10月27日(月)
太郎君はカリフォルニアにいたとき、週に4日、午前中speech schoolに通っていました。発語に問題のある子ども達のためのspecial programです。週に4日も、専門家とエイドが合わせて3人、5人の子どもについて無料です。先生方は皆プロ意識が強く、太郎君のコミュニケーションに対する意欲は格段と高まって、大変よい経験をしました。
日本に帰って驚いたのは、自治体が用意してくれるST(スピーチ・セラピー)やOT(作業療法)はそれぞれ2ヶ月に1回きりだということ。一体それで何をするというのか、かえってこれこそ税金の無駄遣いだと、思ったりしたものです。プライベートにSTの療育機関に通わせると半年で10万円ほどかかります。更に、小学校の特別支援学級にも、STやOTはありません。幸い、先生方は経験をつまれた熱心な方ばかりで、太郎君はたったの3ヶ月でしたがとても成長してよい経験だったのですが、特別支援学級の良否は全て今そこにいる先生の個人的な資質にかかっているという印象を強く持ちました。
今回の渡米に際して、日本でお世話になったST、OTの先生方、ハンディのある子どものママたちの反応は、「言葉の問題が大変だけれど、療育の点では米国の方がずっと進んでいるからきっといい経験になるよ。」という心強いものが圧倒的でした。
カリフォルニアでの経験から、9月の新学期から枠を取るには夏に動かなくてはいけないと、住む場所が決まる前から、NYから帰国された療育の専門家にお話を聞いたり、日本でお世話になった療育士やMDの意見書を入手したり、現在までの太郎君の状況をまとめたりして、パパが家探しに6月に渡米した際には資料一式、決まったばかりの住所のschool districtに提出してきてもらいました。8月末に渡米するまで、数回この市のspecial educationの責任者とメールをやり取りし、渡米後、4日目に太郎君を含めてミーティングを持ちました。
その後はトントン拍子に物事が進みました。早速、太郎君の発達レベルを測定するためのevaluationが行われましたが、英語が分からない太郎君のためにこちらでmasterをとられた日本人の専門家が通訳としてついて下さいました。evaluationを適切に行うために、英語を解さない子どもに通訳をつけるのは法律で定められていることなのだそうです。
このevaluationの結果を吟味するためのmeetingには、special educationの責任者、地域担当のカウンセラー、ST、OTのセラピスト、日本人学校の担任の先生とコーディネーター、そしてparentsが召集され、それぞれの立場から、太郎君に必要な療育について意見が交換されました。OTは必ず必要だから、と週に30分ずつ2コマがあっという間に決まりました。STは、日本語を母国語とする太郎君に英語でどうしたら効果的な療育が出来るか、という点で議論になりました。太郎君は、カリフォルニアではカードを、日本に帰って受けたプライベートの療育ではマカトン法という手話を言葉と一緒に使うことで発語とコミュニケーションのトレーニングを受けました。ここNYでもやはりカードを使うらしいのですが、日本の特別支援学級ではそのどちらも導入されていません。best wayは何だと思うか、と親としての意見を求められたとき、scamamはだめもとで、
「こちらのセラピストと日本人学校がタイアップして、セラピストが考えてくれたカードのプログラムを日本人の先生が日常的に日本語で実践してくださると嬉しいです。」
と提案したところ、あっさりOKが出て、school districtの予算でカードプログラムに必要なソフトを買い、日本人の先生とセラピストでプログラムのためのmeetingを持って下さることになりました。更にずうずうしく、
「STのもう一つの魅力は口元の筋力トレーニングでカリフォルニアでは経験済みだけど、東京ではたった一つの大学病院でしかこのプログラムがなくて受けられなかったのよ。これなら言語に関係なくやって頂けると思うのだけれど。」
と提案すると、これも快諾され、通常STは週2コマだけれど太郎君はマッスルトレーニングの1コマfだけにして、その代り、日本人学校との連携を行うというイレギュラーな形でやってみようということになりました。もうこれだけで大満足なのに、更に、カウンセラーが、そういえばPT(フィジカル・セラピー)のevaluationを受けていないわね、ということで、追加のevaluation日時まで設定してくれました。PTは、日本では理学療法と訳されていますが、運動能力の強化のためのトレーニングで、一般に筋力が弱いと言われているダウン症の子ども達はこちらでは普通に受けているようです。
こちらの専門家達には、太郎君の通うspecial classにOTやSTの時間がないこと、そして今まで在籍者が現地のspecial education serviceを利用した実績がなかったことがかなり驚きだったようです。確かに日本人学校のspecial class自体が日本に比べてとても手厚いので、もしscamamもカリフォルニアでの体験がなければそれだけで十分満足していたと思います。でも、一回知ってしまうとね・・。
日本人の先生方も含めてこんなに何人もの専門家達が、太郎君の療育のために集まって意見を交換し実践的な道筋を立ててくれるようなことは日本ではなかなか経験することができません。どんな風に感謝の気持ちを表していいのか判らないので、最後に本当にそのまま、
「感謝の気持ちを表すいい言葉が見つからないわ。」
と伝えると、
「それが最高の言葉ですよ。」
と泣かせる台詞が返ってきました。
実は、日本のお役所だったら絶対通らないだろうな、と思うようなクリアしなければならない法律的な問題もあったのですが、カリフォルニアで得た座右の銘「一分の理でもあれば交渉せよ」を思い出し、相談したところ、それも難なくクリアされました。アメリカ人のこの合理性、柔軟性もたまらないところです。
カリフォルニアでも、それから花子ちゃんのESLプログラムについても、そして今回の場合でも、一時的滞在の外国人なのに、こんな風に大切にしてもらって、一体どうしたらいいのかしら、って小心者のscamamはその合理的な根拠付けに四苦八苦してしまいます。scamamに出来ることはこの感動を日本の人達に伝えることしかないなぁ。こうして、negativeな面も沢山あるのだけれど、米国はファンを増やしていくのでしょう。花子ちゃんが一人前になって、このご恩を返してくれると更にいいのですが。ご恩、とか言っちゃうの、日本人ですよねぇ。
今日のevaluationは、そういう訳で、このミーティングで追加されたPT用だったのですが、長くなったので、その様子はまた改めて書くことにしようと思います。