【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】メロフェチ | シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you 島ちゑ

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シナリオ・センター大阪校代表取締役 小島与志繪 ペンネーム 島ちゑのブログです。

 ご近所の路地裏にお家の前で百合の鉢植えを五十鉢ほどみごとに育てているおじいさんがいらっしゃいます。空気がしめり気をおびるこの季節、草花は嬉しそうに、その命をプレゼントしてくれているよう。百合は満開を迎え咲きほこっています。昨年は山吹色が多かったのが、今年はえんじ色。お陽さまを滋養としている花びら、めしべおしべが力を与えてくれます。

 ドラマ的空想をはたらかせています。初恋の女性が百合子さん? すると奥さまにちょっとうしろめたいのかしら? それとも愛妻はお亡くなりになり、百合さん? 申し訳ないのですが、こんな空想をしてしまっています。

 センターのみんなで足しげく通った中料理店『蓬莱閣』店主のジャッキーが百合族のお話をしていたのを思いだしました。中国から日本へ渡ってきて料理人の修行をなさっていた少年時代。恐る恐るワクワクとポルノ映画館の玄関口に並べられたスチール写真を見るのを密かな楽しみにしていたら、薔薇族バージョン、百合族バージョンがあり、「興味なかったです」との満面の笑顔。でも、むかしのポルノ映画は腕を凌ぎ競いあう名作が多かったですね。それこそ観客へのサービス精神、エンタティメント魂。

 倉田先生の師匠のメロドラマの巨匠、木村恵吾監督は脚フェチと伺いました。作風で多かったのが、京マチ子さん演じる踊り子の脚線美。カメラは舐めるように太ももから足首への螺旋ラインを撮ります。ディートリヒの『嘆きの天使』のごとく、その脚は石部健吉のおじいさんをメロメロに惑わし破滅へ追いやります。

 恋愛ものの貫通行動は執着心。ほぼフェチで執着してゆくのが人間の業なのでしょうね。それも一っ処だけへの憑かれよう。他の動物になく、人にだけあるもののなかのひとつなのかもしれません。