAにも数回参加する機会がありましたが、殆どが喫煙OKの会が多く、1時間の間、煙い密室の中、耳の中、鼻の奥までもタバコの煙い匂いが残ります。 服も2度洗わなくてはいけない位、すごい煙の匂い、アレだけは嫌だなと思いながら、マーフィーズ・ロー的中で、やはり喫煙者のクローズド・グループの担当でしたショック! 私が、『ヤダな~』と思うと、だいたいそれに当たる確率大です。 こんなものです、人生は笑。

ちなみに、AA(アルコホーリックス・アノニマス)と呼ばれるアメリカの断酒会がある建物には、この三角のマークが付いていたりします。


Unity(結束)・Service(奉仕)・Recovery(回復)の3つの大切なトライアングル。 


殆どの場合、アメリカの断酒会は、アルコホーリックスによる、アルコホーリックスの為のもので、誰にも組織にも縛られる事なく行われるのですが、今回のグループの中には、5人の飲酒運転で捕まった方達がいて、私が行く目的は、彼らの15週間の、ある意味、裁判所からの強制的な断酒会参加の記録の為でした。 彼らの保護観察官へのレポートが中心です。

12ステップと呼ばれるプログラムの『12の誓いの言葉』みたいなものがあり、最初に皆なで、それを読み上げます。

和訳するとこういう感じです。

1.私たちはアルコールに対し無力であり、(アルコール無しでは)思い通りに生きるのが困難である事を認めます。

2. 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じます。

3. 私たちの意志と生き方を、神の配慮に委ねる決心をします。

4. モラルの探求と自分自身の棚卸しを恐れず行うことを決心します。

5. 神に対し、自分に対し、そして他人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めます。

6. 自分の欠点の全てを、神に取り除いてもらう準備がすべて整っています。

7. 私たちの短所を取り除いて下さいと、謙虚に神に求めます。

8. 私たちが傷つけたすべての人のリストを作り、その方達全員に償いをします。

9. その人や他の方達を傷つけない限り、機会ある度に、直接償い続けます。

10. 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めます。

11. 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力を求めます。

12. これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージを他のアルコホーリクスに伝え、そして全てのこの原理を実行しようと努力します。

...上記の言葉を皆で読み上げ(ついでに私も笑...インローズにも読んで欲しいが笑)、その後、自分の紹介をして、なるべく彼らの誘導で会を進行する形になりました。 最初は、まどろっこしかった彼らですが、少しずつ本音を出してきてくれて、1時間では足りないくらいでした。 会が終わり、彼らのフォルダーに署名をして、建物の管理担当の方に挨拶を終え、会を後にしました。 彼らは、まだ外で残って煙草を吸ったり、更に話したい事があったのか、座ってお喋りを続けていました。 

ちなみに、AAの断酒会には、ソブラエティー・メダリオン(禁酒のメダル)というトーケンシステムがあって、『1か月しらふでいれたよメダル』みたいなのをもらえます。 彼らは、自身への誇りと今後の戒めのシンボルみたいな役割をするメダルを常に持ち歩き、励みにする様ですね。


さて、日本とアメリカのアルコホーリックスへ対する態度ですが、カルチャーが勿論影響してるのは確かですが、不公平だなと個人的に思う点があります。 それは、酒を強制するカルチャーがある日本。例えば、『お酒ダメなんですよねー』と言うと、『付き合いの悪いやつ』になったり、余り上司や周りから良く思われなかったりしがちですが、一旦、アルコホーリックになってしまうと、『自己管理ができない者』のレッテルを貼られ、社会のゴミ扱いを受ける。 断酒会も、あまりポジティブな印象ではない様ですよね。 アメリカも人によってはそういう偏見視をする人もいるにはいますが、社会全体でみてみると、断酒会に通い、酒を断っているという前向きな態度を、ちゃんとポジティブに見てあげる器がある社会だと思います。

それから、『自分自身の棚卸し』という言葉と、『棚卸し表』というのがあるのも今回学びました。 これは、自分自身を見つめ直して、本来の自分を探すという目的の元に考えられたと言われていますが、なるほど、私自身にも使えるなと思いました。この年で、いい加減自分自身を知っているつもりですが、いやいや人生は死ぬまで勉強だとも思います。 

前回、院生で参加した断酒会に比べ、私自身が成長したのか、インローズの影響で酒飲み達に慣れてしまったのか分かりませんが(笑)、今回は余裕を持って断酒会をみる事ができました。 

また、色々、過去に読んだ本を引っ張りだしております。 勉強は、常にし過ぎるという事は決してないんですね。
今まで読んだ中で、一番役に立っている本


最後までお付き合い下さり、ありがとうございましたクローバー