2020 AUTOBACS SUPER GT Round5 たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE

富士スピードウェイ 4.563km×66Laps=307.098km

GT500 class winner:DENSO KOBELCO SARD GR Supra Heikki Kovalainen/中山 雄一

 (TGR Team SARD/TOYOTA GR Supra GT500)

GT300 class winner:リアライズ 日産自動車大学校 GT-R 藤波 清斗/João Paulo de Oliveira

 (KONDO RACING/NISSAN GT-R NISMO GT3)

 

 SUPER GT第5戦、今季3回目の富士です。最終戦にもう一度登場しますが、そこでは全戦参加していればハンデは無し、一番ハンデがきつい状態での富士となります。曇っていてそこまで気温が高くない週末でした。

 

 予選は両クラスとも前回の第2戦の富士と同じ車がPP獲得、GT500はARTA NSX-GT、GT300はADVICS muta 86 MCです。GT500はNSXの後ろにカルソニック IMPUL GT-R、WedsSport ADVAN GR Supraと3メーカーが揃いました。ARTAは第2戦でPPスタートながら自滅、カルソニックは開幕から速さを見せながら結果が出せず、WedsSportは前戦に貰い事故で中破、といずれもチームとしてかなりため込んだものがあります。ハンデにより燃料流量リストリクターが絞られた車は見事にみんなQ1落ちしました。どうでもいいですが、今年のARTA NSXってフロントの塗り分けの問題で、顔つきがメガーヌトロフィーに似てる気がしますね。

 ADVICS 86も、第2戦はまだまだデータ不足もあってレースでは優勝争いに加われませんでしたから、今回こそは、と思っているはず。2位はやはり今回こそは、と思っているTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTの31号車。名前が長くて資料を見ないと単語の順番が覚えられませんw

第2戦の予選では名前表示の不具合にツッコミを入れましたが、今回はもちろん合ってます

 

 

 スタート、カルソニックがうまく加速のタイミングを合わせたようでターン1でARTAの横に並んで僅かに前に出たようにも見えましたが、ブレーキで頑張りすぎてハミダシソウル。ARTAがトップを守ります。そして中団ではCRAFTSPORTS MOTUL GT-RがRedBull MOTUL MUGEN NSX-GTを押して回してしまい、当たり所が悪かったのかGT-Rはボンネットが浮いて吹き飛んでしまいました。飛んだボンネットはコース上に落ちたので、GT300がスタートする前に即座にSCを入れておくべきだと私は思いましたがGT300も普通にスタート。ターン1を曲がるといきなり黄旗が振られて巨大な部品が落ち、破片が散乱、という状態で、GT300車両が通過したころにようやくSCとなりました。判断遅いよ・・・なおCRAFTSPORTS GT-Rはこれで冷却がダメになったか、車を止めて0周リタイアとなりました。

うっかり右を通ったグッドスマイル初音ミクAMGは落下物に驚いたことでしょう^^;

 

 GT500は4位スタートのリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが、ターン1でカルソニックに釣られるようにちょっとはみ出たものの、その勢いでWedsSportを抜いて2位となり、さらにタイヤの温まりが良かったのかダンロップ コーナーで外から豪快に抜きました。この数秒後にSCとなったので、彼らにとって即座にSCで無かったのが幸いした形です。

 

 5周目にリスタート。GT500はリアライズGT-Rが踏み出しでARTAのタイミングを外してリードをしますが、数周すると追いつかれて近い距離。GT300も86とプリウスが接近した争いで、ここにリアライズGT-Rが6位スタートから3位に浮上してきます。

 

 12周目、GT500のリアライズGT-Rはセクター3で思いっきりGT300に引っかかって翌13周目のターン1でARTAがトップを奪還。同じころ、GT300のリアライズGT-Rはプリウスを抜いており両クラスでリアライズGT-Rが2位。さらにGT300のリアライズは15周目にADVICS 86も抜いて先頭に立ちます。抜かれた側も、意地でもここで抜かせないぞ、というまでの感じでは無かったので、無理して抵抗しても直線でどのみち抜かれるから入られたら行かせてしまおう、という雰囲気ですが、リアライズがリードを広げていきます。

 

 イケイケな近藤レーシングと対照的に、悲しいお知らせが届いたのがチームインパル。1周目のSCボード掲示直後にターン13の進入でWedsSportを抜いていて、これによりドライブスルーのペナルティー。ただ多少この裁定に疑問があるのは、確かにドライバーはそれを見て守る義務がありますし、裏側でどういうやり取りがあってどういう運用なのかはもちろん分かりませんが、SC導入タイミング直後、それもやや視認しずらい位置で、事故の該当現場でもない箇所でのちょっとした抜いた抜かれたぐらいなら、レース コントロールからの入れ替え指示でリスタートまでに入れ替えたらそれで済む話じゃないのかなという気がしました。

 

 しかも電子ボードはSC表示がある一方、恐らく最初に視認するポストでは、SCボードは提げられた一方で、黄旗はまだ振り方がはっきりとしていない感じで、並走してアウト側に車両がいて右コーナーに目付けをしながらでは、先にアウトの車がSCに気づいて減速し抜いてしまうのは不可抗力という面もあるように見えました。もちろん実際の詳細な車両の動きは分からないので、実際はそういうレベルではなく守って当たり前、なのかもしれませんし、「入れ替えなさい」と言われてたのに「いや、俺たちは間違ってない!」と言って聞かなかったのなら分かりますが。。。

 GT500はARTAとリアライズが1秒前後の差のまま進行していましたが、25周を終えてリアライズがまずピットへ、それを見てかARTAが翌26周目に入ります。約5秒差の3位だったDENSO KOBELCO SARD GR Supraも同時に入り、トップ3のピットはこれであっさりと終了します。

 

 リアライズはARTAを狙いたいはずが、作業時間がやや長かった上にGT300の大集団に埋まったっぽくてRAYBRIG NSX-GTにオーバーカットを許すことになりました。RAYBRIGはピット前はリアライズより12秒ほど後方の6位にいた車ですが、タイヤの熱入れがかなり早いようでリアライズはこれを抜けないまま1周してしまい、さらにこの2台がARTAに一緒になって追いつきます。ARTAは逆に熱の入りが良くないようです。。。

 ピットを終えた段階ではARTAとRAYBRIGの間にDENSOがいたはずなのにここにいないということは、実質トップはDENSOのはずなんですが、映像が全然捉えてくれない(´・ω・`) 今回録画で見たんですが、巻き戻して二度見してしまいました^^; さらに、この3台が争ったせいもあって、KeePer TOM'S GR Supraも彼らの前でピットを出て実質2位に急浮上します。KeePerもピット前はARTAの10秒後方、5位にいた車でした。アウト ラップのタイムがレースにかなり影響しました。

 オートスポーツwebの情報では、DENSOは対ARTAでアウト ラップで11秒も早く、翌周も2秒速かったとのこと。逆にARTAは元々タイヤが発動しにくいセットな上に、長い後半のレース距離を考えて固めのタイヤだったようで、極端にアウトラップの遅い車になってしまいました。

 

 一方GT300は、リアライズGT-Rが着実に差を広げ、埼玉トヨペットGB GR Supra GTがロング ランで速くて2位に浮上、ADVICS 86は第2戦ほどではないもののやはりレースで後れをとりました。このあたりからGT300はピット時期と作戦がばらけるので暫し状況が分からなくなります。

 

 GT500、リアライズは33周目にようやくRAYBRIGを抜きます、翌周ARTAも抜いて行きましたが、DENSO的には「よくここまで抑えてくれた」という感じかもしれません。そしてこの後ようやくアウトラップでDENSOがARTAを抜いたリプレイが出ますが「DENSOの方が1周先にピットに入っていて抜いた感じですかね」って、違う!w

 

 GT300はリアライズが盤石の4輪交換、一方LEON PYRAMID AMGがお得意の左2タイヤ交換でリアライズの前で復帰しますが、ピットを出た1周後、まだきちんとタイヤに熱が入っていない間に処理します。ところが悲しいお知らせ、この時ちょうどピットに入っていた埼玉トヨペットスープラがタイヤ無交換作戦発動!一気にリアライズの16秒前方で戻ってきました。ここからは4輪交換の速いGT-Rが無交換のスープラを追いかける展開です。スープラ的には絶対SCには出てほしくない展開です。

 

 GT500のリアライズGT-Rはようやく前を狙える体制が整ったのにここで悲劇が。ステアリングのトラブルだそうで、どうにかピットには戻ったものの、もちろん争いには加われません。これでARTAは前が開け、燃料流量を絞られているKeePerを抜けばペース的にはDENSOを追えそう。ところが、KeePerに追いついたところでARTAは抜くことができず延々とバトルになります。KeePerの平川 亮が上手い、スープラの直線が速い、という要素もありますが、ARTAはウイングを立ててレーキは少な目で前に荷重がかかりにくいようにも見えます。

 

 GT300ではリアライズGT-Rがスープラより1周で1~2秒速くてあっさりと追いついてしまい、GT500の50周目に先頭を取り返します。まだ15周はあるので、スープラはどこまで耐えられるかの持久戦、次に来るのはLEON AMG。左2タイヤ交換ではありますが、スープラより速いペースで走っています。

 52周目、ARTAはKeePerを抜けない間に追いついてきたWAKO'Sにズバッとダンロップコーナーで入られて4位に後退。しかしこの後戻って来た53周目のストレートでWAKO'SがKeePerに対してサイドドラフトをかけたため、KeePerはやや速度を失いました。これを利用してARTAはようやくKeePerを抜くことに成功。ただWAKO'Sには抜かれたままなのでARTAとしては3位のまま。WAKO'Sは12位スタートから驚異の10台抜き( ゚Д゚)

 

 GT300は残り5周、スープラにとうとうLEONが追い付いてスープラ絶体絶命。スタート位置から考えれば抜かれても利益はまだありますが、選手権を考えると行かせたくはありません。AMGは直線が遅くて1コーナーまでに前に出ることがどうやらできないようなので、吉田 広樹は必死で抑えます。必死で抑え続けて残り3周まで来ましたが、争っている間にARTA NSX GT3が追い付いてきて3台の争いになりました。ARTAは予選11位、早めのピットで、おそらく4輪交換ですがライフとしては結構使ったタイヤということになります。ARTAはヘアピンでLEONに仕掛けてサイド バイ サイド。ダンロップコーナーで抜いて3位になると、そのまま14コーナーでスープラのインにも滑り込み、ストレートでかわしていきました。この時少しサイドドラフトを使われたせいもあって、LEONにもかわされてスープラは4位に落ちました。

 

 GT500はそのままDENSOが逃げ切って優勝。チェッカー直前にGT300で5位のプリウスを抜きそうでしたが、プリウスもまた埼玉トヨペットスープラを追っていました。空気を読んだのかたまたまか、DENSOは最後にちょっと緩めてチェッカー。昨年のオートポリス以来の優勝を挙げました。あの時は雨が絡んでぐっちゃぐちゃのレースでしたが、今回は正面から勝負して力で勝利。ドライで正面からの勝負というと2018年のタイ以来ということになります。ピット作業~アウトラップの速さとその後の展開、全てがうまく噛み合っての5位からの逆転勝利でした。2人のドライバーとも素晴らしい走りだったと思います。最後はガス欠症状が出かけて危なかったということですが、大なり小なりそういうことはあるんでしょうね。

 64kgのハンデで2位に入ったWAKO'Sは今季3度の富士全てで表彰台、大嶋 和也/坪井 翔組は選手権でトップとなりました。76kgのハンデで4位となったKeePerの平川 亮/ニック キャシディー組が1点差で2位。前戦で優勝したKEIHIN NSX-GTの塚越広大/ベルトラン バゲット組は86kgのハンデ、唯一燃料流量を3段階絞られる状態でしたが、辛抱強く走って10位で1点獲得、選手権で3点差の3位です。

 

 スープラは台数が多いのもありますが、常に誰かしら優勝争いに絡んで簡単に他社に勝たせない体制が見事です。一方でGT-Rは終わってみたらペナルティーを受けたカルソニックが最上位、他の3台はトラブルとクラッシュで無得点と、ウエイトが相対的には軽い中でなお取りこぼしてしまっています。

 

 そしてGT300は最後全く映らなくなったリアライズGT-Rが優勝。チームとしてはGT500の方は悔しいレースでしたが、こちらで勝って一安心。藤波は昨年の富士500kmで、T-DASHランボルギーニGT3の第3ドライバーとしてスポット参戦し優勝していますが、実質初優勝と呼べる通算2勝目、前半担当でコース上でするすると順位を上げていき、リスクの少ない盤石のレースに大きく貢献しました。オリベイラはGT300では初優勝です。2位LEON AMG、3位ARTA、そしてDENSOの粋な計らい(?)でプリウスに追いかけ回されたスープラでしたが、なんとか逃げ切って4位でした。

 選手権ではLEON AMGの蒲生 尚也/菅波 冬悟組が唯一の全戦入賞継続で合計50点でトップ。数字上はハンデ150㎏という見たこと無い数字になりました( ゚Д゚) 2位がGAINER GT-Rの平中 克幸/安田 裕信組で41点、優勝したリアライズGT-Rの藤波/オリベイラ組が36点で3位に浮上です。選手権上位7台は90㎏以上のウエイト搭載となりますが、既に100㎏になっていてなお2位に入れるLEON AMGはやはり脅威です。車もタイヤも同じものを継続しているので、前年までの蓄積したデータを活用しやすい、というのは大きな強みですね。

 

 次戦は10月末の鈴鹿です。