盲導犬にはなれないことになった

元盲導犬候補生アーシー(仮名)を

飼犬として我が家に引き取るか

それともアーシーにはお別れをして

新たな候補生の育成を補助するか。

 

「どんな決定であろうとも

僕は君の気持ちを尊重します」

とかなんとか言っていた

わが夫(英国人)がここに来て突然

正面から犬への愛を宣言し始め

まあ夫の気持ちはわかる、しかし

倫理的にそれはどうなの?

 

現代において重要なのは

人助け、社会貢献の精神でしょう?

 

あああああ。

 

・・・というわけで、ここは

経験者の助言を得ようと

月に一度の盲導犬候補生の

集団訓練会に顔を出しました。

 

「あれっ、Norizo、

今日はアーシーは?」

 

「アーシーは今

訓練学校にいるんです」

 

「ああ、いよいよ訓練開始?」

 

「いえ、そうではなく色々ありまして・・・

アーシー、盲導犬としての適性は

『なし』との判定が出てしまいました」

 

「・・・!」

 

「それで今、アーシーを我が家で

家庭犬として引き取るかどうするか、

の決断を求められている

ところなんですが、どうでしょうね、

私はどうすべきと思います?」

 

「・・・そ、それはね・・・それは

君が自分で決めないと駄目よ・・・」

 

もう定番のこの回答。

 

訓練に参加しているのは全員

現役のパピーウォーカーか

元パピーウォーカー、あるいは

短期で盲導犬候補生を預かる

『ボーダー』という立場の方たち。

 

中に一人、『元盲導犬候補生

(健康上の理由で選考除外)』を

現在飼犬としていらっしゃる

女性がいらしたので近づくと

「あら、今日はアーシーは?」

 

「これこれしかじかで、で、

私はどうすればいいでしょう」

 

「・・・そればっかりはね、Norizo、

自分で考えて決めないと駄目」

 

ですよねー。

 

「でもアナタ、がっかりしたでしょう、

アーシーちゃんに『適性なし』の

判定が出たって聞いた時は」

 

「ええ、もう自分でも驚くくらい。

別にそれでアーシーの犬としての

価値が損なわれるなんて

そんなことは全然

思っていないんですけど、

でもやっぱり物凄くショックでした」

 

「それはね、アナタが誠心誠意

パピーウォーカーとして

努力したからこそ、なのよ。

私も自分のこの子が

盲導犬になれないって

聞いた時はそれはそれは

残念に思ったもの」

 

「でもその後、奥様は犬の引取りを

すぐ希望なさったんですよね。

私はそこのところの気持ちの切り替えが

上手くできなくて、これは犬への

愛情が足りないのかな、と不安に」

 

「まさか!すぐになんて

決められないわ!

アナタ、これは犬の一生に

かかわることなのよ、

短慮に走っちゃ駄目、

考える時間を貰えているでしょ?

可能な限りお悩みなさい。

私もこの子を引き取るにあたっては

色々なことを考えたわ」

 

「そうなんですか」

 

「そうよ!パピーウォーカーとして

盲導犬候補生の面倒を見るのと

犬を一頭自分の飼い犬にするのは

もう全然次元の違うことなの!

旅行にも行きづらくなるし、

お金もかかるしね、アナタ、

犬を普通に飼うのって高くつくのよ。

それにね、私の場合はね、私ったら

高齢なうえに一人暮らしなのよ?

私に何かあったら犬はどうなるの?

私はもうすごくすごく考えたわよ!」

 

「ああ・・・そういうものなんですねえ・・・」

 

「でもね、どっちの道を選んでも

それは『正しい道』よ、アナタにとって。

アーシーちゃんにとってもそうよ。

一言言っておくけど、アーシーちゃんを

アナタが手放すことになったらね、

盲導犬協会が絶対に素晴らしい家庭を

あの子に見つけてくれるから。

アーシーは絶対に幸せになれるから。

『犬の気持ちを考えて』とか

そういう理由に流されちゃ駄目。

犬のせいにしちゃいけないの。

そんな甘い考えじゃなく

自分の気持ちと向き合いなさい」

 

「となると問題は、どちらの選択で

私が幸せになれるか、ですよね」

 

「そうよ。それでね、忠告するけど、

この問題は心で考えては駄目よ。

頭で考えて結論をお出しなさい。

犬のためにも

頭で決めなくちゃいけないの!」

 

脳に加熱を感じる今日この頃です。

 

 

でも皆さん

『明日は我が身』というか

『昨日の我が身』というか

・・・本当に親身に

相談に乗ってくれました

 

結論は一致していて

「お前が自分で考えろ」

だったんですけど、

帰り際、長くボーダーを

務めていらっしゃる奥様が

部屋の向こうからそばにいらして

「Norizo、いい、アナタがどんな

決断を下しても、私たちは

その決断が正しかったって

ちゃんと言ってあげますからね」

 

・・・優しいなあ!

 

でもその優しさが

逆に今、つらい

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