ジャンボ鶴田の試合は、後楽園ホールで、蔵前国技館で、何回観戦したか数え切れない。

 

アマレスでは、ミュンヘン五輪日本代表という輝かしい戦績に、身長196センチという恵まれた肉体。

 

ジャンボ鶴田は早くから全日本プロレスのエースとして脚光を浴び、総帥ジャイアント馬場の後継者筆頭だった。

 

若大将というニックネームで活躍したジャンボ鶴田は、若さあふれる積極果敢なファイトでファンを魅了した。

 

特にジャンピングニーパットはジャンボ鶴田の代名詞的技になった。

 

 

ジャンボ鶴田といえば試練の10番勝負が有名だ。

 

70年代後半。ジャンボ鶴田の実戦特訓として、強豪レスラーとシングルマッチで闘う。

 

その10番とは、バーン・ガニア、ラッシャー木村、テリー・ファンク、ビル・ロビンソン、Bブラジル、アブドーラ・ザ・ブッチャー、クリス・テイラー、ハーリー・レイス、大木金太郎、フリッツ・フォン・エリック。

 

凄い顔ぶれだ。

 

ラストのエリック戦は鉄の爪で責められ大苦戦。恐怖のブレーンクローで額が割れて大流血したが、最後はジャンボ鶴田がフライングボディプレスでフォール勝ちした。

 

10連敗してもおかしくない相手に、ジャンボ鶴田は4勝2敗4分けという好成績。さすがだ。

 

 

全日本プロレスのチャンピオン・カーニバルは、シングルマッチの総当たりリーグ戦なので、私も毎年楽しみにしていた。

 

ブロックに分けることなく、またトーナメントではないので、ジャイアント馬場VSジャンボ鶴田のような夢の師弟対決も観られるのだ。

 

印象に残っているのは、1980年のチャンピオン・カーニバルだ。

 

優勝決定戦はジャンボ鶴田VSディック・スレーター。

 

喧嘩番長ディック・スレーターはブッチャーとも因縁が深い。スレーターはブッチャーのコショウ攻撃で目を負傷してしまった。

 

そのため優勝決定戦の時は眼帯をはめていた。

 

これはスレーターがかなり不利だが若き両雄は名勝負を見せた。

 

ジャンボ鶴田がコーナーポスト最上段からダイビングニーパットを炸裂させると、ディック・スレーターも負けずにコーナー最上段からのダイビングエルボーを脳天に叩き込む。

 

ダブルアームスープレックスを決めるジャンボ鶴田。ディック・スレーターも伝家の宝刀スピニングトーホールド。

 

最後は、ディック・スレータがショルダータックルを狙うが、ジャンボ鶴田が交わし、スレーターは肩からコーナーに激突。

 

今がチャンス。ジャンボ鶴田はバックを取りハイアングルのジャーマンスープレックスホールドで見事にカウントスリーを奪った。

 

ジャンボ鶴田が悲願の初優勝だ。

 

 

タイトルマッチで忘れられないのは、ジャンボ鶴田がAWA世界ヘビー級チャンピオンのニック・ボックウインクルと対戦した試合だ。

 

特別レフェリーはテリー・ファンク。放送席には徳光さんもいた。

 

ニックは、場外からリングに戻ろうとするジャンボ鶴田にブレーンバスターを狙うが、鶴田は投げられる前にニックの背後に回り、バックを取ってバックドロップホールド!

 

カウントスリーが入り完勝だ。

 

テリーがカウントを数える時、ジョー樋口もリングに上がり、ニックの肩が上がっていないかを最後まで見ていた。プロの仕事だ。

 

ジャンボ鶴田はついにAWA世界ヘビー級王者となった。

 

その後、ジャンボ鶴田は日本とアメリカで16回の防衛を果たす。これは素晴らしい防衛回数だ。リック・マーテルにベルトを奪われたが、ジャイアント馬場に続き、元世界王者という実績が光る。

 

 

ジャンボ鶴田のライバルといえば、70年代はキム・ドクだった。その後、長州力や天龍源一郎がライバルとなるが、ジャンボ鶴田の気づきが始まる。

 

ジャーマンスープレックスホールドを封印したジャンボ鶴田に、腰を痛めたのか、年なのかなどと心外な噂が広がり、ジャンボ鶴田は沈黙を破った。

 

自分がジャーマンスープレックスホールドをやると、一歩間違えば相手の首が折れる。

 

プロレスは殺し合いではない。バックドロップも相手を見る。

 

三沢光晴や川田利明や小橋建太が相手なら、思い切りルー・テーズばりのブリッジをきかせたバックドロップを打てるが、受け身を取れそうもないレスラーだと、ゆっくり投げている。

 

いつしかジャンボ鶴田は怪物に変身していた。

 

散歩するとビルディングを破壊してしまうのが怪物だ。本気を出したら相手選手を壊してしまうのが怪物だ。

 

象徴的なシーンは天龍源一郎戦だった。

 

試合中にマジギレしてしまったジャンボ鶴田が天龍の顔面にキック!

 

倒れ方がおかしかった。相当痛かったのか顔をしかめて天龍がダウン。鶴田は休ます攻めてハイアングルのパワーボム!

 

ぐしゃっという鈍い音がして正気に戻ったジャンボ鶴田は、すでに失神している天龍に静かに覆いかぶさりピンフォール。

 

怪物がエキサイトすると危ない。

 

だからジャンボ鶴田VSブルーザー・ブロディの試合は毎回凄い熱闘になる。

 

怪物同士だから、お互いに全ての技を全力で出し切れる。

 

フライングボディシザーズを炸裂させるジャンボ鶴田を抱えたまま、ブロディはトップロープに鶴田の喉を叩きつける!

 

ダウンした鶴田に必殺キングコングニードロップでフォールし完勝。

 

しかし、今度はジャンボ鶴田が雪崩式ブレーンバスターでブロディをマットに叩きつけ、猛スピードの危険なバックドロップでフォール勝ち。

 

ジャンボ鶴田にとってブルーザー・ブロディが最強にして最高の好敵手ではなかったかと思う。

 

 

ジャンボ鶴田のナチュラルパワーは誰もが認めるところで、底知れないスタミナの持ち主である。

 

「史上最強のプロレスラーは誰か?」という問いで、必ず名前が挙がるのがジャンボ鶴田だ。

 

鶴田最強説は根強い。

 

ジャンボ鶴田。振り返ると、やはり凄いプロレスラーだったと思う。