皆様覚えておいででしょうか、
数年前にわたくしが旅行先で
恐怖の大腹痛に襲われたことを・・・

そして診断名が
胃の不調』だったことを・・・

実はあの後もわたくし数回
同じような目にあっておりまして、
ただ毎回病院に行って鎮痛剤をもらい
検査などしていただきましても
「現時点で特に問題は見当たりませんね、
痛みがなくなったのならお帰り下さい」
という展開になりまして、一応
かかりつけ医(GP)にも相談したのですが
「うーん、でもでもX線を撮っても何もなく、
薬で痛みも治まっちゃうなら、それ以上はねえ・・・
痛みが取れないなら大問題だけど
鎮痛剤でどうにかなるなら大丈夫ですよ」

以来仕方なくわたくしは
大腹痛の先触れ的腹部の痙攣が来ると
黙って痛み止めを飲んで
丸まっていたのでありました。

まあ多くの場合それでなんとかなったんです。

が、しかし!

今回はなんとかなってくれなかった!

夜に痙攣が来たので鎮痛剤を飲んだのですが
一晩のほぼすべてを蛙のポーズで過ごし
雄鶏が時を告げると同時に夫(英国人)が
「・・・救急車を呼びましょうね」
「いや、でも、大騒ぎをして病院に行っても
結局『検査の結果異常なし』で帰されちゃうし・・・
この痛みさえ治まればなんとか・・・」
「市販の鎮痛剤じゃ治まりそうにないから
言っているんです、第一、今の君は客観的に見て
正常な判断がくだせる状態じゃありませんよ」
「だがね、私は救急車とかそういうものは
『本当にそうしたものが必要な人』が
使うべきものだと思っていてだね・・・」
「今の君はどう見ても救急車ですとか
救急医療サービスですとかが必要な人です」

で、マウスウォッシュの香りも爽やかな
救急隊の屈強な殿方二人に連れられて
病院(救急外来もある大病院)へ。
強めの鎮痛剤をもらって
各種検査を受けさせてもらって、結果、
「特に異常は見られませんね」

ああ、またこのパターン・・・

「あの、先生、それにしてもこの腹痛の
原因は本当に何なんでしょうか、
それがわかれば私も普段から
もっと己の健康に配慮して、
こんな風にお医者様を
騒がせることもないと思うんですが」
「いえ、ですから検査の結果何もありませんしね、
鎮痛剤で痛みは軽減しているんですよね、
そうなると、これ以上のことはできませんね」

何故だろう、私はもう涙も出ない。

そんなわけで前屈みになりながら家に帰り
布団に潜りこみ直し、
気が付くと一昼夜が経過しており
「妻ちゃん、かかりつけ医に連絡したら
朝のうちに往診に来てくださるそうですから」
「・・・でもきっと『検査結果に異常がないなら
できることはこれ以上ないですねえ』って
言われるだけだと私は思うぜ。
私を理解し救ってくれるのは
解熱鎮痛剤パラセタモルだけだ、ぐうう」
「でも今回、君の痛みはずいぶん
長引いていますよ。いつもだったら
病院から帰ってきたその日から君は
普通に活動していますけど、
今回は1日たっても
布団から出られないみたいじゃないですか」

そこへかかりつけ医がご登場、
問診と触診の後
「えーと、じゃあ君、救急で担ぎ込まれた
病院にもう一度行ってもらいましょうか」
「はあ、いつ」
「今、これから・・・どうして君、
そんな不思議様な顔をするの?」

いや、だって先生。

「検査の結果異常はない、とのことでしたし・・・」
「うん、でも1日たっても痛みが治まらない、
というのは、これは異常事態だからね」
「はあ、ただ痛み止めを飲めばなんとか
耐えられる痛みではありますし」
「でもベッドからは下りられないんでしょ?
で、君、30時間近く飲まず食わずなんでしょ?」
「はあ、ただそれは痛みがあるからで・・・」
「うん、それは状態として普通じゃないです。
脅かしたくはないけれど、はっきり言うと
かなり深刻な(significant)状態かもしれないです。
紹介状を書いてあげるので、素直に
大病院の専門医に診てもらってください」

というわけで再び大病院へ。

受付で紹介状を見せるなり
当然のように車椅子に乗せられたあたりから
私もだんだん気弱になってまいりまして、
そこからまた色々と各種検査を受け、
もちろんその間も痛みは続き、
複数のドクターが
入れかわり立ちかわりで診察に来てくださり、
しかしなかなか診断はつかず、
そのうち痛みと疲労のあまり
車椅子に座ることさえ出来なくなり
(上体をまっすぐに保てない、という)
検査室への移動に
ストレッチャーを準備される有様になり、
「Norizo、もう体力の限界なのはわかってるわ、
でもあとCTだけ撮らせて!ね!
今日の検査はこれで最後だから!」
と女医さんに励まされながら受けた
CTスキャンでやっと
痛みの原因がわかりました。

えー、実は私、数年前に大病をし
・・・いや、これはちょっと大袈裟ですね、
まあ色々あって開腹手術を受けているのです。

で、その際に腹部を威勢よく縦に
25センチくらい切られているのです。

(皆様お腹に25センチ定規を押し当てて
私の傷の見事さを疑似体験してみよう!)

手術自体は成功したのですが、
その傷跡がこのたび癒着を起こしたそうで、
「それによって腸がねじれ
(Twisted Bowel)、閉塞しています」

ああ、つまり腸捻転・・・

腸捻転って・・・

こんなに痛く、
そして苦しい病気だったのね・・・!

チョーネンテンとカタカナで書くと
愉快な気配さえ漂う語感からは
想像もつかない壮絶な症状だわ・・・!

ああ、でも診断がついてくれて本当によかった!

同じお腹が痛くて七転八倒するんでも
『病名:特になし(不明)』よりも
『病名:腸捻転および腸閉塞』のほうが
治療法があるぶん患者としては救われる思いよ!

しかし『Twisted Bowel』って
直訳すれば『ねじれた腸』、
もうそのまんま。

病気が判明した安堵感と消えない腹部の痛みから
私はどうやら変な表情をしていたらしく、
女医さんは心配そうに私の顔を覗き込み
「Norizo、大丈夫?いきなり
腸がねじれていると言われて
驚くのはわかるわ、驚いて当然よ。
でもこれはちゃんと治る病気だから安心して」

「大丈夫です、いえ、私は自分の精神が
ねじれていることは自覚していたのですが、
まさか腸までねじれているとは、と
そこにちょっと驚いただけです、ハッハッハ」

ねえ、私のこの咄嗟のジョーク、
肉体的に追い込まれている割には
けっこうキレがある出来だと思いません?

不謹慎ではあるかもしれませんけど!

しかし肝心の女医さんは私と一緒に
一応笑ってはくださったんですけど
それがどう贔屓目に見ても
『実力のない若手芸人へのお愛想』
みたいな気の入ってない笑顔でしてね。

「・・・さっきの私の発言、面白くなかった?
それとも滑舌がよくなかったのかな、
お腹に力が入らないから声も小さいし
・・・あ、英語力の問題か?通じなかった?
私は『w』の発音が弱いから、そこらへんか?」

女医さんが席を外すと同時に
夫にそう尋ねた私も私ですが
「いえ、たぶんここまで弱り果てた患者が
あんな持病ネタで笑いを取りに来るとは
ドクターも予想していなかったんでしょう」

「でもどうよ、『ねじれた心(Twisted Mind)に
ねじれた腸(Twisted Bowel)』。
私が選挙に立候補したらスローガンはこれで」

「僕はね、普通に呼吸もできないのに
(痛みのため『深い呼吸』が出来ず
小刻みにハアハア浅い息をしている状態)
脂汗をたらしながらそういう馬鹿げたことを言う
君の根性、好きですよ。あ、待ってください、
『ねじれた心にねじれた根性(guts)』のほうが
よくないですか、『guts』は『根性』という意味のほかに
『消化器・腸』という意味もありますから」

「最高だ、ついでに通り名は
『スカーフェイス(傷のある顔)』でなく
『スカータミー(傷のある腹)』でどうだ、
アル・カポネになぞ負けんぜ、私は」

「本当に君はねじれてはいるけれども
いいガッツを持っていると僕は思いますよ」

まあこれは空元気ではあったんですけどね、
だってほら、ずっと付き添ってくれた夫の顔が
時間を追うごとにどんどん心配そうに、
そして暗くなっていくんですもの!

写真はイメージです

※写真はイメージです

せめて配偶者として小さな笑いくらいは
差し上げたい、というのが本音でありました。

そしてこの後、治療・手術を受けた私は
諸般の事情ですっかり衰弱し
『面白いこと』を口にする余裕など
キッパリなくなってしまったのであった!

もう本当、苦痛はそれを笑えるうちが華よ。

皆様もお体にはお気をつけて。

そして腸捻転経験者の皆様、
あれは辛いですよね!
お互い再発がないことを祈りつつ
お腹に優しい生活を送りましょうね!


わたくし虫垂炎(盲腸)経験者なのですが
腸捻転・腸閉塞がバラなら
盲腸なんてパンジーですね、実際

いや、でも虫垂炎もあれ、我慢すると
どんどん怖い感じに悪化するらしいので
皆様本当お腹の痛みが半日以上続くときは
素直に病院に行きましょう

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