保護犬収容施設で犬を見て回り

犬たちのあまりにも必死な目つきに

心を砕かれてしまった私と夫(英国人)。

 

あれはね、軽い気持ちで

足を踏み入れていい場所ではなかったです。

 

いえ、我々だって決して遊び半分で

施設を訪れたわけではなかったんですよ?

 

ご縁さえあればあそこから犬を

引き取る気はちゃんとあったんですよ?

 

でもね・・・

 

ちょっとあの犬たちの目がね・・・

 

「引き取れるものならあそこにいる

すべての犬を引き取りたい。

でもそんなことは私にはできない。

あそこから1頭だけを選ぶことも

ほとんど不可能に近い。

だってそんなことをしたら他の犬に悪い」

 

肩を落とす私の隣でしかし夫は前向きに

「でも1頭を引き取れば

少なくともその子のことは

君は幸せにできますよ」

 

「・・・できるかね?犬飼い初心者の私に」

 

「僕はあそこで全部の犬に話しかけましたが

何頭かの犬は明らかに僕の言葉を理解して

指示に従う意思を見せていましたよ。

ああいう子なら君でも飼えると思います」

 

・・・君はいつの間にそんなことをしていたの?

 

建物内の犬たちがどの子もこの子も

我々に対し必死に『お座り』をしていたのは

どうやら夫の指示を

受けてのことであったらしいです。

 

「じゃああそこでちゃんとお座りをしていた

中型犬以下のサイズの犬だったら

私でも何とかできる、という話だな」

 

「それなんですけどね、妻ちゃん。

僕たち二人とも犬の造形として

シベリアンハスキーが大好きでしょ。

でもあの犬の個性、そり犬としての本能が

我々の住環境にはそぐわないとして

僕たちの『欲しい犬リスト』から外したでしょ。

でもこの建物の中に1頭、とても

珍しい気質のハスキーがいたでしょう」

 

それは私も気が付いておりました。

 

 

その子は絵に描いたような

美しいシベリアンハスキーで

思わず見惚れてしまう程だったのですが

何が珍しいってその子、

ものすごい恥ずかしがり屋なのか

我々がその子の個室に近づくと

するーっと犬用ベッドの後ろに隠れて

顔を半分だけ覗かせて

こちらをうかがって来たんです。

 

他の犬は我々が入り口に近づくと

この機を逃してはならじと全速力で

柵に体当たりせんばかりだったのに。

 

それでその子ったら、しばらく待ってから

我々がその子の個室のドアから離れると、

今度はベッドの裏から出てきて

「なんで行っちゃうの」みたいな

そぶりを見せてきたのです。

 

「あれは人見知りをしているんでしょうか。

番犬としてはちょっとアレかもしれませんが

でもあれだけビクビクした犬なら

家から逃げ出そうとは考えないでしょうし

猫に喧嘩を売る勇気もないでしょう。

もしかしたら僕たちは理想の犬を

今日ここで見つけたのではないでしょうか」

 

「・・・君はただハスキーが好きなだけだろう、と

言いたいところではあるが、なるほど、確かに

あの犬があの性格ゆえに引き取り手に

恵まれていないのだとしたらそれは

我々が一肌脱ぐことに私もやぶさかではないな。

でもなあ、1頭だけ選んじゃうと他の子がなあ・・・」

 

そこに施設の係のお姉さんがやって来て

「どう、うちの子たちに会った感想は!」

 

「いや・・・どの子もこの子もちゃんときっちり

お世話を受けている様子で感銘を受けました」

 

「ウフフ。それでどう、この子なら!と

運命を感じるような子はいた?」

 

「そこが難しいんです。あの子達は皆

現在引き取り手を募集中なんですか」

 

「ううん、何頭かは・・・あそこにいた犬の

半分以上にはもう予約が入っているのよ」

 

「え、そうなんですか!じゃあたとえば

あの左端のケージでずっと

キュウキュウ鳴いていた

白地に茶色のブチの入った犬なんかは・・・」

 

「あの子は次の週末に貰われていく予定よ。

だからあの子は渡してあげられない。

ごめんなさい、こういうの、

先に言っておくべきだったわね。

あの子のこと、引き取りたい気分だった?」

 

いえ、いいんです、それは本当に

私にとっても朗報というか!

 

そうか、あの子達、半数以上がすでに

貰われ先が決まっている子たちだったのか!

 

じゃああそこから自分の好きな犬を

1頭選んでも罪悪感にさいなまれる必要は

それほどないということですね!

 

同じことを思ったらしいわが夫がここで

「あの、そうなりますと質問ですが、

あそこに1頭、ハスキーがいましたよね」

 

「ああ、あのゴージャスな子ね。

あの子は駄目、今トライアル中だから」

 

トライアル・・・というとつまり・・・

 

「引き取り手候補が現れて現在

相性を見ているところ、というわけですか」

 

「ううん、そうじゃなくて・・・

この場合のトライアルは

『クリミナル・トライアル(Criminal Trial、

刑事裁判)』みたいな意味のほう」

 

クリミナル・トライアル?

 

続く。

 

 

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