ニューオーリンズの音楽を知りたければ、まずはこれを聴け!と言われているプロフェッサー・ロングヘア。ブルース・ピアニストとしてカテゴリーされていますが、そのサウンドはルンバにマンボ、カリプソまでと、兎に角多彩なプレイをこれでもかと披露してくれます。紹介文によれば、「ファンクの父」「ロックのバッハ」「ニューオーリンズのピカソ」などと勝手な形容がされています。まー名前自体が「長髪教授」ですからね。

 実は私がプロフェッサーを聞きだしたのはほんの10年ぐらい前からです。何せ私がブルースに溺れていった時は、情報が少ないうえに、携帯もネットも何もない時代ですから、調べる手段が極端に少なく、正直、プロフェッサーの名前は知っていましたが、そこまで手が回らない状態でした。そりゃそうですよ、シカゴ・ブルースやモダン・ブルースやカントリー・ブルースなど調べなければならないことがヤマほどありましたから。

 それでもキッカケは何かは憶えていませんが(多分、Blues関連の本か記事を読んだことによるもの思いますが)、1枚のCDを手に入れて初めて聞いた時はすごく後悔したことを、今でもよ~く憶えています。もっと早く聴いていれば良かったと。後悔先に立たずでした。ま~こんなことはしょっちゅうですけどね。

 改めてプロフェッサーについて調べてみました。1930年代にチップを稼ぐためにバーボン・ストリートでタップダンスをして過ごし、その後、どのようにしてかはわかりませんがギターとピアノを覚えて稼ぐようになったようです。1940年代末にはカレドニア・クラブという場所で幕間の時間にピアノを弾き喝采を浴びたそうです。結局、その時のピアニストがバントをクビになり、そのバンドのメンバー全員が長髪であったことが芸名の由来であるとの事です。1950年代にはアトランティックなど複数のレーベルにレコーディングを残しており、R&Bチャートに登場していました。当時の彼はレコード契約上の問題を避けるために様々な芸名で活動していました。1960年代にはプロフェッサーの活動は急激に減速したしまいましたが、1970年代に入りモントルー・ジャズ・フェスティバルのヘッドライナーを務めるなど復活を果たしました。余談として1975年にポール・マッカートニーがクイーン・メアリー号船上で開催したプライベート・パーティーに出演したそうです。

 プロフェッサーの魅力は何と言っても独特のリズムとファンキーなビートにあり、その場が一気に盛り上がっていくスピード感と、少しとぼけたような、でも人懐っこいけど力感のあるボーカルであると思っています。残念ながら1980年に心臓発作で亡くなりましたが、その後ロックの殿堂入りを果たしています。 

 

 まず右は「クロウフィッシ・フィエスタ」。いきなりですが、これはプロフェッサーの運命的なラストアルバム。79年末録音、80年発売、その発売日がプロフェッサーが亡くなったというもの。数々の必聴盤はありますが、最後にしてよき理解者のメンバーを迎えコンビネーション抜群の出来で、最高に楽しくて激しくて幸せになれる一枚です。ぜひ最初に聞いてプロフェッサーの虜になってください。

 左は49年のテビュー作の「ニューオーリンズ・ピアノ」。代表曲は「マルディ・グラ・イン・ニューオーリンズ」。その後何度か録音を重ねています。マルディ•グラとは奴隷としてアフリカから連れてこられた人達が、ニューオーリンズの先住民であるインディアンと出会ったことで始まった毎年2月に行われるカーニヴァルのこと。いきなり口笛で始まり、一気に駆け抜けて盛り上がる名曲です。

 

 右は78年にマルディ・グラ・シーズンにフェスの本拠地ティピティーナズで行われた2枚組のライブ盤「ザ・ラスト・マルティグラ」。総じてプロフェッサーのライブ盤は出来の良いものが多いと個人的には思っているのですが、その中でも素晴らしいバンドを従えての熱気溢れる名盤で一番好きなライブ盤です。

 左は60年代の低迷期から復活を果たした71年~72年のニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスの後にスヌークス・イーグリンやザ・ミーターズのメンバーなどを従えてライノ・レーベルがまとめたセッション盤。このインパクトあるジャケットにウソ偽りなし負けず劣らずの大名盤です。

 

 右は輸入盤で詳細のところまではわかりませんが、75年にポール・マッカートニーの招待を受け、船上で披露したライブ・アルバム。一聴の価値は十分にあります。

 左はプロフェッサーのデビュー作が収録されている超マイナーレーベルである「ブルー・ポネット」からの1枚。プロフエッサーが4曲、他にルーファス・トーマスを始めとして質の高いブルース19曲が収録されています。

 

プロフェッサーの作品は今でも手に入れやすいと思います。ぜひニューオーリンズのブルース界で圧倒的な存在であったプロフェッサーのピアノとボーカルに溺れてみてください。