"本というのは「遅効性」の道具なんです"



ブックディレクター幅氏はこう語る。

SAWAクリップ



「さっと情報を得るだけならネットでもいい。
けれども本の本当の力は、今知りたいことにすぐ答えることではありません。」



たしかに私自身でもそう感じることがとても多くなっている。


最近本の存在がとても大きい。
TVやネットなどの膨大な量の情報から自分に必要な分だけフィルターをかけてストックしていく事はとても大事。


だけれども、

ある分野においての一人者の「編集」という工程を経て磨かれた情報を摂取することはとても意味がある。


たとえば、
バイキングで目的もなくお腹をいっぱいにするのと
おいしいイタリアン。それもトマトソースがとてもおいしいパスタを食べさせる店でお腹を満たすのは少し意味が変わってくる。


体験の質と記憶の熱量に違いがでる。


そう解釈してみると本って自分の人生をとても有意義なものに変えてくれる栄養なんだと気付く。



幅氏の手がけた仕事の中でもうひとつ
興味深いものを紹介します。


「千里リハビリテーション病院」という大阪府にある脳梗塞患者のための病院に2000冊の本を揃えるライブラリーづくりを依頼された時のこと。


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一般的な病院の本棚には病気にまつわる本や教養を伝える堅苦しい本が並ぶ、

だが病院だから病気の本、図書館だから優良書ではない。


幅氏のブックセレクトにおけるユニークなセンスは
こんなところでも光る。


たとえば大阪の昔の街や阪神が優勝した時の記録写真集や本。

「このころ俺はこうだった、ああだった」。本を見ることがきっかけで記憶や感情がじわじわと動き出す。


文学ならどこから読み始めてもよく、どこで終わってもいい詩や短歌や俳句。


紙をめくる作業という行動を伴うパラパラブック。

とっかかりはシンプルな内容であっても、本はゆっくりと確実に心と体に効いてくる。


そのうちに実は、往年の女優さんの写真集のリクエストもありました。
「エロ」は生命力と密接に結びついている。本を読むことで「生きたい」「人生って面白い」と生命が躍動し始めるのだそうだ。


さらにつづく