現場勤務の思い出22-セミ逆打工法の採用-4 | 建築専科

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深礎は3mの径で3.6mに拡径させて、独立基礎としては直径3.6mとなる。独立基礎の場合は「袴鉄筋」となるが、設計は杭の配筋で外周のみで、下端も上端鉄筋も無かった。作業地盤から10m下の鉄筋作業だから、簡単な配筋は有り難い。

 

設計ではアンカーボルトを固定するため、アングル材でアンカーフレームを作り、コンクリート打設後は鉄骨のベースプレートと密着させるため、左官でベースモルタルを作ることとなっていた。深礎内での作業の簡素化は、安全管理上重要であるしコストも安い。

 

先ず所長の指示でベースモルタルを取りやめ、コンクリート打設後、硬化を待って左官鏝で抑える「モノリシック」に変更を提案した。鉄骨のベースプレートとの密着については、鉄骨建て方後、エポキシ注入することとなった。この「VE」案は採用され、品質と安全を確保することができた。

 

更に、これは自画自賛であるが、筆者はアンカーフレームをやめて、後施工アンカーに出来ないか考え付いた。11000tonの鉄骨のアンカーボルトが後施工アンカーなのである。今の筆者から見れば「非常識」と思うが、もともと仮設のアンカーボルトである。径もM25と太くなかった。深礎基礎はコンクリート量が20m3、重さ47tonで、ボルト1本当たりでは12tonなのである。

 

筆者の提案は係長を通じ、所長の許可を得て監理事務所へ提案された。回答は後施工アンカーの引き抜き試験を行う事で了解された。現場で切梁材を使ってフレームを組み立て、引っ張り試験を行った。15ton分のコンクリート基礎を造って行い、結局「ケミカルアンカー」に決定した。これが筆者の「VE」第一号である。

 

深礎の底でのアンカーフレームは溶接作業があるから、感電の問題や溶接棒から発生するガスも多量に吸い込めば有害である。従って安全管理上は極めて効果的な手段であった。又、コスト的にも多分500~1000万円はあったのではないだろうか?ちなみに筆者は深礎工事では毎日、作業する孔の酸欠とメタンを測定して、青旗を立て、又、送風機が底まで機能しているかを確認していた。

 

全くの自画自賛の話でした。

 

旧建築専科 20170830