予後詩篇(立詩彗星伝のうち) 静かなる時の兆しー妖精1 伏久田喬行

 

 

静かなる時の兆しに

あこがれの瞳は哀し

水面(みなも)にふりそそぐ魂の序曲は

きびすをひるがえしながら春に憩った

 

山白む明けの精霊祭 東(ひんがし)

安らかな眠りは涼し

御代(みだい)の命を炎に替えて

みだれ髪ふかし

 

星夜の秋 ひとすじ

嵐きたりなば泪こそあふれ

清澄な気のより所

主音のバランスをくずしながら一葉にすがる

 

心手を合わせ(いまや)

おおとりの羽毛につつまれて

邪気の痛恨を癒しながら

佳境に入りしか

 

水たゆたいの揺れる小舟にこの霧雨の中

ザイン ザイン ザイン

ただ 静かなる命(いのち)をめざして

ゆけ

(1975/11/12)

 

この短詩は、1976年11月10日の「ザ・パンフレット」-1号に掲載されたものです。予後詩篇としてカウントされていますが、立詩彗星伝に所属とのこと。