NASCAR Cup Series

Autotrader EchoPark Automotive 500

Texas Motor Speedway 1.5miles×334Laps(105/105/124)=501miles

competition caution on Lap25

winner:Kyle Busch(Joe Gibbs Racing/Skittles Zombie Toyota Camry)

 

 NACAR Cup Series、プレイオフRound of 8 第2戦のテキサスです。この週末はお天気が悪いテキサス。なんとレースは順延に次ぐ順延でえらいことになりました。おかげで、普段なら日本時間火曜日21:00にアップされるレース動画が土曜日になり、なぜか視聴可能にならず削除扱いになっていて、実際に見れるようになったのは日曜日でした^^;

 

 まず最初に問題が起きたのはレース前の車検。マーティン トゥルーエックス ジュニアはリア スポイラーに違反が見つかり、ドライバー/オーナー ポイント20点剥奪、罰金$35000、クルー チーフのジェームス スモールは出場停止、そして最後尾スタートとなりました。プレイオフ コンテンダーでポイントが接戦になっているトゥルーエックスにとって20点は大打撃です。代役のクルー チーフにはブレイク ハリスが就きました。余談ですが、テキサスに実家があるので、順延期間は自宅に帰ってたらしいですw

 

 既に小雨がぱらつく中、ケビン ハービックとジョーイ ロガーノの1列目でスタート。

 5周目、クリス ブッシャーがスピン・クラッシュして早くも1回目のコーション。さらに22周目にはJ J イェリーがリアを大破させるクラッシュ。元々左右非対称な形状で難易度が高い上に、低温、トラクション コンパウンド、小雨、練習無し、と難易度を上げる条件が揃っています。イェリーはリタイア、ブッシャーはこの潰れた車で310周して34位でした。

 

 NASCARは予定を切り上げてこれをコンペティション コーションとしたため各車ピットへ。給油のみ、右2本交換、左2本交換、と戦略がバラバラでレースの流れは一旦大きく切り替わります。

 28周目のリスタート、いきなりターン2でハムリンがラインを外して危うく事故りかけると、翌周、今度はリーダーのハービックがターン2で曲がり切れずバリアに強打。難しい条件に左側2輪交換でバランスが悪かったのかもしれません。これでハービックは緊急ピットし周回遅れに。

 これでリーダーは給油のみだったアレックス ボウマンとなりますが、車載カメラには次々と雨粒が。結局44周目に雨でコーションとなりました。ただ、とりあえず通常のコーション同様ピット ロードはオープンとなったのでここで各車ピット作業を行い、ここもまた戦略がバラバラ。さっきタイヤを替えていないボウマンはここで4タイヤを投入し、リーダーはクリント ボイヤーに。

 ピットからの情報では、カメラには雨粒は付いているけど、霧雨のような状態で地面が濡れているわけではない、とのことで、ひとまずジェット ドライヤーで乾かしながらコーションで様子見を続行しましたが、結局52周を終えたところで赤旗。翌日に、というのが月曜も火曜も繰り返され、水曜日まで順延となりました。雨によりレースが3日も順延されるのはおそらく史上2番目の長さです。

 1973年3月には、ブリストルのレースが順延されて、一旦よそでレースした後2週間後に戻ってきた、というおよそ信じられないレースがあり、それ以来の長さだと思われます。ちなみにこのレース、ケイル ヤーボローが500周全てをリードしてのポール トゥー ウインを達成したという意味でも信じられないレースでした。

 プレイオフではおいそれと中止にもできないのでこれは致し方ない順延。今年は緊急的な日程で水曜日のレースを何度もやってるので、そういう点では水曜日でもできる、というある程度の確証と経験があるのは足しになったかもしれません。

 水曜日、ハービック陣営は修復作業の続きからお仕事再開(;・∀・)そして、レースの途中ですが、この日ヘンドリック モータースポーツは、来季カー ナンバー5でカイル ラーソンを起用すると明らかにしました。88を5にリナンバーするんですね。とうとうラーソン復帰です、ていうかレースが順延したんだから発表はレース後までちょっと予定を伸ばすとかないんかい!( ゚Д゚)

 

 57周目、クリント ボイヤーとジミー ジョンソンの1列目で3日ぶりのリスタート。お客さんが少なからず今日もいます^^

しかし59周目に早くもアクシデント、マット ケンゼスが滑ってラインを外しハムリンが追突。押されたケンゼスが回ってダレル ウォーレス ジュニアを直撃しました。ケンゼスは大破、ウォーレスもリタイア。ハムリンは大きなダメージではなさそうですがノーズに穴が開きました。3日間レースするのを待って3周でリタイアとか・・・

濡れた芝生に突っ込むと大惨事になります

 

 ケンゼス車が大量の液体をピット ロード上にばらまいたためなかなかピットはオープンにならず、ちょっとコーションに時間を食いました。上位勢はステイ アウト、このコーションでフリー パスを得たハービックは万全の整備を整えてピットを後にします。ノーズの穴をふさぐテープを貼るためピットに入ったハムリンとリスタートでご近所になりそう。

 

 69周目、ボイヤーとトゥルーエックスの1列目でリスタート、外からトゥルーエックスが前に出るかと思いましたがギリギリボイヤーがリードを維持します。ここからようやくレースが落ち着いて流れるかな、と思ったら、今度はデブリーにより77周目にコーション。なんかもうこのレースステージ2までで終わりでも良い気がしてきたw

 

 82周目、さっきと同じ1列目でリスタート、トゥルーエックスが今度は2周にわたって食い下がりましたがやはり抜けず。いずれの攻防でも後ろにエリック ジョーンズがいたんですが、ジョーンズはトゥルーエックスを押してあげる気が全くないようですwこの2人はステージ終盤まで争いを続けましたが、ボイヤーが逃げ切ってステージ勝利。長い長いステージ1がやっと終わりました。

 ステージ2、またもや給油のみのボウマンを先頭にリスタート、2位争いがごちゃつく間にリードを築きます。何人かのドライバーは左前タイヤにコードが出るほどの摩耗が見られ、左回りでありながら左側のタイヤの摩耗が危なそうであるという情報が伝わってきます。キャンバー角の設定なんかにもよりますが、あんまり無交換で粘りすぎると壊れる危険性がありそうです。

 134周目、ちょっと不思議なスキームのジョーイ ゲイズがウイリアム バイロンに押されたようでスピンしでコーション。気になったので調べてみたら、このDonate Lifeというのは、臓器や角膜などの移植を行う人、日本でいうところのドナー登録する人を募り、それらを繋げて移植により人の命を救うことを支援しよう、という非営利団体だそうで、ボンネットの手形は、亡くなられた方からの移植によって命を救われた方々約200名の手形だということです。ゲイス自身、2011年に母親が突然の脳動脈瘤により亡くなり、その際に臓器提供を行ったことでこの活動と出会い、支援を行っているそうです。

 

 レースに戻ります。ここで先ほどまで2位につけていたライアン ブレイニーが給油のみで先頭でピット アウト。一方左2輪交換を選択したボウマンは、リッキー ステンハウス ジュニアと交錯してすぐに出られず大幅に順位を下げてしまいます。まだリード ラップ車両がかなり多いのでどうしても短時間の作業には交錯のリスクが付いて回ります。

 

 139周目のリスタート、またもや外側先頭リスタートになったトゥルーエックスですがやっぱり抜けず(´・ω・`)そして中継映像では、オースティン ディロンが右手を伸ばしてNACAダクトの開閉装置を動かし、ターンによって開閉して僅かでも速く走れるように『可変空力デバイス』として使用している様子が解説されます。なんという細かな努力、そしてなんとアナログ、それを何百回も続ける気なのか( ゚Д゚)

 

 156周目、トゥルーエックスは引き続き安定して速いようで、ここでブレイニーをパス。この後もこの2台がレースを引っ張りますが、カイル ブッシュが意外と言うと失礼ですがこれに続き、この後ブレイニーをかわして2位に浮上します。

 ステージ残り35周、ハービックがバイブレーションを訴えて緊急ピット。どのみちこのステージは全員1ピット必須なので、今すぐコーションが出なければここは最低限の損失で済みそうですが、交換後のペースは中古タイヤのトゥルーエックスと同等かちょっと遅いぐらい。タイヤの履歴差がタイムにあまり影響していない=燃料がある限り走り続けるレースです。

 ステージ残り15周、ブレイニーがピットに入るとこのあたりから上位勢が続々とピットへ。すると、コース上でトゥルーエックスはガス欠症状が出たようで急失速し、なんとカイルが労せずしてリーダーに。ピットでも給油のみを選んで、そのままステージ2を制しました。とはいえ、彼にとって欲しいのは優勝のはずなので、ここは4タイヤ入れた方が良いような気がしました。

 そしてコンテンダーではチェイス エリオットに致命的ミス、給油のみでピットアウトしたものの、バイブレーションを感じて再ピット。外したタイヤを見てみたら

右リアが崩壊寸前でした。これで周回遅れになったチェイス、結局20位に終わりました。他のカテゴリーだと外したタイヤはすぐ回収されて隠されてしまうので、もちろんNASCARでも外したタイヤはすぐに削ったりして情報収集はされるんですが、それでもテレビ局が堂々とタイヤを接写できるってかなり珍しいなといつも思いますね。

 

 

 カイルとボイヤーがステージ間コーションをステイアウト、トゥルーエックスら多くのドライバーは燃料だけや2タイヤ交換を行って始まったファイナル ステージ。カイルがボイヤーを制してリードを保ち、この後しばらく0.5秒程度の間隔で走り続けます。トゥルーエックスはリスタート後の混戦を抜けて3位に戻しますが、カイルとは7秒近い差にまで拡大していきました。タイヤの差がラップ タイムに大きく影響していないことが分かります。

 

 ステージ残り78周、ボイヤーが早くも燃料切れでピットへ。これではコーションが連発しないと最後まで走り切れません。ボイヤーの2周後に給油しているカイルもちょっと心配なところで、燃費走行をしています。作戦失敗か!?

 なんとか残り66周までもたせてピットへ向かい4タイヤと給油。きっちりと燃料を補給しきるため、普段ならドカンと落とすジャッキをそーーーっと下ろす徹底した燃料対策を行います。一方同じころ、クリストファー ベルがものすごいペースで追い上げて自力で3位まで浮上。トゥルーエックスまで約1.3秒と面白い位置につけます。この後この2台もピットへ。4タイヤ交換でカイルを追います。

 ジミー ジョンソンは今日そこそこ良い調子でしたが、エンジンに問題発生。ヘンドリックのエンジンは先週のカートに続いてのトラブルですね。ジョンソンは今回特別スキーム、19歳の大学生・ノア "レフティー" スウィートというジョンソンのファンの人がデザインしたものです。

 スウィートは14歳の時からジョンソンのファンで、ゲーム等で車両のスキームを作る、我々の言い方だと”リバリー職人”的な人のようです。Leftyというハンドル ネームで活動していたんですが、このパンデミックと差別反対運動で時代が動く最中の6月、彼はLGBTQへの理解を深めようと虹色のNo.48のオリジナル スキームを発表。これが俗に言う”炎上”したらしく、個人情報が晒されるなどの被害に遭いました。ただ、SNS上から彼が消えると支持する声も増え始め、そしてそれら一連の騒動がスポンサーであるAllyの目に留まって、最終的に実際のジョンソンの車両のデザインをする、という夢のような展開に繋がったそうです。こういう動きがNASCARらしいなと思いますね。

 

 おっと、ただでさえ長いレースで2回も話が脱線してしまいました。見た目上ボイヤーがリーダー、ただコーションがなければ燃料が足りないので実質カイルがリーダー、トゥルーエックスがじわじわと追い上げます。しかしトゥルーエックスの真後ろにはベルが接近して攻撃。トゥルーエックスは後ろを気にしつつ前を追います。どっちもチームメイトなのに、コンテンダーが苦しめられてる構図ですw

 

 カイルは徹底して燃料セーブを言われ、周回遅れと直線で出会えばとにかく僅かでもドラフトを使って燃料を温存。ちょっと速い周回遅れ・ハービックを見つけたら、2周ほど引っ張ってもらって稼ぎます。クルー チーフのアダム スティーブンス、スポッターのトニー ハーシュマン、双方からトゥルーエックスとの差、後ろにつくかどうか、等細かい指示を受け、1周、また1周と周回を進めて行きます。

 トゥルーエックスは1秒差まで追いつき、燃料が厳しい相手なら一気に食いに行くかと思われましたが、今回はお互いにピットで4輪交換しておりほぼタイヤの差は無し。ターンではカイルも非常に速いようで、追い上げたいけど後ろにつけない展開になります。

 

 そしてとうとう最終周、カイルは最後まで燃料セーブを言われ続けましたが、周回遅れを丁寧に利用してさばいてトップでチェッカー、もう今季の勝利はないんじゃないかと思われたところから蘇り、一人燃費レースを支配してカップシリーズでの16年連続勝利となる通算57勝目を手にしました。16年連続勝利はリッキー ラッド(1983~1998)、ラスティ― ウォーレス(1986~2001)、ジミー ジョンソン(2002~2017)と並ぶ歴代3位タイ。上にいるのは17年連続のデービッド ピアーソン(1964~1980)、18年連続のリチャード ペティー(1960~1977)だけです。

さすがは名クルーチーフ、レース後のパフォーマンス用にちゃんと燃料残してあるやーん

あ、ビクトリー レーン行く分は残ってなかったわ

 

 戦略的にはトゥルーエックスに合わせて201周目に給油+4タイヤでステージ間コーションに給油、ないしはステイ アウトがセオリーだったと思いますが、全然タイヤが減らない状況でとにかくクリーン エアーを求めたことが幸いしました。とにかく一丸となっての燃料セーブが素晴らしかったです。カイルの優勝と言えば客席からのブーイングも風物詩ですが、拍手と歓声に混じって聞こえた少しのブーイングもなんとなく愛を感じましたね。

 

 で、プレイオフ争いはというと、ノン コンテンダーのカイルが勝ったために今回進出を確定させた人は無し。

 こうなりました。チームとすればカイルが勝ってトゥルーエックスが落ちるのはなかなかに難しい状況でしたが、そもそも20点減点されたのは自分たちのミスでしょうからそこは仕方がないところです。と言っても20点足してもまだ全然足りてないわけですが^^; ただ、次戦のマーティンズビルはトゥルーエックスが現在2連勝中と望みはあります。仮にトゥルーエックスが勝てば、ブラッド ケゼロウスキーとハムリンは今2点差ですから4番目の枠が激戦必至。

 ペンスキーも基本的にマーティンズビルは強いので、ケゼロウスキー自身も勝てるドライバーですし、既に進出を決めているロガーノ、ブレイニーは勝てばチームの助けになります。とか言っててカートが勝ったりなんかしたら面白いなと思いますがw

 

 次戦マーティンズビル、いよいよチャンピオンを争う4人が決まります。中3日のレースです!