久しぶりに長いブログになります。
まず初めにはっきりとお伝えしておきたいことがあります。
これは「私が彼の声を治した」という話ではありませんし、私とソナーポケットのボーカル・ko-daiくんとの感動的な物語を綴りたいわけでもありません。
このブログを書こうと思ったのは、彼が発声障害を公表し、向き合い行動してきた姿そのものが、同じように声に悩む歌手や、病名にならない程度であっても声に不安を抱え、孤独の中で歌い続けている人たちにとって、確かな「励み」になると感じたからです。
したがってこれは技術や奇跡の話ではなく、
「歌声と生きることを諦めなかった一人のアーティストの選択」についての記録です。
-出会った時のko-daiくん
初めて会ったとき、彼はほとんど目を合わせてくれませんでした。
声もぼそぼそとしていて、必要最低限の言葉しか発しない。
これまで知り合った生徒の中で、最もぶっきらぼうで最も心を閉ざしているように感じました。
後に聞いた話では、元々多く語らない方ではあるが(笑)一時期は日常生活にも支障が出るほど重症化し、話すことすらままならない状態だったそうです。これまで散々色々なアプローチをしてきたのに、という思いもあったかもしれません。
私のところに来た時点では、日常会話の声には大きな問題はありませんでしたが、ボイスタイプを確認するための
5トーン診断の発声が安定して出せない状態でした。
私は、できる限り感情を出さず端的に話しました。
なぜこのような症状が起きるのか。
喉はどういう仕組みで動いているのか。
そして、今の声に何が起きているのか。
(信頼する音声外来にも帯同し、自分の所見と相違がない事を確認しました。)
症状に対するエクササイズと対策、そして何より日本人離れした体格と、喉頭の大きさなどにも触れ、彼の本来持っている声が素晴らしいという事も伝えました。
レッスンを重ねるうちに、彼は少しずつ本来の声の魅力に気づいていきました。ソナポケko-daiの前に、本名の自分の声と向き合う事に抵抗は生まれなかったようです。
-「正しく出す」より「安心して出す」
初期の段階で私が重視したのは、
「良い声を出すこと」ではありませんでした。
人は、理解できないものに対して恐怖を感じます。
逆に仕組みが分かると、身体は少しずつ力を抜くことができる。
エクササイズも「できる/できない」を判断するものではなく、声帯と共鳴、呼吸の協調を思い出させるためのものを選びました。
結果として「治す」という意識よりも、「取り扱いを学ぶ」という感覚が育っていきました。
そのうちに「発声障害を治す」という言葉ではなく、「日本で一番うまい歌手になってやる」そう口にするようになったのです。
これは、とても重要な変化です。
声を“問題”として見続けている限り、
身体は防御をやめません。
けれど、声を“可能性”として捉え直した瞬間、人は変わり始めます。
ぶっきらぼうだったko-daiくんが、ふとした瞬間に笑顔で前向きな言葉を口にするようになりました。
その言葉の力で、彼の深部にある過剰なまでの繊細さと真面目さを振り払い、声とこれからの人生を見つめる強さも感じるようになりました。
-背景にはマネジメントチームの素晴らしさもありました。
病気を表面的に扱うのではなく、
「何が起きているのか」をマネージャー陣が自分ごととし、心の底から理解しようと勉強してくれました。
レッスン動画を頻繁に撮り、よく出来た時は共に喜んでくれました。
活動とリハビリを並走する案もありましたが、現実的な対策を考え、活動休止という決断を下したのです。
そしてその活動休止は、決して本人の活動だけを止める時間ではありませんでした。
本人はもちろん、メンバーそれぞれが、もう一度「自分はこのグループに何ができるのか」を見つめ直し、
新しいアプローチでパワーアップするための時間にもなりました。
この病気や状況に対する理解と協力、メンバーさんも含め、チームとしてのその在り方がなければ、今の結果には決して辿り着けなかったと、多くのチームと関わっている私は断言できます。
今の状態が治ったか治ってないかはお医者様に判断を委ねるとして、復帰後のライブパフォーマンスは、中長期的に見ても明らかに快方に向かっていると言えると思います。
ただ、この病気は機嫌があり、本人の意図に反してご機嫌斜めが出る時もあったり、病態の出る音域がずれたり、逆に症状が全く出なくなったりとプロセスが読みにくい病気ではあります。
歌手の皆さんには、そんな波に一喜一憂せず、あーそうですか、今日はそういう日ですか、と思うように伝えています。
この病気、患者本人ですら分かりにくいので、周りの方も含め読んでもらえたらと思います。
こんな事を繰り返していると悪化します。
【本人】
・高い所が出ないのではなく特定の音程がどうしても当たらない
・声が震える、詰まる、飛ぶ、ひっくり返る
・声の置き場所がわからない
・良い日もあるが次の日急に出来なくなる
・声掠れ等、声帯に器質的な問題がない
【周りの人】
・風邪引いてる?
・声どうした?
・昨日は出たじゃん。
・メンタルなんじゃないの?
・声帯は問題ないって。
・気合いで乗り切ろ!
励ますつもりのこれらの言葉は、彼らには矢のように刺さります。
そして、
【言われた本人】
・気づかれないように、頑張らなきゃ。
・少し力を入れればできるかも。
・何度も練習すれば掴める気がする。
・メンタルが悪いから弱い人間なのかもしれない。
・今日もここがダメだった。
こうして声を乱用し、酷使して悪化していくのです。
もしも自分の声に当てはまる点が多く、変だなぁと疑問がある人は1人で悩まずお近くの音声外来に行ってくださいね。
重ねて伝えたいのは私は人生をかけて音声の専門的な勉強をしています。
助けられて当たり前の場所に、助けが必要な人が来た、それだけの事です。
ko-daiくんはSNSなどで「レッスン頑張った!」などとサラッと言っていますが、内容は本当に細かく地味で、時には掴みどころがなく、時には上手くいかず、普通の人なら匙を投げたくなるような道のりでした。
音声障害の訓練はただひたすらこれをやれば治る!という単純なものではないからです。
そしてそれは今も続いています。
「レッスン頑張って!」なんて気軽に言えたもんじゃないレベルの内容だという事はコーチである私からお伝えさせてください。
この病状でここまで来れたのは紛れもなく彼のメンタルコントロールの良さから来ていると思います。
本当に、ここまでよく来てくれましたね。
まだまだこれからだぜと燃えるko-daiくんの未来を共に見られるのが楽しみです。
このブログを読んで、少しでも多くの方が前向きに生きられる一助となれば、そして同じ症状で悩む多くの方々に、一筋の光となればこれ以上の喜びはありません。
最後に上記の思いに賛同し、このブログの掲載を許可してくださったko-daiくん、事務所マネジメント様、本当にありがとうございます。