2020 DTM Round 9 Hockenheim 

Hockenheimring 4.574km

55minutes+1Lap

Race 1 winner:Nico Müller(Audi Sport Team Abt Sportsline)

Race 2 winner:René Rast(Audi Sport Team Rosberg)

 

 2020年のDTM、元来短い期間で多くのレースをこなすDTMですが、今季はより短期間に圧縮された中であっという間に最終ラウンドです。

 まずお詫びと訂正ですが、前回の記事で「インディーカー方式の廃止」と書いてしまいましたが実況の聞き間違いで、実際は「グリッド スタートを廃止」でした。そして、その後の発表で、来季のレースのスタートが、現在使われているインディーカー方式のような接近した状態でのローリング方式になると発表されました。スタンディングより危ない気がするw

 

 そしてこのレースを前に具体的な内容がより明らかになり、使用する車両はGT3車両に決定。馬力をあげるとか色々言われていましたが、たぶんFIAやメーカーからお許しが出なかったんでしょう。その代わり、レースの上位3人にウエイト ハンデが導入されるとのことで、やってることは日本のSUPER GTのGT300クラスに近くなりそうです。

 

 土日2レースで55分+1周、ドライバー交代なし、といった基本はそのまま、そしてスタートはインディーカー方式、とこんな感じ。ただのGT3レースならいくらでもあるので、車両も変えられない、となると独自性のためにできることが限られていた、というのが実情ですかね。そして、サポートのイベントなどの発表と共に、将来的な展開として電気自動車によるレースの開催も表明されました。早速そのコンセプト車両がスタートに先立ってデモ走行で走り去っていきましたが、中継映像があんまり追いかけず、なんか音もなく走り去っていくだけで可哀そうでしたw

E-carの出力は1000馬力と発表されているので、猛烈な白煙とともにスタートしていきました

 

 ここで早くも話題脱線、この車両はDTMとシェフラーの共同開発した車両ということですが、DTMと電気自動車といえば、アウディーがグランツーリスモSPORTのゲーム内に収録するモデルとして収録した Audi e-tron Vision Gran Turismoがあります。

 この車は実際に走行できるデモ走行車両も作成されていますが、この実車モデルはDTMのシャーシを土台にしており、そういう点で今回のE-carとなんだか親近感も出てきます。見た目はフォーミュラEのサポート レースとして計画されたロボ レースの車両に似た印象を受けましたけどね。

 

 土曜日のレース1、PPはレネ ラスト、2位にニコ ミュラー。ラストはミュラーの前でゴールすればタイトルはほぼ確実、万一この2人が1位-3位の終わり方なら、日曜日を待たずにこのレースでタイトル確定です。

 大事なスタート、ミュラーはターン1で並びかけてラストの懐へ、いかんせん中速コーナーな上に外側も舗装されていてトラック リミットが無制限状態なので、ミュラーはラインを残さず、ラストもそれならコース外から行ってやろう、という感じ。しかしラストは完全に4輪でジャンプした形となってしまい、ミュラーが先行します。そして後方では3台が絡む事故があり、ハリソン ニューエイとマルコ ビットマンの2台がバリアに刺さって0周リタイア。SCとなります。

 6周目、残り44分ほどでリスタート。レース時間は55分+3周へ延長。リスタート2周目にDRSが解禁されるとラストは早速使いまくって攻めまくり。9周目のヘアピン手前でミュラーをかわします。

 ミュラーも負けじと13、14周目に立て続けにDRSを使って勝負しますが、ラストがいずれもインを守って接触しつつ守るリプレイのような展開。昔に比べれば小さな空力部品は少ないのでそこそこゴツンと横同士当たってるんですが特に何も飛び散りません。2005年ごろの花魁フィン時代ならバリンバリンに壊れてただろうなあ(*'▽') GT SPORTなら両方ともミュラーに1秒ペナだなあ(;・∀・)

 

 この後ろの3位争いもし烈で、ジェイミー グリーンとシェルドン ファン デル リンデがハゲしい争い。16周目にファンデルリンデが先にピットに入ります。しかしコースに戻ると、彼の前にはロビン フラインス。フラインスは10位あたりを走っていて、7周目にさっさとピットに入ったドライバーです。

 続く17周目にミュラーとグリーンが入り、18周目にラストもピット。ところがここでラストは右後輪を外すのに手間取って2秒ほど余計にかかってしまい、これでミュラー、グリーン、フラインスの3人にまとめてかわされて4位に落ちてしまいました。

 しかしラストの勢いは相変わらず。22周目にグリーンをかわして2位まで戻ると、3.5秒あったミュラーとの差をDRSを連発しながらあっという間に追い上げ、28周目にDRSとP2Pの全部乗せで再度トップに戻ります。翌29周目にミュラーも反撃しますが抜けず、その直後にティモ グロックのコース オフにより2度目のSCとなりました。

 32周目、リスタートをこなしたラストでしたが、ミュラーがついてきます。時間が0となって残り3周、ここでミュラーがDRSとP2Pを使ってヘアピンでラストをかわしまたもやリード。ラストは最終周のここでツールを使って追い抜けば再々逆転可能ですが果たして結果は。

 最終周、ラストは抜くためにはターン2で真後ろにいたいところでしたが、ターン1でタイヤ半分ぐらい縁石に乗りすぎた印象で、パラボリカ~ヘアピンで仕留めきれず!逆に後ろにいたグリーンになぜか小突かれるw その後も重圧はかけていきましたが抜ける場所は無く、ミュラーが逃げ切ってタイトル争いを翌日に持ち込みました。

 レース後のラストのコメントから明らかになったのは、彼が周回数を勘違いしていて、最終周に仕掛けようと思ったらチェッカーだった、ということでした。ただ、依然13点のリードがあるので致命傷にはならないでしょう、いや、これで致命傷になったらあまりに残念すぎるぞ。。。

 

 

 そして決戦の日曜日・レース2。ラストはPPを獲得、ミュラーは予選4位となり、両者の差は3点開いて16点。ラストが5位以内なら無条件でチャンピオンが確定します。本日もE-carが発進するもやっぱり中継映像がターン1までしか追わない、もっと見たいのに(´・ω・`)

 

 スタート、2位のロッケンフェラーが好発進を見せてトップへ、ラストが2位、ミュラーも1つ上げて3位になります。直接対決、ですが点差を考えるとこれではミュラー的にはお手上げです。

 3周目、DRSとP2Pを使ってラストがロッケンフェラーを攻略。ロッキーは気を遣ってる気がするんですが、その割にラストは寄せるは絞るはなんか妙に手荒です(´・ω・`) あとワイパーの取り付けが緩いのか妙にラストだけブルブルしてます。まさか速さのヒミツはこれか!?

やたらと寄せて抜いて行くラストさん、ゾーンに入ってますね^^;

 

 8周目、ミュラーもロッキーをかわして2位へ。争ってる人に挟まれてるのも気を遣うのでホッとしてるかもしれません。この後DRS/P2Pを使ってミュラーはラストの1秒以内にまで接近しましたが、この後は回数を温存したのかタイヤのオーバーヒートか、再度2秒にその差が広がって行きます。

 

 14周目/残り33分で今日もミュラーが先にピットへ。チームの予想では残り23周。ラストが次の周に反応してくるぞ、と伝えますが、ラストは安全策でステイ アウト。そしてミュラーは「プッシュ トゥー パスが使えない」と無線で訴えています。ひょっとすると追撃のペースが鈍った段階で既に機能しなくなったのかもしれません。

 

 ラストは17周目にピット、残りは29分。既にピット内で「ミュラーにはアンダーカットされる」と伝えられており、その通りこれで実質的トップがミュラーになります。ラストにとってはチャンピオンを獲るなら2位でも問題ないわけで、タイヤが壊れて2ピットして入賞できないとか、いらない問題を避けるにはこれでじゅうぶんです。SCリスクを考えたら怖い気もしましたけど。P2Pもエンジンの負担なので無理に使わない方が良いでしょうね。

 

 履歴が3周新しいタイヤで6秒ほどの差をどんどん詰めたラストは24周目に追い抜きツールでお手軽リード チェンジ。しかしこの頃、ラストのピットでの動きが審議対象に。ジャッキが上がっている状態で後輪を思いっきり空転させたことに疑義がもたれました。万一ドライブスルーなんかのペナルティーならチャンピオン争いに大惨事でしたが、審議結果は黒白旗。警告で許してもらえました。

サイドドラフトを使って抵抗できるようなレベルの速度差ではない模様

 

 その昔JGTCの時代に、どの車だったか忘れましたがクラッチが壊れてピット作業後の発進ができそうもないので、オフィシャルに許可を貰って、路面に水を撒いて摩擦係数を減らした上で、空転させてからジャッキを落として回転数を保って無理やり発進したことがありましたね。知ってる人は相当古い時代からのGTファンですw

 

 映像を見たところ、ミュラーはP2Pの残数が減っているので使用はできていると思いますが、「タイヤが終わった」ともはやラストに対抗する余力無し。Class 1車両最後のレースなので派手に壊していただいても構わないんですが、淡々と16台全員でレースを進めています。(失礼)

 

 いよいよ最終周、例年なら最後はスタンド前でものすごい花火が出ますが、今年は無観客だからそれもなく、ちょっと寂しい中ラストがトップでチェッカー。DTM3度目のタイトルを獲得しました。いやあ、シーズン中盤では今年はラストのシーズンではないかなと思ったのに、最後の6戦で5勝、信じられない勢いでした。

最終的な選手権順位はこうなりました。上位3人だけ異様に点数を稼ぎました。BMW勢で最上位がグロックというのはちょっと意外な感じがします。表彰台は2位が1回あるだけでしたが、無得点が3レースだけと堅実に加点したのが良かったみたいですね。とはいえアウディーと正面からまともに戦って勝てたレースがBMWはあまりに少なすぎました。

 

 これでClass1規定でのレースは幕を閉じることになりました。つい1年前、ホッケンハイムのレースにGT500の3台を混ぜていただき、日本でも交流戦をやって期待が高まったのに、たった1年で、、、という思いです。ただ、ホンダはF1からいきなり撤退しましたから、アウディーの突然の撤退と理由付けを、少なくともホンダは全く悪く言えません。

 

 私はたぶん2003年の終盤あたりからDTMを見て来たと思いますが、独特の規則と文化が好みでずっと見てきましたが、GT3だけのレースって実はそんなに興味が無いため、来年見るかは不明です。ドライバーに対する思い入れはあるんですけどね。電気自動車のレースになったら間違いなく見るんですが。

 

 ひとまずDTMの1つの時代の終焉、ということで、長年楽しませていただきありがとうございました。