「あの人、おしゃれ過ぎ」丸の内のOLはブランド物の身体に夢中。 | 空想クソ野郎の話 一話完結!

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実在の人物・団体・事件等には一切関係ありません。


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 「あ、ほら、ほら、ね。カルティエの最新モデルだから、あれ」 
 暑さが残る皇居前。 街頭販売のタイ弁当を片手に、丸の内OLの二人が足を止めて見惚れる。
 「すごいね。かっこ良いっていうか、キレイよね」 
 「あ~。あれ、マジで欲しいけど、高嶺だわ」
 「橋本課長が、『ボーナスで買おうっかな。』っとか、とか言ってたらしいね」
 「えー!課長が~?無理、無理。それに、今期、良くなかったじゃん。うちの会社」 
 「あのラインだよね。ね、ね。素敵じゃない。見える?すっごい。きゃー。おしりがキュンって上がったとこにシルバーの鎖!ね、ね」
 「お昼時間なくなっちゃうよ。行くよ!」


 嬌声を後ろ背に、二の腕の日焼けも爽やかな、背の高い男。
 「まいったな」 トオルがつぶやいた。 
 スポンサーのワンボックスカーが待機している手前には、ディレクターが、丸めた台本で早く、早くと手招きしている。
 急ぎ足で二重橋を渡る。皇居ランナーの視線が残暑の太陽並みに熱い。 
 「やっぱり無理じゃないですか?ちょっと人目が凄いですよ」 と、トオル。
 センスの良い広告があしらわれたツートンカラーのワンボックスカーのそばで、ディレクターが目くばせする。「それがいいんじゃない。トオルちゃん。やっちゃおうよ」 
 「プロモ的には良いんでしょうけど。通報されたらって話ですよ」 トオルは形の良い眉をひそめる。
 「法律的には問題ない。前例もあるし。国会だってもめてるぐらいだから」 
 「今のうちってことですか。う~ん。複雑だな」


 皇居の反対側には国会議事堂がある。
 冷房の効き過ぎた別室で、しかし扇子をあおぐ偉丈夫がしばらく悩む。やがて、だみ声で吠えた。 
 「義務と権利はセットってか。そんな理屈は人間様にだけに通用するんだよ」 
 官制クールビズをきちっと着こなした官僚が静かに口を開いた。「前例のないことは政治判断での解決をお願いします。理屈が通ってないからこそ、ご相談申し上げているのです」
 「分かっとるわ。選挙民の総意を背負ったオレにしか判断できんわ。こんなことは」 
 「せめて、目からビームが出るとか、だったら良かったんですけどね」
 「お前でも冗談を言うんだな…」
 「予算委員会が始まります。総理、答弁書だけでもチェックを」


 トオルは靴も靴下も、ボクサーパンツも脱ぎ捨てた。
 周囲は突然のヌードショーに釘付けだ。 
 短く刈り上げた後ろ髪の首筋から、肩にかけての筋肉質なシェイプ。それでいて胸板がそれほどあるわけではなくマッチョな感じはしない。 
 背は広く、腹筋は見事に割れ、アバラ骨が確認できる程度に上半身が鍛え上げられている。
 足はすらりと長いが、やせ細っているのではなく、いわば陸上アスリートのふくらはぎだ。
 まばゆい限りの肢体に周囲から歓声が上がる。 
 先ほどのOL二人が夢中で人をかき分けつつスマートフォンを構える。タイ弁当は公園に投げ捨てられていた。  
 「いやー、あいつはホントに素直で、しかもタフだよな」 
ディレクターは遠くから騒ぎを眺めつつ、「本当の人間以上には絶対なれないが、もし人間だったら最高な奴だよ。あいつは」 そばにいたスタッフに目くばせした。
 「猥褻物陳列罪、ぐらいなもんだろ。俺らが問われるのは。安いもんだ」 
 スタッフが気を聞かせて氷の入ったダイエットコーラをディレクターに差し出す。「でもブランド物の彼に、基本的人権が認められちゃったらどうなるんですか?」 
 「無理だろ。なんだかんだ言って男の議員の方が多いからな」 
 「…?」 
 「嫉妬だよ。デザインヒューマンへのな」 氷をかみ砕いた。






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