スープの本 | うはのそらにて

スープの本

辰巳芳子さんのスープの本が、一文字一文字が、ほんとうに素晴らしくて、
読んでいると、涙が出そうになる。
それは、まるで栄養が不足しきってからからになった肉体に、
温かく澄んだスープがじんわりと染み渡って、だんだんと、指の先から赤みが差していくような、
そんな感覚に似ているからだとおもう。

一人で暮らすいまは、自分のために、食べ物を作って食べている。
幸い、何かを作るのがもともと好きで、料理やお菓子作りはたのしい。
それでも、何であれ自分の作ったものを相手にふるまうとなると、途端に肩に力がはいってしまう。
まだまだ、慣れていなくて怖いのだ。


毎日毎日、自分ではない誰かに何かを食べさせる日が、そのうちやってくる。とおもう。
赤ん坊も、食べ盛りも、働き盛りも、お年寄りも、みんなのいのちを繋ぎ続ける食べ物を。
だから、この本は、生涯わたしを助けてくれるとおもう。

この手も、誰かのいのちを支える手になるはずだ。そんな予感がする。映像が浮かぶ。



『作るべきようにして作られたつゆものは、一口飲んで、
肩がほぐれるようにほっとするものです

(略)
人が生を受け、いのちを全うするまで、特に終りを安らかにゆかしめる一助となるのは、
おつゆものと、スープであると、確信しております』



まったく、
スープそのもののような本だと思う。
辰巳芳子
「あなたのために いのちを支えるスープ」



はじめのページの、
『「おつゆ—露」いつ、どなたがこの言葉を使いはじめられたか知るよしもありませんが、
露が降り、ものみな生き返るさまと重ねてあります。

私たちの先祖方の自然観と表現力をたたえ、この美しい言葉を心深くつかってゆきたいと思うのです』

という部分がうつくしくて、
なんどもなんども、繰り返し読んだ。



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