「アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉 」 ダイアナ・ウィン ジョーンズ  徳間書店 1,680円 アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉
アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉
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*あらすじ*

若き絨毯商人アブダラは、ある日、本物の空飛ぶ絨毯を手に入れ、絨毯に連れて行かれた
夜の庭で、謎の姫君と恋に落ちた。
だが二人が駆け落ちしようとした矢先、姫は巨大な魔神にさらわれてしまう。
アダブラは、魔法使いハウルの妻ソフィーの助けを得て、姫の行方を探そうとするのだが…? 
人気作家ジョーンズによる奇想天外、珠玉のファンタジー。 

*感 想*

ハウルの動く城の第二弾ですがハウルやソフィーが主役ではなく、空想好きの若き絨毯売り
アブダラが主役です。
物語は「アラジンと魔法のランプ」とかなり重なるのですがこちらの魅力はセリフ使いなん
ですよね、何とも長ったらしく仰々しい言葉使い、歯の浮くようなお世辞なのに皮肉が一杯
込められているので思わず笑ってしまう箇所が多々あります。
しかも主人公も出会う人達も決して善人ばかりではないところもいいんですよね。
嘘もつくし弱いしすぐに逃げようとしたりと今までのファンタジーと一味違う楽しさがある
のがこのハウルシリーズの特徴かもしれません。
しかも最後まで読むとハウルもカルシファーも最初から登場していることがわかって思わず
ニヤリとさせられるところも良いのです。

実はこれのどこがハウルの続編なんだろう?とずっと気になっていたのですがラストの部分
を読んで最初からアチコチに伏線やらヒントが出ていたことに驚いてしまいました。
一筋縄ではいかないハウルらしい続編にファンの人はかなり楽しめたのではないでしょうか。

取りあえず、「ハウルの動く城」を読んでいないとラストの部分は意味が分からないと思う
のでシリーズ順に読むことをオススメします。
個人的にはこちらの方が面白いので「ハウルの動く城」があまり気にいらなくてもこの「
アブダラ」は読んでみて欲しいですね。

一言■1巻よりもこちらの方がおもしろいかもしれません。
評価 ★★★★★
>>BACK    >>HOME 「インディゴの夜 」 加藤 実秋  東京創元社  1,575円 インディゴの夜 (創元推理文庫)
インディゴの夜 (創元推理文庫)
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*あらすじ*

「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブが
あればいいのに」――すべては女性ライター・高原晶が、大手出版社の編集者・塩谷に漏ら
した何気ない一言から始まった。

謎めいた美形の敏腕マネージャー・憂夜の助力を得て、高原と塩谷は、一風変わったホスト
クラブ〈club indigo〉を渋谷の片隅に開業したが、順調な経営とうらはらに常連客が殺さ
れ、店のナンバーワンに疑いがかかる。
晶は個性豊かなホストの面々とともに、にわか探偵団を結成、真犯人捜しに奔走する! 


インディゴの夜/原色の娘/センター街NPボーイズ/夜を駆る者 

*感 想*

まず思ったのが石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク」と雰囲気が似てる!ということで
すね。あちらがトラブルシューターのマコトが事件解決のために走り回るのに対し、こちら
はホストクラブの裏のオーナーの高原晶(女)が走り回るという感じです。

著者は本書で単行本デビューらしいのですが読み手を惹きつけるのが上手い方なのでこれが
デビューだとは思えない安心感のある一冊なんですよね。
読み易い、テンポが良い、そして後味も良い。
この3つが揃っているのでどの短編もかなり楽しめました。
しかも登場人物が謎を秘めていてそれらを少しずつ出していっているのも上手いです。
これはシリーズ化したら池袋ウエストゲートパーク並みの人気が出るかもしれないですね。
ホスト達が探偵というのも今までなかった設定ですし、今時の事件や今時の若者が出ている
のでドラマ化されても面白いかも。

表題「インディゴの夜」はクラブNo1のホストTKOの客である「まどか」が殺されます。
最近ストーカーの怯えていたまどか、犯人はそのストーカーなのか?
現場から逃げた謎の女を追うのだがTKO以外にその女を見た者は現れません。
そしてもう一人ストーカーに怯える若菜という客がいます。一体二人に共通するものとは何
なのか?
事件は単調に終わるのかと思わせておいて最後にパンチを持ってきています。
最初のこの作品で「うわ、やられた」と思わされるので残り三作品も最後まで何が起こるか
わからない面白さを読者に予感させてくれるのですよね。

しかしタイトルからは何のことやら?と思っていましたし、このミステリフロンティアは最
初の伊坂氏以来面白いと感じるものがあまりなかったのですがこれは自信を持ってオススメ
できる一冊です。
特に「池袋ウエストゲートパーク」が好きな人に強くオススメ。

一言■ 池袋ウエストゲートパークが好きな人にオススメ。
評価★★★★★。

「人生ベストテン」 角田光代  講談社 1,470円 人生ベストテン (講談社文庫)
人生ベストテン (講談社文庫)
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*あらすじ*

どこにでもいる男たちと女たちの<出会い>が生みだす、ちいさなドラマ。
おかしくいとしい6つの短篇。

「人生ベストテン」 40歳の誕生日を目前に、恋すらしていない人生に愕然とした鳩子。
彼女の人生におけるベストテンの殆どが14歳までに済んでいた、その中でも三週間だけ付き合った
岸田有作との出来事が第一位と第二位を占めている。その岸田が出席をする同窓会が開催されるこ
とになり鳩子は気合を入れて参加するのだが・・・。

「床下の日常」 水漏れ工事に向かったマンションで、陰気な人妻から食卓に誘われたぼくは彼女
の生活について想像をする。きっとぼくも他の人の生活も床の下をはがしてみたらきっとたった一
枚下の世界は暗い闇なのだろう・・・。

「観光旅行」 恋人と訣別するためイタリア旅行中の私は、観光地で母子喧嘩に巻き込まれた。

「飛行機と水族館」 アテネ帰りの飛行機で隣り合った泣き女が、なぜかぼくの心にひっかかり、
彼女の会社や家を訪れたのだが・・・。

「テラスでお茶を」 男とのねじくれた関係を刷新すべく、中古マンション購入を決意した私だが
一体何のためにマンションを買おうとしていたのかわからなくなり・・。

「貸し出しデート」 夫以外の男を知らない主婦の私が、若い男を借り出してデートに挑むがやっ
てきたのはどうしようもない二十歳の男だった。

*感 想*

どの短編も正直読んでいて楽しいものではありません。
苦さや30代後半の主人公達のその年齢独特の滑稽など可笑しいと言えば可笑しいのだけど他人事で
はなく、一杯飲みながらほろ酔い加減でクダを巻きつつ読むのがピッタリの短編集なんですよね。

主人公の彼女、彼らは決して「善人」でもないし周りから憧れるタイプでもない。
どちらかと言えば問題ありな方々ばかり・・・。
しかも出会う人たちも普段の生活であれば絶対に出会いたくないような人たちばかりなんですよね。
「人生ベストテン」では「何もない自分」「何の出来事もなかった自分」に怯え寝つけぬ夜に主人
公は自分の人生におけるベストテンを思い描く、その殆どが10代の出来事で今でも思い出すのはそ
の当時付き合った男の子のことばかり・・・。
10代の頃の思い出ってどんどん美化されていくのですごく綺麗で宝箱の中にしまってある唯一の宝石
のような物になっていたりします。ですから主人公の鳩子の気持ちって何となく誰にでも重なるので
はないかなぁと思うのですよね。
大人になってから特別な出来事ってそこまではない、それは突飛なことが出来なくなっているからと
社会に出たら殆ど毎年変わらないことばかりだから・・・。
また著者の描く同性に対しての辛辣なまでの暴きように時々ドキリとさせられてしまいます。
地味だけど幸せそうなグループっていましたし当時はそこには入りたくなかったけれど歳をとってか
らだと彼女達の幸せもわかるような気がするのですよね。
また私自身外見は変わっていっても中身は中学時代のままと地元の同級生と語ることがありますし実際
に自分でも成長したとは思えない。
全てを曝け出す角田氏の文章には毎度参ってしまいます。

さてこの中ではやはり表題の「人生ベストテン」が一番なのですが、男性が主人公の「飛行機と水族館」
も主人公の行動に引きつつこの物語で男性側からみて書いていることに思わず唸らされました。
はっきり言ってこの主人公の行動はストーカー以外の何者でもないのですが、彼の全てのやる気が失せ
てしまった時の気持ちってすごく分かりますし、その突破口がたまたま飛行機で隣の席になりグズグズ
と泣いていた女だったのですよね。
これを女性側から書けばすごく怖い、誤解も何もなく本当にストーカーとしか思えないのに彼にしてみ
れば何で警察にまで連れて行かれるのか分からない。
しかも他人に話してみたら実にたいしたことのない話だったりする。
この自分にとってはものすごい話でも人に話してみたらクダラナイ小さいことに思える出来事って人生
の中でたくさんあると思うのです。

この本は全て着眼点が面白い。
生々しい人たちの生々しい話。
出来れば出会いたくない人たちなのにもしかすると自分もその一人かもしれない・・・。
苦いけれどもそれが癖になるのが角田氏の本なんです。
30代の方にとくにオススメ。

一言■苦いのだけど読み応えがあるのでついつい読んでしまう作家さんなんですよね。
評価 ★★★★★
「ナラタージュ」 島本理生  角川書店 1,470円 ナラタージュ (角川文庫)
ナラタージュ (角川文庫)
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*あらすじ*

大学2年生の春、泉に高校の演劇部の葉山先生から電話がかかってくる。
高校時代、片思いをしていた先生の電話に泉は思わずときめく。
だが、用件は後輩のために卒業公演に参加してくれないか、という誘いだった。

「それだけですか?」という問いにしばらく間があいた。
「ひさしぶりに君とゆっくり話がしたいと思ったんだ」

高校卒業時に打ち明けられた先生の過去の大きな秘密。
抑えなくてはならない気持ちとわかっていながら、一年ぶりに再会し、部活の練習を重ねる
うちに先生への想いが募っていく。

一生に一度の究極の恋を瑞々しい感性で描く。 

ナラタージュとは映画などで主人公が回想の形で過去の出来事を物語ること。

*感 想*

以前から注目していた若手作家の島本理生氏。彼女は本作で一気に化けましたね。
この化けようはスゴイです。
ここ数年の間に読んだ恋愛小説の中で一番切なく、また一番泣けた本かもしれません。
今まではどこか子供の雰囲気が残っていた作品に比べこの作品は恋ではなく「愛」。
まさしく今年最高の純愛小説なんですよね。

最初の数ページを読むだけで物語の中に呑み込まれていき、いつの間にか主人公の泉と同化し
ていきます。
静かに、そして激しく思う葉山先生に対する気持ち、それは忘れることはなく、また薄れるこ
ともない想いでした。
再び出会う二人は時に近づき時に遠のく、そして先生の秘密にはある隠された部分がありその
ことを知ってしまった泉は先生に二度と会わないことを宣言してしまう。
新しい恋人・小野との出来事、演劇部の後輩の死、そして泉自身に起きていたイジメ、自殺し
ようと思っていた日々のことなど恋愛以外にも心を痛める箇所が沢山あるのですよね。
また隠されている部分が多いのでその謎解きという意味でも続きが大変気になる作品になって
います。

きっと読んでいると葉山先生に対して多少狡さを感じるのですが、きっと泉以上に葉山先生は
泉のことを大切に思っていたのかもしれないと最後に感じさせてくれます。
どうしても捨てられないものがあるのが大人の世界、だからきちんと責任を取るために葉山先
生が選んだ道は読者が望むものではない。
またナラタージュとは過去の回想を語るという意味なので現在の泉が過去のこの恋を語ってい
るのだが決してそれは過去の出来事と終わってしまったものではなく、消えることなく痛みを
伴いながら胸にいつまでも残る恋なのだということをラストで再び読者の胸をうつ。

本当に切なくそして哀しい、そして美しい恋愛小説でした。
実は恋愛小説ってあまり好きではないのですが彼女の作品は別かもしれません。
しかし若いのに情緒溢れる綺麗な文章を書く方なんですよね。
そして彼女の作品に登場する人は今時の格好つけた無関心を装うような若者ではなく、他人と
関わり合いながら生きていこうとする人ばかりなのでその部分も同じ年代の作家との違いを感
じてしまいます。

恋愛小説が読みたい方にオススメ。今年最高の恋愛小説はこの本です。


評価 今年最高の恋愛小説です。すごいの一言ですね。
一言■★★★★★。
「羊の秘」霞 流一 祥伝社 920円 羊の秘 (ノン・ノベル)
羊の秘 (ノン・ノベル)
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*あらすじ*

ミイラのように全身を覆う白い紙、口には矢印形の金属棒。現場を見下ろすのは、
1時、2時、3時を指す3つの古時計……武蔵野の土蔵に横たわる謎だらけの死体。
絞殺された通訳の仲丸伸之は夢の表現サークルの一員だった。事件を追う古道具屋
露沢は、会員の少女が直前に自殺したことを知る。しかも謎の羊頭男の写真を残し
て……。その後、事件の周辺で続々と発見される「羊」を示す暗合。
殺人とはどう関連するのか? 
渾身のミステリネタてんこ盛りの「究極の超本格」誕生!
ふくらむぞドリーム!
燃え尽きるほどフレーム!
響け、地底のスクリーム!

*感 想*

こういうタイプの本は一番感想が書き難いのですが・・・。

謎が謎を呼び、不可解な見立て殺人、密室殺人が起こる、死体を発見したことから
警察に疑われ犯人探しに翻弄する露沢は調べていくうちに彼に繋がりのある一人の
少年にたどり着く、しかも彼は数年前に焼身自殺し「羊」という謎のメッセージだ
けが手元に残るのだった。

うーむ、途中までは登場人物が個性的だしある意味バカミスっぽかったので楽しめ
たのですが、解決編までが長いのが問題なんですよね。
夢の表現サークルのメンバーに関しては途中で誰が誰だかわからなくなりそうだっ
たし結局事件の真相は後味悪いものでしたし・・・。
ミステリネタは満載でしたけど本当のミステリ好きじゃないと面白いとは思わない
かもしれない微妙な路線だなぁというのが私の感想です。

ミステリが読みたい時には楽しめそうですがそうでない時に読むと途中経過で飽き
そうです。

一言■バカミス路線なのかと思ってたら本格なんですよね。
評価 ★★★
> 「れんげ野原のまんなかで」 森谷 明子  東京創元社 1,575円 れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)
れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)
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*あらすじ*

秋庭市のはずれもはずれ、ススキばかりがおいしげる斜面のど真ん中に立つ秋庭市立
秋葉図書館、そこが文子の仕事場だ。無類の本好きである先輩司書の能瀬や日野らと、
日がな一日あくびをしながらお客さんの少ない図書館で働いている。ところがある日
を境に、職員の目を盗んで閉館後の図書館に居残ろうとする少年たちが次々現われた。
いったい何を狙っているのか?

「霜降――花薄、光る。」
「冬至――銀杏黄葉」
「立春――雛支度」
「二月尽――名残の雪」
「清明――れんげ、咲く。」 

*感 想*

日常ミステリ、しかも図書館の周りで起きたミステリですので本好き、図書館好きには
それだけでもワクワクしてしまう一冊なんですよね。
しかもちゃんと探偵役もいますし、主人公の文子もひたむきさや生きる姿勢がよいので
好感度が高い。

私も図書館派なのでよく利用しますが、司書にあまり質問とかすることがないですし借
りる時と返す時くらいしか接しなかったのですが、本に関することを色々と聞いてみた
ら答えてくれるものなんですね。
本屋さんとかで本の質問をしてもアルバイトだったりするとなかなか答えてもらえない
ことが多いですし「こんなに有名なのに知らないとは」と思うことが度々あったのです
が司書のいる図書館で聞けばよかったか・・・と今更ながらに思いました。(笑)

さて内容ですが、どれも後味がよい短編なので読んでいて気持ちがよかったです。
今まで無名だった図書館に少年たちがゲームをしかけた理由は両親を思うことから始ま
ったことですし、本棚に残された不思議なメッセージはなかなか打ち明けれない恋心を
綴ったものですし、雪女の理由も、謎の本の理由もすべてが誰かが誰かを思うときに起
きた謎なので解けたときにも優しさがあるのですよね。

北村薫や加納朋子が好きな人はたぶんこの本も気に入るのではないでしょうか?
透明感があって真っ直ぐさのある主人公はこの二人の作家さんに通じるものがあるよう
な気がします。


一言■図書館好きにはたまらない本かも。
評価 ★★★★
「九月が永遠に続けば」 沼田まほかる  新潮社 1,680円 九月が永遠に続けば (新潮文庫)
九月が永遠に続けば (新潮文庫)
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*あらすじ*

ある晩、最愛の息子・文彦はゴミ捨てに行ったきり戻らなかった。
失踪した直後、愛人の男・犀田が線路に落ちて死んだ。もしかして、息子が殺したのだろうか?
盲目的に息子を捜索する私の前に、亡霊のように現れる過去の絆。
元夫・雄一郎、雄一郎の妻となった亜沙美、そして娘の冬子。
渦に巻き込まれるかのように一つに集められた彼女たちは忘れたかった過去と隠されていた事実
を浮き彫りにさせていく。

犀田に出会う前の九月に、もう一度戻れたら――

第五回ホラーサスペンス大賞大賞受賞作。

*感 想*

この本は「綾辻行人・桐野夏生・唯川恵、三選考委員が一致して推した、堂々の受賞作!」と紹介
されているのでかなり期待して読んだのですが私の中でホラーサスペンスと言えば「黒い家」のよ
うに読んでいて突然日陰に入ったような暗く陰湿なものというイメージがあったのに対してこの本
はあまりホラーという感じがしなかったのですよね。
ただのサスペンスならわかるのですが・・・。


さて内容ですが確かに絶賛されるだけあって最初に見えていた形「息子の失踪」とは全く違う事件
を主人公の母は追うようになっていくのには驚きました。
また登場人物たちも物語が進むうちに別の顔を見せ始め、最後にはまったく違う相関図が出来上が
るのも面白かったのですが、そういう面白さとは別の読んでいてワクワクしたりドキドキする面白
さはなかったのですよね。
まず母親、この人が主人公なのに魅力がない。
こういうタイプっていそうですが結局この人何がしたいのかサッパリわからないという印象しか残
らない人でしたね。
そして雄一郎は結局何がしたかったのですかね?
ただの変態で自分の性癖・嗜好を患者である亜沙美に対して行っているのを医療行為だと難癖つけ
ているだけだったような気がするのですが・・・。
最終的に「うわー、この人がこれをしてたのか」という驚きはあるものの、その驚きが不自然で書
いてあるからそうなんだと思っただけなんですよね。
何ていいますか誰が犯人でも誰が死んでも意外と思うしかないような話でした。
皆さん暗い過去を持ちすぎて誰が誰でもいいんですよね。
越智先生の過去なんて不必要だと思いますし・・・

私の中ではこの本の中で最後に出てきた冬子を自殺に追いやり犀田を結果的に線路に落とした人物
よりも雄一郎が一番の悪者に思えました。
こんな精神科医なんていないでしょう。
なんとなく読み終わって気分が悪かった一冊ですね。

一言■雄一郎の行為が犯罪に思えて仕方がなかったのですが・・・・。
評価 ★★★。
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「反自殺クラブ」 石田衣良  文芸春秋 1,600円 反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパーク〈5〉 (文春文庫)
反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパーク〈5〉 (文春文庫)
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*あらすじ*

親を自殺で亡くした“自殺遺児”たちの依頼を受けたマコト。
自ら潜入工作員となり、ネットで集団自殺の斡旋をする謎の男“スパイダー”を探し出
し、ついに自殺幇助の証拠を見つけるが……。生きることの尊さを、身をもって体験す
る若者たちの物語を描いた表題作「反自殺クラブ」のほか全四篇を収録。“
風俗スカウト事務所の集団レイプ事件、中国の死の工場を訴えるキャッチガール…。
ストリートの今を鮮やかに切り取る新世代青春ミステリー。
伝説のIWGPシリーズ第5弾。 

スカウトマンズ・ブルース/伝説の星/死に至る玩具/反自殺クラブ

*感 想*

このシリーズはまず冒頭のマコトの語り口調がいいですよね。
短編毎に今回起きるトラブルに関しておおまかな内容が語られるのですがそこだけで読者
の気を惹く力があります。しかも内容が「今」の若者や社会で起きていることとリンクし
ているので物語を読んでいながら現実の世界と一瞬重なってしまうところがあるのもこの
シリーズの魅力です。
ただし扱うことは弱者にとってはつらいことばかりなのですが・・・。

まず表題の「反自殺クラブ」はネットでの集団自殺を斡旋する謎の男に関しての物語。
親に自殺された三人の若者が作ったのは「反自殺クラブ」、彼らはネットの中で巣食う自
殺を斡旋するクモ男を追ううちに思わぬ結果を招いてしまう。
身近な者が死に近づいているのに気付かなかった後悔、自殺だけが彼らの世界を救う手段
だったことの悲しみ、どちらにしても「自殺」に関わって社会と生きている「反自殺クラ
ブ」のメンバーの苦い気持ちと、きっと今この瞬間も生と死の狭間にいる人たちが大勢い
ることの重さを考えてしまいました。

「死に至る玩具」は確かに思うところがありますが丁度先日からの反日感情を露にしてい
るニュースを見ていると微妙に小桃の味方ができませんでしたね。
確かに正義は正義なのですが、中国で安く生産できるので日本の企業は生産ラインをあち
らに持っていったせいで日本での失業率も大きくなっているわけですし。
視点を変えれば正義が正義ではなくなるのでこの物語は本当微妙ですね。

「スカウトマンズ・ブルース」に関してはこういう事もあるのだと若い女の子にはぜひと
も読んで欲しいですね。
スカウトされた後で待っているのは天国もあれば地獄もある、身の程知らずの行動や見る
目がないと地獄行きだということを知らないと現実ならばこんな風にあっさりと助かるな
んてないですから。

今回はタカシの出番があまりなかったのが残念ですがやはりこのテンポよいIWGPシリ
ーズはお気に入りです。

一言■飽きさせないIWGPシリーズですね。
評価 ★★★★。