一時帰省中、父
（イメージ武将：石田三成）の
通院に付き合いまして、
ちょうど食事時となったので
病院のそばの中華料理屋さんで
昼ご飯を食べることにしました。
言葉に少し上海訛りのある
奥さんが接客を担当している
小さな町中華のお店で
別のテーブルの一人客が
『昼定食A』を頼むと
「あらー！お客さんは絶対
今日は『C』を頼むと
思っていたよー！」
お客さんはそう言われて
「ふふふ、確かにいつもなら
『C』なんですけど、今日は
『A』の気分なんです」
「でも『A』も美味しいからね！
ほら外暑いんだからお茶
もっと飲んで！冷えてるから！」
おお、なるほどここは
店員さんとお客さんが
親しくなると会話をする
お店なんだ、ということは、と
近頃スモールトーク
（Amall Talk、雑談）を
社交技術として身に着けた私は
テーブルに来た店員さんが
「はいお客さんたち
今日が初めて？お昼はね、
うちは定食がおススメよ」
と笑顔で話すのを受け
「はい、初めてです、
そこの病院の看護師さんに
ここのお店を教わったんです」
「・・・え？あの病院の？」
「そうです、この近くで
お昼を食べるべきお店は？と
担当の看護師さんに聞いたら
婦長さんっぽい方も
一緒になって相談して
『このお店なら間違いない』と」
「・・・そう！うちね、
あの病院で働いている人が
よく来てくれるの、
看護師さんなんかはね、
特にね、ほら大変な
お仕事だから、美味しいものを
食べて力つけないと
いけないからね、そう、
看護師さんが・・・
どの科の看護師さんかな？
あ、でも私、担当科を
聞いてもわからないな、ほら、
お客さんのことはお顔と
注文で覚えているから
所属を聞いてもね、わからない、
残念ね、でもそう、
看護師さんがうちを
勧めてくれたんだ・・・」
店員さんは一度厨房に行き
我々の注文を通すと
お箸片手にまた
テーブルに戻って来て
「ねえ、今度その
看護師さんに会ったらね、
『あのお店に行きました』って
言って頂戴、ほらそうしたら
その看護師さんが今度
うちに来た時にその話を
してくれるかもしれないでしょ、
そしたら私が『ああ、
この人だ』ってわかるから・・・」
あ、これは私はこの人を
ちょっと嬉しい気持ちに
させちゃったな、
それはそれで
よかったよかった、と
思っているところに
我々の注文の品が運ばれてきて、
味は確かに看護師さんたちが
言うように美味しく
私と父がぱくぱくと
お皿を空にしていると
店員さんがまたやって来て
「お客さん、病院で
うちのお店のことを
聞いたってことはどこか
悪いの？どこが悪いの？」
「ま、まあ色々・・・」
「今度病院に来たらね、
またうちに来てね、
うちのゴハンは美味しいから
ちょっとくらい体調が悪くても
ちゃんと栄養になるからね」
「はい」
「もしかして入院？
こちらのオトーサンが？
じゃあアナタお見舞いに来るわね？
その時にうちでご飯食べなさいね、
お見舞いで疲れちゃいけないからね、
うちでゴハン食べたら美味しいから
お見舞い疲れも治るからね」
「は、はい」
「そういう人、よく来るの、
お見舞いの合間とか
治療待ちの間にね、
それで皆うちのゴハン食べると
元気になった顔をして
病院に戻るの、だから
絶対に来るといいわよ」
「ありがとうございます」
「オトーサンもしかして
手術とかもする？手術の立ち会いの
合間とかにも来てくれていいのよ、
そういう人もいるからね、
待合室でずっと待っていると
暗い気持ちになっちゃうから、
うちでゴハン食べて気晴らしして」
「はい」
「・・・時々ね、患者さんは
残念ながら亡くなっちゃっても
その後家族の皆さんがうちに来て
ゴハン食べながら
思い出話をすることもあって・・・」
オイオイオイオイ、奥さん
それはちょっと縁起でもない、と
思っていたら奥のテーブルで
昼ビールを飲んでいた
常連さんらしい殿方たちも
この不穏な発言の
流れに気が付いたのか
「奥さん！奥さん、
こっちビールおかわり！」
気配りの出来る常連さんに
支えられたお店だと理解しました。
しかし人は
嬉しい気持ちになると
口が滑りますね。
自分にも心当たりは
たくさんあるので
今後気をつけたいと思います。
店内清潔で明るくて
一人客にも
優しい作りでした
しかしいいですね町中華
・・・ああいうお店は
スコットランドにはない
東京在住者への
羨（うらや）みが
憎しみに近づくのは
こんな時です、本当に・・・
町中華がお好きなアナタも
実はああいうお店には
まだ入ったことがないあなたも
お帰りの前に１クリックを
↓
