NASCAR Cup Series

Hollywood Casino 400

Kansas Speedway 1.5miles×267Laps(80/80/107)=400miles

competition caution on Lap25

winner:Joey Logano(Team Penske/Shell / Pennzoil Ford Mustang)

 

 

 NASCAR Cup Series、プレイオフはいよいよ第3ラウンド・Round of 8まで来ました。ここからの3戦の結果で、最終戦でチャンピオンを争う4人が決まります。初戦は1.5マイルのカンザス、標準的なDシェイプで、標準的なステージ周回数の割り振りの400マイルです。標準的では無かったのは気温で、決勝開始時で45℉=約7℃とかなり寒い中でのレースとなりました。ゾルダーより寒いじゃねえか( ゚Д゚)

 

 今季限りで引退を表明したクリント ボイヤー。カンザス州は出身地でありこれが最後の凱旋レース。敬意を表してパレード周回では先頭を走ってNASCAR全体でボイヤーに敬意を表します。

14番を表現したボイヤーの応援団でしょうか。寒いせいもあって非常に覇気が無いw

 

 チェイスエリオットとジョーイ ロガーノの1列目でレース開始。チェイスが1台前に出る形で、その後ろで2ワイド、3ワイドで序盤から争いが展開されます。気温が低いとエンジン出力とダウンフォースが増加するため基本的に通常より車は速く走ることができます。空気抵抗が大きくなるので、ドラフティングの影響も相対的に強くなりますね。

 徐々に争いがばらけて単独走行の人が増えてきたところで25周、コンペティション コーションのお時間。ウイリアム バイロンが2タイヤ交換、コンテンダーではカート ブッシュが速度違反のペナルティー(´・ω・`)

 

 31周目にリスタート、バイロンはすぐ抜かれてしまい、ケビン ハービックがチェイスとの争いを制してリーダーになります。チェイスは初めて他車の後ろを走るので、ここでのバランスが重要です。そして現地情報では、やはり想定外に寒い中で何の練習もしてないため、グリルに貼るテープの量がピット作業で大事とのこと。これからどんどん追加されていく可能性が高そうです。

 

 ハービックは一旦1秒ほどの差をつけたものの、ステージ終盤に向けてチェイスが接近。しかしチェイスは無線の故障で、チェイスの声は発信されている一方、チェイスに耳には誰の声も入ってこない一方通行状態だそうです。とりあえず今ハービックと争うぶんには何とかなっているようで、この後64周目にリーダーに。ハービックはルースがきつそうで、結局ステージ7位まで滑り落ちてしまいました。ステージ終盤はブラッド ケゼロウスキーが追い上げを図りましたが、チェイスがステージ1を制しました。

 チェイスのトラブルは装着しているイヤー プラグが要因かもしれない、とステージ間コーションでチェイス陣営は新しいものをチェイスに渡して、あとは自力でコーション中に取り替えてもらうことにしましたが解決できず。デニー ハムリンが最速でピット アウトし、ステージ2が始まりました。

 

 ステージ2のリーダー争いはハムリンとライアン ブレイニー。ブレイニーはペースでは上回っているようですが、乱気流と周回遅れの運に恵まれずハムリンを抜けないままステージは折り返しを迎えます。

 123周目あたりからピット サイクルとなり、ハムリンとブレイニーは同時にピットに入りましたが、ブレイニーはここでも出入りする車が邪魔になって損をしてしまい、ハムリンがピット前よりも差を広げてステージ後半へ向かいます。

 数台がコーション待ち作戦でピットに入らず粘ったものの、何も起きそうにない感じで進んでいた144周目、ターン4でマット ケンゼスとエリック ジョーンズが絡んでケンゼスがクラッシュしコーション。マット ディベネデトーを筆頭にして数台が賭けに成功しました。

 チェイスは無線が聞こえないため作戦の指示が全く通じず、アラン ガスタフソンが必死に9回も「ステイ アウト」と言ったものの入ってしまい、仕方なく2タイヤ交換(´・ω・`) これでステイアウト組6台の後ろからのリスタート、ディベネデトーは4タイヤ交換と給油で4列目を手にしました。

 

 ステージ残り11周のシュートアウト、ステージ勝利争いはハムリンとハービックの接近戦となり、車載映像でお互いの車の動きが良く分かる臨場感あふれる映像。ハムリンは出口でタイトなようですが、ハービックはドラフトに入っているのにフロントストレッチで捕まえきれず、結局ハムリンがステージ2を制しました。トヨタのエンジン、ここにきて何かちょっとアドバンテージがあったりするのか?と思いましたが、その後のレースの様子を見ていると、寒い条件でパワーが出て、結果的にエンジンが回りすぎてしまい、パワー バンドを外れてしまってそれ以上回らなくなって伸びない、ということかもしれません。

 

 ステージ間コーションではロガーノとアルミローラが2タイヤ交換でハムリンより先にピットを出ます。そしてカイル ブッシュはステイ アウトを選択。さてさてCMへ

って誰のタイヤや!w 映像でタイヤが転がってるのが奥の方に見えていましたが、ペナルティーの記録を見たら、どうやらマイケル マクダウルのタイヤだったようです。

 

 ファイナル ステージ、カイルは外ラインを選択して、アルミローラに押してもらいながら好発進、かと思いましたが、押されすぎてちょっとターンでアクセルを戻してしまったのか、ロガーノが楽々とカイルをパス。カイルはこの後なんとか落ち着いた展開に持ち込みましたが、カイルに詰まったアルミローラはあっという間にトップ10圏外へ落っこちてしまい、2タイヤ作戦台無しのひどいリスタートになってしまいます。そして170周目にそのロガーノをハービックがかわしてリード。

 

 一方ハービックの宿敵ハムリンはというと、リスタートが決まらず混戦の中にいましたが、CM中の178周目にカイルとの5位争いでウォールに当たってしまい、右リアを傷めて緊急ピット。出口でタイトな中で踏むのが早すぎた上に、真後ろにカイルがいてダウンフォースがすっと抜けてぶつかった、という感じの当たり方でした。

 

 トゥルーエックスは大事な大事なグリルテープがなぜか貼っても貼っても剥がれてすっ飛んでしまうという、間抜けだけど結構致命的な問題に苦戦。しかしもっと深刻だったのはカートで、194周目に出力低下を訴えて失速。とりあえず走行しつつ、ダッシュのデジタル表示を色々いじって解決法をが探しますが解決しません。そして199周目、とうとうエンジンが壊れました。コーションです。

ペナルティーを克服してけっこういい感じで走っていただけに残念な結果でした。寒い条件で高回転踏みっぱなしになったことがエンジンに影響したかもしれません。

 

 不運にも、ハムリンは周回遅れで2位だったのでフリー パスを得られず。得たのはチームメイトのエリック ジョーンズでした。ただ、残り約65周、燃料的にギリギリ走りきれそうなタイミングのコーションなので、リード ラップ車両はみんなピットへ。ハムリンはウエーブ アラウンドすることができます。もちろん、この後ノー コーションだと燃料が足りなくてまた周回遅れなので、挽回には早い段階でのコーションが必須です。

 

 206周目、ハービックとカイルの1列目でリスタート。カイルが絶好調ならこういう時にリスタートで爆発的に速いものですが、インからリスタートして旋回速度が上がらず逆に順位を下げてしまいます(´・ω・`) ジョーンズはルース ウィールかリスタート後すぐ緊急ピットして、ハムリン的には「ほんならそのフリーパス俺にくれたらよかったやん」と思ったかもしれません。

 

 221周目、タイラー レディックがターン3からガリガリとウォールに当たり、ピットに入るためターン4で止まりそうなぐらい減速したため、危険とみなされてコーション。ハムリンには貴重なコーションとなります。

 

 リードラップ車は全員ピット、2位で入ったロガーノがハービックをかわし先頭で残り42周でのリスタートです。ロガーノはブレイニーを従えリスタートに成功。ハービックはロガーノを捉えたいのにブレイニーにエアーを浴びせられて2位争いに時間を費やします。ようやくブレイニーをかわすとロガーノとの争いとなりますが、後ろに付くもかわせない、序盤のvsハムリンと同じ構図。一時ケゼロウスキーもここに加わりましたが、展開は完全に2台の一騎打ちです。

 

 ハービックはロガーノをかわそうとするものの、接近するとダーティー エアーに阻まれてルースを出す繰り返し。周回遅れが味方して近づいても空気は敵となり一進一退が続きます。しかもやっぱりフロントストレッチで一伸びが足りない!

 だんだんとルースになっているのは車載映像から見ても明らかですが高度な争いは続きます。ロガーノはその時々で得意なラインを取ったり、ハービックにダーティーエアーを浴びせることを選んだりと翻弄。その間にアレックス ボウマンがこっそりと近づいてきましたが、ロガーノはミスなくリードを守り続けてそのまま優勝。思えば今シーズン、開幕から4戦で2勝していたハムリンですが、パンデミックによるシーズン中断以降ではこれが初勝利。ここ一番で力を出し、チャンピオンシップ進出を確定させました。

 今回は上位勢の車の仕上がりに極端な差は無かったように思いますが、勝負所で抜群のピット作業を見せて先頭でピットアウトさせたクルーの仕事ぶりが結果に直結しました。ダーティーエアーの影響が非常に大きく、前に出られるとなかなか抜けない、という展開でしたので、頭を抑えた効果は絶大でした。

 ロガーノにとってフェニックスは通算で見ればそれほど好相性のトラックではありませんが、春のレースで勝っているので、ハービックとすれば嫌な相手に進出を決められた、というところかもしれません。

 

 コンテンダーの順位は、2位ハービック、3位ボウマン、4位ケゼロウスキー、6位チェイス、9位トゥルーエックス。ハムリンは結局15位に留まり、カートがリタイアで38位でした。

 

1 Joey Logano win  
2 Kevin Harvick 4115 +41
3 Denny Hamlin 4094 +20
4 Brad Keselowski 4082 +8
       
5 Chase Elliott 4074 -8
6 Alex Bowman 4055 -27
7 Martin Truex.Jr 4051 -31
8 Kurt Busch 4009 -73

 

スタンディングスはこうなりました。ハムリンは大量のプレイオフ ポイントがありましたが今日は結構さを詰められた形。チェイスは先週勝って得た5点が効いて勝負権にいます。

 ところでそのチェイスですが、無線がほとんど機能していなかったことがレース後に議論を呼んだようです。実はNASCARの競技規則 20.12.7.2.h には

「競技中、同じカー ナンバーのドライバー、クルー チーフ、スポッターの間で車載無線通信機能が必要」という記述があります。つまり、無線は任意ではなく、安全上の理由を主として、『常に機能していなければならないもの』なのです。ラリー競技において、『2名の乗員』が規定されていて、コ ドライバーは単なる道案内の任意の存在ではなく、規則上絶対に必要なのと同じと考えればいいですかね。

 で、規則上必要なものが失われていたなら、NASCARはピットでの修復を強制させる必要があるんですが、結局そうはなりませんでした。この件に関してNASCARの競技担当上級副社長のスコット ミラーはレース翌日のインタビューで、

「彼らは無線でコミュニケーションをとっているように感じた。しかしレース後のインタビューを見ると我々は明らかに間違っていた。」

と釈明。レース中に、ペナルティーを言い渡す、アンダー グリーンでのピット、など、無線が無いことで生じる致命的な問題が起こらなかったことで、NASCAR側は無線に問題があること自体は知っていたものの、全く聞こえない状態であることについて認識ができず、そのままレースを終えることになった、というような話をしました。もし仮にNASCAR側がチェイスの無線を修復対象と判断していれば、強制ピットによりチェイスは少なくとも後方リスタート、場合によっては周回遅れになっていました。結果的に、ストレスの溜まる内容ながら6位にまとめ、致命的な問題を起こさう帰って来たのは幸運で、レース展開も味方したわけです。

 

 チェイスの方はオンライン取材に対して

「危険だとは思わなかったよ。正直なところ、考えもしなかった。全国でショート トラックのダート レーサーはスポッターなしで毎週レースしてるんだ。無線が壊れたから対処できないなんてのが分からないね」

 無線無しでもこんなに走れるんだな、と私は見ていて驚かされましたが、彼が必要だと思おうがそうでなかろうが、規則上必要とされているわけで、クラッシュが発生した際に、判断が遅れて危ないケースも考えられます。さすがにドライバーに「だから自己申告してレースを止めろ」とは言えませんし、それほど多く発生するものでもないと思いますが、何かの際に「あの時は修復気味は無かった、なぜ今回はあるんだ」と恣意的な運用に疑義がもたれては困りますから、NASCAR側としては何らかの対応が今後必要になりそうです。というか、NBCの放送を見ている限り、無線が全然機能してないのは明らかだった気がするんですが・・・

 

 チェイスはこの強運を活かしてチャンピオンシップ4に生き残れるでしょうか、次戦はテキサスです。