O.V.Wrightも海賊盤業者の餌食になっていました。

 Goldwaxレーベルの最初のヒット!といってもよい盤ですが、ドン・ロビーの横やりが入って、通常人のビジネスマン(Goldwax側)は触らぬ神に祟りなし!と手を引いてしまい、O.V.のキャリアは一旦絶たれてしまいます。

この「That's How Strong My Love Is」のエピソードは、名著『スゥィート・ソウル・ミュージック』(2005年、シンコーミュージック・エンタテイメント社)の第9章-ジ・アザー・サイド・オヴ・メンフィス(もう一方のメンフィス)に詳しいです。いつもながら訳者の新井崇嗣氏のこなれた訳文は読み易いです。

 

 南部でかなりヒットしたこのO.V.盤はオーティスの歌でもヒットしましたが、ドン・ロビーとの交渉でこのレコードの権利はGoldwaxに残ったので、こちらの盤もかなり健闘したようです。プレスも数か所で為されたのかレーベル・デザインも数種確認されています。

 まず、お馴染みの”金”ラベル。これには同じデザインの白プロモ盤がありますから最初はこのデザインでの発売でしょう。当時シカゴのVee-Jayに全国配給を委ねていましたが、配給表記の無い盤も存在します。

   

金ラベル Vee-Jay 全国配給盤  それの白ラベルDJコピー いずれもヴァイナル

金ラベルでVee-Jay配給の印字の無い自社流通(南部のみか?)

 

 そして、追加プレス。黄色地でヴァイナルとスチレンの両方が存在し、スチレン盤はGoldwax Recordsのロゴ。ヴァイナル盤はGoldwaxのみのロゴ表記の2種が存在します。マンシップのプライス・ガイドに掲載のイエロー・レーベル盤の内Goldwax表記のヴァイナルには手書きで情報が書かれたブート盤が有り、Goldwax Records表記のスチレン盤はオリジナルで、ヴァイナルは”金”ラベルの方がオリジナルだとしてイエロー・レーベルのヴァイナルはブート扱いですが、Goldwax表記のイエロー・ヴァイナル盤にも刻印(Nashville Matrix)が押してある本物もあります。

  

左:スチレン盤 Δ52839/Δ52839Xの記述があるモナーク製  右:マンシップ本でブートとされたヴァイナルだが、ラン・アウト部分刻印(Nashville Matrix)などの表記は金ラベルと同じで、このタイプのみARP(American Record Pressing Co.)の刻印もあるので、ミシガンのARPプレスの本物。ブートはこれのコピーと思われる。

 

Goldwax表記のイエロー・ヴァイナル盤の白DJコピー

 

 筆者は不幸な(?)事に日本へ入ってきた西海岸製のブートにはまだ巡り合えずにおります(なので、今回はブート掲載出来ず・笑)。が、マンシップのプライス・ガイドの記載通り、ランアウト表記が手書き(本物では”刻印”部分もブートは手書き、またNashville Mariaと誤記とか・・)なので容易に判断出来ると思います。また、前回掲載の盤のプレス工場と同じ所でのプレスだと思われますので、レーベルの形状からも推測可能と思います。中心部から2~3mmの所が薄く、1cm位の傾斜後に厚みを帯びた平な面になるのが普通ですが、ブートは薄い部分が目立つ気がすると共にこの傾斜具合が少し丸みを帯びて短く見えます。わずかな違いですが見慣れると何となく判ります(う~ん、説明が悪くてスミマセン・・・、要は場数をこなす、ということでしょうか・笑)