これは、ニンテンドースイッチ版エルネア
王国の日々でのプレイを基にした物語です。





3月から仕事がさらに多忙となり、更新が遅れまして大変申し訳ございません。





そっと見守ってくださった皆様、お言葉やお気持ちを伝えてくださった皆様、お話を聴かせて頂いた皆様、一緒に考えてくださった皆様、ありがとうございました。





自分は都内から関西へと出張になり、多忙激務の毎日を送っております。






某ウイルスの感染だけでなく、熱中症になるリスクが高くなります。





ヒトの身体の湿り気のある部分である粘膜からも感染します。(口だけでなく、目や鼻からも)




この暑さのためかマスクを外したり、マスクを着けていても鼻が出ていたり、隙間ができていたり…との方を見かける率が高くなってきたように感じます。




体温調節が難しい方などは配慮されるべきだとは思います。





他局から聞いた話では、医療者間の中でも仲間内ならマスクは外しても大丈夫、という人もいるらしいです。





このウイルスの感染はヒトからヒトの感染で成立します。





本来、ウイルスはヒトを宿主として生きるもの、つまりウイルス単体だとひとりでに死滅するのです。




つまり、外出は自粛し、相手との適切な距離を守って互いにマスクをし、(できれば保護メガネも)手袋をし、手洗い、うがい、アルコール消毒をし、帰宅したら、その保護具にウイルスが付着している恐れがあるのですぐに洗うなり、捨てて袋の口を閉めると広がる恐れは少なくなります。
(これはOP時の感染防御に用いられます)





マスク、できれば保護メガネも身につけてご自身をしっかりと守って頂ければと思います。







今日の日本の経済を支える一役を担っておられる皆様には大変感謝しております。






この先もどうかお大事になさってください。







さて、しばらく更新ができずにいたので、ただでさえ人数の多い登場人物の名前も忘れられて読みにくい物語となっているかと存じます(・・;)






▼登場人物(今までの関連をざっとまとめました。見えにくくて申し訳ありません)



一行はエルネア城を通過し、城の船着場で一言二言、言葉を交わした。





「魔銃師会メンバーに配布するはずのグァバメキア軍艦内への転移石は10個分ある」




鞄にある転移石の数は把握しているようで、マーリンはそれをチラッと見ただけだった。





「ーーそんな!いつの間に?」





軍艦内の警備を厳重に整えていたキリルは思わず顔を歪めた。





魔銃師アーサーは完璧主義者のキリルとしては屈辱で堪らないだろうと察しながらも、マーリンの用意周到な様子には感心したが、転移石の個数を聞くと、問題をすぐに指摘した。





「ーーでも。これじゃ……1人逃げられないね」






「──オレは何の職に就いていると思ってる」





キリルが魔銃師アーサーを一瞥すると、手を大きく広げた。







次の瞬間、瞳に映ったのはある部屋の一角だった。






何とも無機質な壁に囲まれ、それを黙って静かに見下ろしているかのような錯覚に陥る造りだ。






「……え?ここは……どこ?」






しばらく呆然としていたサリアが開口一番に言った。





「ここは……グァバメキアの軍艦の……」





パトリックは辺りを見回すようにして思い出そうとしていた。





「ここが軍艦ー?!って子供多いな…」





イマノルは軍艦に驚いた後、次はわらわらといる子どもの人数に驚いた声を上げた。






「「ベロッド!」」






その中に含まれている自分達の子どもの名前をほぼ同時にアリスとマーリンは叫んだ。





しかし、ベロッドはふいっと視線を逸らした。




「………」





「……アリスちゃん達の子ども??」






イマノルがさらに驚いたように聞くと、アリスは複雑そうな表情を浮かべながらも笑顔で応えた。






「……そうなの。3番目の子どものベロッド君」






「なんだなんだー?ママたちに会えて嬉しくないのー??」





イマノルはずいずいと聞いていた。






「──?1人……増えてる?」






目端の利くキリルは正確な人数と伴わない事を早々と見破った。






「ふえてない!!」





まだ歩き始めたばかりなのだろう、足元がおぼつかない少女はカピトリーナの後ろに隠れた。

「ーー金髪の子どもは2人、緑髪の子どもは1人で……このロドニーだと記憶していたんだが……」





キリルはぶつぶつと首を傾げた。




カピトリーナはその少女を庇うようにしてさっさと説明した。




「この子はヴァレリー。マーリン先生とアリスの娘」





「──それは……増えたという事では」





キリルはカピトリーナの言葉に少し反論しようとした。






「増えてません」





きっぱりと言い放ったカピトリーナは睨むと、ツンと顔を横に向けた。





「──子どもに罪はありません」







「またアリスちゃんの子ども!」





イマノルの声がいよいよ悲痛な叫びと化した。





「……」




マーリンは極まりが悪そうにして口元を片手で隠すようにすると、魔銃師アーサーに笑われてさらに気まずい思いをした。





「俺の本物の身体もこの時代まで持ち堪えられていれればな」





魔銃師アーサーの瞳はどこか哀しげだった。





「……でも。今になって、ようやく再会できた人間もいる」





キリルがぶっきらぼうに言った。





「何だよー。妬いてるの、キリルー?」





魔銃師アーサーは揶揄うようにキリルの肩に手を置いた。





「──相変わらず、馴れ馴れしい奴だな……」






キリルは迷惑そうに眉を潜めながらも悪い気はしていないようだ。






アリスはヴァレリーを過ぎ去った日々を埋め合わせるかのように抱きしめた。





「ヴァレリーちゃん……こんなに大きくなって……ごめんね」





仕方のない事情があったとしても、子どもの心というものはすぐには埋める事ができない。






「カピトリーナちゃん……身体の具合は?」





ヴァレリーを抱きしめたまま、アリスはそばにいたカピトリーナを見上げた。





レイラはカピトリーナを黙って見ていた。





その視線に気づく事もなく、カピトリーナはふと微笑んだ。





「……うん。ぼちぼちね。アリスも元気そうで良かった」






すぐ近くでマーリンはベロッドに両手を差し出していた。





「ベロッド」






ベロッドはしゃくり上げながら涙を我慢していた。





「ぼく……泣かないもん。おねえちゃんとやくそくしたもん……ヴァレリーちゃんがいるもん……おにいちゃんだもん」

──両親が不在の間、小さなベロッドは全てを我慢していたのだ。





あの甘えただったベロッドが、まだ幼いヴァレリーを気遣い、兄らしく両親の代わりに振る舞おうとしていたのだ。





マーリンは息子の成長に、自身の不甲斐なさに感情が定まらなかった。






「──よく頑張った。えらいぞ、ベロッド」






マーリンは力ずくでベロッドを抱き寄せ、頭を撫でた。





そのようにしてもらえなかった過去の自分を埋めるかのように。






父である魔銃師アーサーと反面教師で生きてきたマーリンは子ども達に寂しい思いをさせてしまった自身を責めた。





「子ども達、どうすんの?置いていっちゃうの?」





イマノルが聞いた。





「「………え」」





子ども達との再会に夢中になっていたアリスとマーリンは間抜けた声を出した。





キリルは溜息を吐いた。






「──連れて行け。邪魔だ」






「うちの国に連れていけばいいわよ。アリスさん達が良いならね」





レイラは頷いた。





魔銃師アーサーはキリルの肩に手を置いた。






「俺も賛成ー。子どもは離すべきじゃないよ」






お前が言うなよと言わんばかりの目でマーリンは魔銃師アーサーを見た。





「ーーありがとう……ございます……」




アリスは我慢していた涙を堪えたが、どうしても声が震えてしまった。





カピトリーナは子ども達に目を細めた。





「よかったね、あんた達」




「カピトリーナちゃんはー?カピトリーナちゃんもいっしょにいこー!ぼくがおにいちゃんのかわりに守ってあげる!」




自身の置かれた境遇を熟知しているカピトリーナは素直な子ども達の誘いにただ困ったように笑うだけだった。





それに、アーサーの弟ベロッドの純粋な優しさにどのように断れば良いのか分からなかった。






「ちょっと……ロドニーもヴェラもって……あまりにも人数が」




トアはこんな大人数で、他国にご厄介になっても良いのかと迷っていた。





その傍らでは、リリーは腰に手を当てて怒っていた。




「ロドニー君!貴方はここで一体何をしてるの!!」




「うぇえーん!ごめんなさーい」




ロドニーは半ベソをかいていた。





「ま。でも、子どもを回収する手間もはぶけたんじゃないの?ねえ、パパ?」




ヴェラはませたように言った。





「あのねー……ヴェラ。何でお前もここにいるのか……手短にパパに教えて欲しいかなー」





娘には頭が上がらないらしく、トアは物腰柔らかに聞いていた。





魔銃師アーサーはベッドに横たわらせたミルドレッドを診ながら言った。





「ミルドレッドちゃんは大丈夫そうだけど……早く安全な場所へ移動させたほうがいい」





「安全なとこって…?うちの国にきてもらうしかないよね?」





イマノルがまわりに同意を求めるかのように聞いたので、パトリックとサリアが頷いた。






「申し訳ないが……俺達は他国に行くので、ミルドレッド先生をお願いできますか?」





マーリンが大人数でお世話になるという遠慮から何かを決心したかのように言った。





「………マーリン」





トアはマーリンの潔い決断に驚いた。





「俺達は健康だから」





マーリンは気にするなと言わんばかりに少し笑った。




「遠慮してるの?カルミアさんが貴方達のことを心配しているの。一緒に帰りましょう」




レイラが気遣うように言った。





「……ですが。こんな大勢では」





アリスは周りの人数を数えるように見ると戸惑った。






「なにか問題あるの?」





イマノルはレイラを見た。





「他国の人がきたら、みんな喜ぶわよね?マーリンさんがいたほうが、陛下は喜ぶし」




レイラの語尾は笑っていた。




「そうそう、陛下は喜ぶよー」




会話の内容の意味に気づいたようで、イマノルも笑った。




「うちの陛下は、そんなこと気にしないよ、だから遠慮すんな、マブダチ!」






「陛下が──あれは……喜んでるのかな」






ヴェルンヘル陛下からは完全に恐れられている事をマーリンは何となく気づいていた。






「──マーリン。お前、何かしてないだろうな?ま、マーリンは真面目だし大丈夫だとは思ってんだけど」




魔銃師アーサーは気にしたようだが、マーリンには信用があった。






「聞いた話では……陛下を追いかけ回したって」





困ったようにしていたマーリンの代わりにリリーが申し訳なさそうに言った。




魔銃師アーサーは余程の事があったのだろうと思い、笑っていた。





「……それは楽しそうだね。俺も参加したかったなー」





「……パトリック先生、他国で何やったの。知ってるんでしょ」






サリアは唇を尖らせ、魔銃師会の先輩であるはずのパトリックを怪訝な様子で見つめた。





「や……やだなー……サリアさん。まさかお世話になっている国の王を追いかけたり……追いかけたり……追いかけたり……なんて」





パトリックの視線は無様なまでに泳ぎまくっていた。




「──追いかけたのね」





サリアは呆れたように言った。






「い──いや!前にいたのはイマノルで……その前にいたのはマーリン君で……先頭はアーサーで……」





パトリックの言い訳を一部始終聞いたサリアは揃いも揃って何やっているんだと突っ込む覇気すらなくなってしまった。





すると、また急に目の前が場面転換するという現象が起きた。







一行はエルネア波止場にいた。






「ーーとりあえず。この国から出ろ。どこに行くのかはそれからだ」






キリルが今後の展開を懸念するかのように仕切り直した。






先ほどの転移魔法はキリルによるものらしい。






「この舟ではこの人数は乗り切れない……それに。この木造の舟に乗っていけば敵に窃盗だとか言い掛かりをつけられる恐れがある」





キリルは波止場に止まっていた舟をギシギシと足で揺らすようにして踏んだ。






「── かなり古いが……一応、この人数が乗れる舟はある」





キリルは組んでいた腕を払うようにすると、魔法のように舟を取り出した。




エルネア国民なら知っている木造の舟ではなく、鉄の塊と呼んで等しい物体だった。





「必要あれば好きなように改造して良い」





キリルはレイラを涼しげに見ながら言った。






「……私が改造できる人間だって分かってるんですか?」





そのように聞いたレイラは固唾を飲んだ。






「ーーこの舟に見覚えがあるんじゃないか?制作メンバーに貴女は入っていただろう」






キリルは腕を組み、わざわざ言わせるなとでも言うような目でレイラから目を背けた。






「捕まえないんですか?こんな老いぼれでも、祖国への手土産になるのでは?」





レイラは突っ慳貪に聞いた。





「──祖国への手土産はアーサー先生の論文で十分だ」





キリルは冷やかに言い放った。





「確かに。お年を召されていて最初は分からなかったが……貴様を使ってヴァルトミラー家を徹底的に陥れたい気持ちは無きにしも非ずだが、今はそれどころじゃない」





「それだけ素晴らしい論文を書いてくださったアーサー先生に感謝しなくてはね」





レイラが意味ありげに見やると、魔銃師アーサーは余計な事をと言わんばかりの顔をした。





「──オレは事後処理が面倒だから、加担しているだけだ。できれば、早く舟を改造するなり乗って出て行ってくれないだろうか」




キリルの声は時間に余裕がないと急かしていた。





「お言葉に甘えてそうさせていただきます。配慮、感謝いたします」





レイラは作業に取り掛かった。





キリルは大きめのケースをレイラに渡した。






「──必要な工具ならここにある」






その様子を眺めていた魔銃師アーサーはキリルに聞いた。





「──俺。科学分野についてはさっぱりなんだが……それにしても、キリル。よくレイラがその資格を持っていると分かったね」





「──この人の顔は国で学んだ」





至極真面目そうな顔でキリルが言ったので、魔銃師アーサーは吹き出した。





「Xさん……レイラさんって何した人なのー?!」




イマノルはXと呼んでいたが、レイラとわざわざ言い換えて聞いていた。





「………あんたは知らなくていいのよ」





レイラは魔銃師アーサーを睨みながら、受け取った工具で作業をしていた。






魔銃師アーサーは笑いを堪えていた。






「レイラ。お前、あの国の教科書に載ってんだよ?凄いよねー」






「──レイラさんって何者なんだろう……」





用心深いサリアが心配そうにしていた。





「気にしなくて大丈夫だよ」





何かを察しながら、マーリンはごまかすように言った。






「わー!すごーい!!スゴーイ!!」





まだ子どものロドニーはレイラの手捌きをみて感嘆の声を上げていた。





「きっと教科書に載るくらいにカガクが得意なんだよ!」





ベロッドも瞳をキラキラとさせていた。





「……なんか。おとなはちがうって顔してるけど」





おませなヴェラは大人達の様子を眺め見ながら言った。





レイラは作業の音をわざと大きく立てて、必死で聞こえないフリをしているようだった。





今更気づいたようにカピトリーナはキリルを見た。





「大佐──何で、あたしもここに?」





「大人数だったので、転移魔法の範囲を広げたらお前が入ってきただけの話だ」





キリルは素っ気なく答えた。





「──そんなに魔法が下手なんですか?」





カピトリーナが怪訝そうに言うと、眉を潜めたキリルが口を開こうとした。





「君も遊びにきたらー?」





特に何も考えずにイマノルが言った。





「──あたしは無理」





カピトリーナが首を横に振った。





「──お前も行け」




間髪入れずにキリルが言った。




「──え」




カピトリーナが驚いていると、キリルが捲し立てるように言った。




「──感染の拡大により、お前の病態が悪化する恐れは十分出てきた。行け」





「感染??」





イマノルが首を傾げた。







──ダンッ!!








その時、銃声がした。







「誰か時間を稼いでくれる?あと数分」






作業の手を止める事もなく、レイラは冷静だった。





「任せろ!」




パトリックがニッと笑ったが、背後から数メートル先には魔銃口があった。





「──止まれ!!」





──かつての同志。魔銃師会きっての優秀な会員であるアルジー・プリエトの姿があった。






その背後には魔銃師会や騎士隊が包囲していた。






パトリックの妻であるアシュレイも居合わせていた。






「……チッ!魔銃師会の連中は寝返ったのか」






マーリンは怒りにまかせて舌打ちした。






「アルジー君……!私はあなたを待ってないわ!」





パトリックは手を挙げ、芝居がかった声を出した。





「──誰もパトリック先生にふざけてなんて言ってないわよ」





この場にそぐわない発言をするパトリックに口元を痙攣らせたサリアが冷静に言い放った。





「……アルジーさん」





リリーは夫であるアルジーを何とも言えない瞳を浮かべて見ていた。





「──国を護るのが我々の使命だ。サリア、それは履き違えてはいけない」






さらに背後からやって来たのは──ジャン・クラフ王配殿下。





マーリンの兄であり、サリアの伯父であり、魔銃師アーサーの息子である。





柔軟性には欠けるものの、魔銃師アーサーに似た頭脳を持つ切れ者だと言われる。







──非常に面倒な人間が相手だ。






「……」





サリアは呼吸を止めるかのように思い止まったが、しばらくしてゆっくりとした足取りであちら側についてしまった。






周りの人は理解が追いつかない。






「──サリア……⁉︎」




まさかとマーリンは拍子抜けした声で呼び止めようとした。






「──私はずっと小さな頃からお母さんを見てきて、どう生きれば賢明なのかを常に考えて生きてきた」





サリアの顔は決意を滲ませていた。






「サリアちゃん……」





母であるアリスは娘に無理をさせたと後悔と懺悔の涙を滲ませた。






「間違いは正す!──後悔はしない!!」







天にまで響かせるようにサリアは声を張り上げた。






「その通りです!王命のままにサリア先生!この極悪人どもはこの場で処罰しましょう!」





魔銃師会や騎士隊は士気を高めた。





無表情でそれを見届けたリリーはその様子を見た後、強力なエナのほほえみの魔力を用いた。






「──わたくし達を見くびらないで!!」






それは周りにいる人々を操る魔力。






無論、近くにいたパトリックやイマノルには無差別にかかってしまった。





「信じる力が強い人間だけが勝つ!アルジーさん……目を覚ましてくれなきゃ謝る言葉なんてないわ!!──攻撃せよ!!」






リリーは傀儡した男達に指示を出した。





「──カピトリーナちゃんだけは絶対に守って!」





「女性に手をあげたくないのに身体が勝手にー」






そう言いながらイマノルは戦斧を手に闘った。





さすがはあのリリー・フォード近衛騎士に叩き込まれた山岳兵隊長だ。





魔銃師会をジリジリと追い詰めていた。





リリー・プリエトのエナのほほえみの魔力では、女の騎士隊員、魔銃師会員には効果がないのでトアも加勢した。




「俺もイマノル君に同感なんだよねー。手荒な真似はしたくない」





エナのほほえみの魔力を上手く使えば、怪我人が出ないと考え、トアも同じく魔力を操った。






「こんなもんでしょう、みんな乗り込んで!」





レイラが工具を投げるようにして切り上げ、運転席に乗り込んだ。






「ロドニー君!何してるの、早く乗りなさい!!」





リリーはまだその場に立ち竦んでいる息子に大声で言った。





しかし、ロドニーはまだ波止場から動かない。





おしゃまなヴェラはさっさと乗り込んだ。





「乗れるって。乗ろーっと」





「パパとママ、けんかしないでー!!」





両親が闘う姿を目前にしたロドニーが泣きじゃくっていた。





それを見たベロッドは放って置けず、おろおろしていた。






「イマノル君、お願いします!パトリック先生はベロッド君を!」





リリーは人間を操り続けていた。





これほどまでとは、と魔銃師アーサーは心の中で驚いていた。





「よし、いい子だ。ベロッド君、乗るぞー」





パトリックがベロッドを抱き抱えると、その後に心配して何度も振り返るアリス、その後にカピトリーナが宥めるように続いた。





「よーし乗り込むぞー!」





イマノルがロドニーをひょいっと抱えて舟に乗り込んだ。




「はーなーしーてーぇえ!!」




両親が闘うのを間近で目撃した上に、他国出身で初対面の体格の良い男に突然抱えられたロドニーは拒絶反応を示した。








「ーーリリーさん……君は一体何を考えているんだ……いつも何を見ているんだ……」








アルジーは妻のリリーによって金縛りにあったかのように動けないながらも唇を動かした。








「──この王国が立て直される未来を……アーサーの未来を……そして、これからを信じてる」






リリーは儚げに瞳を浮かべてはいたが、その瞳からは芯のある光を放っていた。