英国はロンドンの
ヒースロー空港の
出発案内板(各旅客機の
離陸時間や搭乗口の情報が
示される電光掲示板)の
前に立っていると
必ず話しかけられる
星の元に生まれた私です。
大袈裟ですみません。
いえ、前回もあそこで私は
モロッコ行きの
搭乗便情報を探す青年と、
その青年を助けようとして
うまくいかなくて
私に助力を求め、
モロッコ青年の救済に
私が成功すると
「ついでに私の便の情報も
確認してもらえない?」と
願い出て来た女性に
道案内をしたんですよ。
さて今回。
私がヒースロー発
羽田行きの便の搭乗口が
表示されるのを待っていると
カウボーイハットをかぶった
高齢女性が隣にやって来て
「ねえ失礼、あなた、
スマホをお持ち?」
持ってますけど・・・
でもでもこんな混雑した場所で
突然こんなこをと訊ねられて
「ハイ」とスマホを
出してしまうのは
防犯意識が
低すぎるというか・・・
そう考えた私は笑顔で
「はい、持っていますよ」
「じゃあ申し訳ないんですけど
今が何時か教えていただける?」
私は黙って電光掲示板に
デジタル表示された
現地時刻を指さして
「あそこに時計、ありますよ」
「あら本当!ごめんなさいね!」
いえいえ、と話を切り上げてから
私はふと気になりました、
この方、もしかすると
目がお悪いのかもしれない。
だから時刻表示がすぐそこに
あることにも気が付かず、
いや、気がつけず、もしかすると
掲示板の時刻表示も
見えていないのかもしれない。
というわけで
私はあらためて
「表示によれば現在
10時30分ですね」
「ありがとう、ご親切ね。
それでね、あの、私、
次のニース行きの飛行機の
搭乗口を知りたいんだけど・・・」
「えーと、次のニース行きは
『搭乗口を10時35分に
案内します』って出ていますね」
「じゃあもう少し
待たないと駄目なのね?」
「そうですね。ちなみに
ニース行きは11時台の
BA便であっていますか?」
「ちょっと待って、
確認するわ・・・チケット、
印刷してあるから・・・」
そう言って奥様は
肩から掛けたカバンの
ジッパーを開け、中から
紙を取り出し私に見せ、
うん、利用便は
11時40分発で
間違いないようだけれども
「奥様、鞄のジッパー、
閉じ直してくださいな、
不用心でいけませんよ」
「あら、ありがとう」
奥様のことがなんだか
不安になった私は
あちらの搭乗口が
表示されるまで
その場にとどまることに
したのですが、
10時35分になったら
『搭乗口は10時40分に
提示いたします』。
10時40分になると
『搭乗口は未確定ですが
A区画でご案内いたします』。
「あれはどういう
意味なのかしら」
「ヒースローは広いので
ターミナルがAとかBとかの
区画に分かれているんですよ。
A区画はこのあたりだから
心配しなくて大丈夫です」
「ところであなたは
これからどこに行くの?
搭乗口はもう
表示されている?」
「私は東京までです。
搭乗口はC区画です」
「あら、じゃあもう
行かないと
駄目なんじゃない?」
「大丈夫大丈夫、奥様の
搭乗口を確認したら
私も移動を開始しますよ」
だって私は経験上
知っているんです、
こんな風に搭乗口の
確定が遅れる時、
それは出発時間そのものが
遅れる可能性もあることを・・・!
もしこちらの奥様の目が
私の懸念通り
お悪いのだとしたら
奥様はその情報を
取りこぼす可能性がある、
だから次の表示で
『出発が遅れます』みたいな
情報が出たらこちらの方を
そそくさとBAのサービス
カウンターにお連れして
そこの係に後の案内を任せよう!
亀の甲より年の功、
最近の私はこういう
お節介ぶりも図々しさも
板について来たぜ!
そう自画自賛する私に
奥様は身の上話を
語り始めたのでございます、
続く。
私は通りすがりの人に
割とよく道を
尋ねられるほうです
見た目における
人畜無害感が
強いんだと思います
よく道を聞かれるあなたも
むしろ道を聞くほうなあなたも
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