5月7日(木)


今回は、太郎君の療育に関するお話。


3月から、太郎君は土曜日にH先生という日本人のコミュニケーション・セラピストの所に通い始めました。H先生は1960年代にアメリカに留学されてから、臨床教育一筋、引退後は海外生活でストレスを抱える日本人の子供たちや、太郎君のようにハンディを持つ子供たちのセラピストとして活躍されていて、このあたりでは知る人ぞ知る有名人です。太郎君のお友達のY君のママから紹介を受けました。Y君のママは、日本に帰ればバリバリのキャリアウーマンですが、H先生の厳しい指導に泣かされることも多いのだとか。ドキドキのスタートです。

とはいうものの、scamamは土曜日は花子ちゃん担当なので初日はパパが太郎君を連れて行ってくれました。ところが、太郎君、1時間の間、なかなか先生に心を開こうとせず、パパのお膝から離れられなかったのだとか。散々だった、とパパはがっかりして帰宅しました。太郎君にとっては、カリフォルニアのジョニーと同じく、にっこりする笑顔に「かわいい!」と反応してくれない数少ない年配女性の一人だったらしく、ずいぶんへそを曲げた様子。そんなんじゃ、セラピーにならないわ、と、翌週はscamamもついて行くことにしました。

2週目は、比較的すんなりとH先生の前の席に座った太郎君ですが、そのあとが大変でした。H先生が示すカードにちゃんとした反応をしません。カードには絵とその名称がひらがなで書いてあって、scamamが家で見せれば自慢そうに読み上げてくれるのに、H先生がいくらやっても、{あ~」とか「う~」とか全然関係のない音を発し、最後には「ちがう!」「ちがう!」を繰り返すようになりました。H先生は、「お母さん、これは戦いですよ。太郎君は私を試していますからね。私は負けませんっ!」と、太郎君の肩を両手でむんずとつかみ、「太郎君、何が違いますか。違いませんよっ。」と揺さぶります。太郎君は、「ちがう」というのを止めましたが、今度はぷいっと横を向いたままふんぞり返ります。わが息子のこんな反抗的な態度を見たのはこれがはじめて。反抗的な横顔が妙に大人っぽく、男っぽくって、あれっ、かわいい、かわいい、って言ってたけどこんな一面もあるんだと驚きました。先生は、「これだけ反抗していても、太郎君は席を立ちませんね。やらなきゃいけないことはわかっているんですよ。」と徹底的に付き合います。1時間近く反抗し続けた太郎君は、最後に熊さんのクッキーをもらって機嫌を直し、大好きな恐竜のカードを「きょおーりゅー」と読んでウァッと泣き出して、先生に抱っこしてもらって終わりました。先生は勝利の満足顔です。すばらしいお手並みでした。そして、今まで、我が家がいかに太郎君を赤ちゃん扱いしてきたか、またその場しのぎの対応をしてきたかについて、厳しいご指導がありました。

翌週からは、太郎君は打って変わって優等生。飲み込みが早い、こういう子にはどんどんやらせなければいけないのに親がやることをやっていないと、また厳しいお叱りがありました。

太郎君にも、花子ちゃんにとってのG先生のような先生が見つかってよかった。scamamは泣きませんよ。G先生に叱られ慣れていますから。


太郎君には、もう一人新しい先生が現れました。特別支援学級の担任の先生が一人入れ替わったのです。今度の先生は日本で最先端を行く療育カリキュラムが整備されていると定評のある学区からいらっしゃいました。どんな先生かとわくわくドキドキで授業参観に伺いました。太郎君は、認知能力の問題から言葉の発達が遅れていますが、言葉の発達を刺激する方法として、カリフォルニア時代にはicon(絵カード)、日本では望み発達クリニックでマカトン法という手話が使われていました。そして今いる東海岸の街のスピーチセラピーでもやはりiconが使われています。iconも手話も、対象物を抽象化することによって言葉への転換を促すという意味で、目的は同じ、でも、日本で3ヶ月通った小学校でも、こちらの特別支援学級でも日本の学校の先生たちは、このような手段をお使いになっていませんでした。そこで、街のスピーチセラピストがiconを山ほど作ってくれて、これを日本の学校でも使うように、と持たせてくれたのですが、その使用方法についてまた最初からお話しなければいけない、ご理解いただけるだろうか、と少し不安もありました。ところが、びっくり、新しい先生は、自前のiconをリングで束にしたものを片手に握り、小気味のいいタイミングでそのiconによる指示を出していきます。iconはものの名称だけでなく、「座る」とか「書く」とか「読む」といった動作もとても抽象的な図柄にされているのですが、ローカルのスピーチセラピストが用意したものと酷似したものを使っていらっしゃいます。さらに、iconと同時に手話もお使いになっている!そして、scamamが話し出す前に、「お母さん、手話もカードもね、目的は同じですからね、僕は両方使うんですよ!」って。こんな先生もいるんだ、って、涙ちょちょぎりそうになりました。その後いろいろとお話していると、そのご見識、ご経験とも敬服するものばかり。この先生をこれから2年間、太郎君はほぼ独占できるのかと思うと、天にも昇る気持ちになりました。見た目は日に焼けて遊び人、って感じなんだけどね。ただひとつ問題というほど困ったことではないのですがしいて問題といえば、字が・・・。アメリカ人のセラピストはとても勉強家でインターネットで太郎君のために五十音表を入手して太郎君のhand writingをトレーニングしてくれているのですが、彼女が新任先生の自筆による教材を見て、これはひらがなとは違う字か、と怪訝そうな顔をし何とかしてくれ、と助けを求められました。うん、そんなことは、太郎君はちっともお構いなしだけどね。


太郎君は、この春、良い先生を二人も得て、躍進、乞ご期待!